マンションに住む人々にとって、快適で安全な生活環境を維持し、資産価値を守るうえで不可欠なのが大規模修繕工事です。
この工事は、経年劣化によって生じた建物の不具合を修繕し、機能を回復させることを目的としています。
大規模修繕工事の準備から工事完了までの全期間は、おおよそ2〜3年かかるとされています。
特に、実際の工事が始まるまでの「着工前」の計画段階がかなりの期間を要し、マンションの規模によっては工事期間も大幅に異なります。
この準備期間をいかにスムーズかつ綿密に進めるかが、工事全体の成功を左右する重要なポイントです。
本記事では、マンションの大規模修繕工事が実際に着工に至るまでの主要なステップを詳細に解説し、各段階でのポイントや注意点を紹介します。
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目次
大規模修繕着工までの流れ
大規模修繕工事を円滑に進めるためには、準備から始まる各ステップと全体の流れを事前に把握しておくことが極めて重要です。
では、着工までの主要なステップを順に確認していきましょう。
- STEP
管理組合内の体制づくりと修繕委員会の設置
まずは理事会や修繕委員会など、検討を進めるための体制を整えるところからスタートします。
- STEP
発注方式の検討とパートナーの選定
どの方式で工事を進めるかを決め、必要に応じて設計コンサルタントや管理会社などの専門家を選定します。
- STEP
建物診断・劣化調査の実施
専門家による調査を実施し、建物の状態を客観的に把握します。
- STEP
工事内容・予算の検討と資金計画の確認
診断結果をもとに工事内容を検討し、予算や修繕積立金の状況を踏まえた資金計画を立てます。
- STEP
施工会社の選定(相見積もりとヒアリング)
複数の施工会社から見積もりを取り、総合的に比較して最適なパートナーを選定します。
- STEP
総会決議と契約締結
最終的に管理組合総会で工事計画を承認し、契約締結を経てようやく着工に至ります。
- STEP
工事説明会の実施と着工前準備
総会で大規模修繕工事実施の承認が得られ、施工会社と正式に契約し工事の準備に入ったら、着工の約1ヶ月前には工事説明会を実施します。
各工程の目的や対応する際の注意点
上記で着工までの流れを見ていきましたが、それぞれの工程ではどのようなことが行われているのでしょうか?
対応時に意識すべき点もあるため、詳細な内容を把握しておくことが、大規模修繕工事をスムーズに進めるために欠かせないポイントです。
管理組合内の体制づくりと修繕委員会の設置
大規模修繕工事の計画は理事会が主導する場合が多いですが、通常の組合運営業務に加えて大規模修繕工事の準備業務が加わると、その負担は非常に大きくなります。
そのため、理事会の下部組織として「修繕委員会」といった専門委員会を設置するケースが多く見られます。
修繕委員会は、大規模修繕工事に関わる業務を専門的に担当し、工事に関する内容の検討を行い、理事会に提案します。
その役割は、工事内容の検討・調査への立ち会い・説明会の実施・工事中の打ち合わせや進捗管理など、準備段階から完工まで工事全体に深く関わってきます。
メンバーに専門的な知識を持つ方がいれば、より力強く計画を進められるでしょう。
ただし、管理組合の実情に応じて、修繕委員会を設置しない選択をすることもあります。
その場合、引き継ぎ時のロスを減らすため、理事の任期を1年から2年に変更し、半数交代制にするなどの対応を取る管理組合も存在します。
この段階で「今すぐに大規模修繕工事の実施が必要な状態なのか?」という根本的な問いから検討を始めることが大切です。
また、外部専門家の起用の是非や工事終了後の資金計画の見通しについても、同時に検討しましょう。
工事の発注方式の検討とパートナー選定
パートナーの選定は、工事の透明性や品質・費用に大きな影響を与えるため、計画初期における非常に重要なポイントとなります。
代表的な発注方式には、以下の3つがあります。
- 責任施工方式…管理組合が施工会社と直接契約し、準備から工事完了まで一貫して施工会社が担当する方式
- 管理会社主導方式…管理組合が日頃の管理を行っている管理会社と契約し、工事を進める方式
- 設計監理方式(コンサルタント方式)…設計と施工を分離し、設計監理者(コンサルタント)と施工会社を別々に契約する方式
いずれの方式を採用するかは、管理組合の実情や重視する点(費用・品質・透明性など)によって慎重に協議を重ね、決定する必要があります。
特に、外部専門家を起用するかどうかは、施工会社などの選考プロセスを透明化・客観化するために、規模の大きい管理組合ほど重要視される傾向にあります。
建物診断・劣化調査の実施
この調査では、建物に現れているさまざまな変化から、どこにどのような劣化症状が出ているのか、また補修の緊急度はどの程度かを、目視や機械調査も併用して確認していきます。
調査で得られた結果は、大規模修繕工事の時期や工事内容を決定するうえで非常に大切な判断材料となります。
修繕の第一歩は現状を知ることであるため、建物の状態をきちんと把握し、工事計画に役立てることが不可欠です。
建物診断では「修繕工事の実施ありき」で調査が行われていないか、注意深く見ておきましょう。
管理会社が有償・無償で劣化診断を行うケースも多く見られますが、場合によっては工事実施ありきの調査になってしまうことがあります。
有意義な劣化診断にするためには、大規模修繕に利害関係のない第三者の専門機関に調査を依頼するのがおすすめです。
工事内容の検討と予算策定・資金計画の確認
建物診断で劣化が進行していると判定された箇所は、優先的に修繕計画に組み込む必要があります。
一方で、状態の良い箇所は維持できるような処置に留め、代わりに要望の多い改良工事を実施するなど、メリハリをつけた予算の使い方を考えていくことも大切です。
手すりや自動ドア・オートロックの設置など、安全性や利便性に寄与する改良工事は、居住者の生活の質を向上させ、工事に対する満足度を高めることにつながります。
なお、大規模修繕工事の資金には、マンションの所有者が管理費とは別に毎月積み立てている修繕積立金が充てられます。
しかし、修繕積立金が予算に対して不足している場合には、工事内容の見直しや一時金の徴収・融資を受ける、または工事の時期自体を見直すといった対応策を検討する必要があります。
一度の大規模修繕で積立金の残高をすべて使い切ってしまうと、将来の修繕費用が不足する事態を招く可能性があります。
そのため、今後20~30年にわたる収支の状況が確認できる長期修繕計画を必ず見直し、将来的に積立金の不足が予測される場合には、計画内容の変更や修繕積立金額の見直しなどの対策も踏まえ、使い方を考えていくことが必要です。
施工会社の選定(相見積もりとヒアリング)
施工会社は、専門誌やインターネットなどのメディア・マンションの掲示板などを利用して公募できます。
書類選考で数社に絞り込んだら、「ヒアリング」と呼ばれるプレゼンテーションの場を設け、各社に工事への取り組み方・会社の体制・アフターサービスの内容などを発表してもらいます。
施工会社を決定する際、費用は非常に重要な判断材料の一つですが、それと同時に、これまでの施工実績や経験・工事への意気込みといった「質」の部分、また財務状況など経営の安定性もしっかり見て総合的に判断することが大切です。
工事の仕上がりは、建物の耐久性や資産価値に直接影響します。
補修が適切に行われていないと劣化症状がすぐに再発し、結果として余分な費用や手間がかかるといったことにもなりかねません。
また、施工会社とは工事中はもちろん、施工後もアフター点検などを通じて長年にわたる付き合いが始まります。
建物のことを安心して任せられる施工会社を、様々な角度から検討して選びましょう。
総会決議と契約締結
大規模修繕工事についての概要が決まったら、管理組合総会を開催し、決議を取ります。
総会では、組合員に対し「修繕の目的やどのような工事を実施するのか」「いつから行われるのか」「どのくらいの期間になるのか」「どの施工会社に依頼するのか」「どのくらいの費用がかかるのかと」いった工事計画について報告をします。
この総会で組合員の承認を得ることができて、初めて正式に工事の発注ができるようになります。
大規模修繕工事は、組合員の理解と合意を得られて初めて実施できる工事です。
そのため、建物診断で分かった建物の劣化状況・工事の方向性・予算の用途・施工会社の選定理由などは、理事や修繕委員など関係する方たちの間での議論はもちろん、組合員に向けても分かりやすく明確に説明できるように準備を徹底することも忘れていけません。
総会での決議後、施工会社と正式に「工事請負契約書」を締結します。
この契約により、施工業者は材料や技術者の発注が可能になります。
工事説明会の実施と着工前準備
この説明会は、マンション居住者に向けて工事の内容や注意点を説明する重要な機会となります。
特に、安全上の留意点や対策・日常生活への影響については、時間をとって丁寧に伝える必要があります。
大規模修繕工事は、居住者が住みながら行われる工事であるため、住んでいる方々の理解・協力が欠かせません。
騒音を伴う工事や洗濯物の扱い・仮設工事・足場設置に伴うベランダや廊下の私物の片付け・網戸の取り外し・在宅が必要な工事といった具体的な影響について、事前に詳細に通知し、説明することが重要です。
また、説明会で上がった意見や懸念点は、監理者や施工会社とも共有し、極力生活に影響が出ないよう対応策を検討し、必ずフィードバックしましょう。
工事期間中も居住者が安心して生活できる環境を整える姿勢や配慮が、運営側への信頼につながり、工事に対する居住者の理解や協力につながります。
着工前にかかる期間はどのくらい?
大規模修繕工事の着工までには、上記で説明したようなさまざまな準備が必要です。
そのための期間は、一般的には6ヶ月〜1年程度とされており、この期間内にしっかりとした計画と合意形成を進める必要があります。
また、マンションの規模や管理組合の意思決定のスピードによって変化するため、慌てず各工程を丁寧に行うことが大切です。
施工までの準備をスムーズにするためにできること
日頃からできる小さな取り組みの積み重ねが、大規模修繕に必要な準備をスムーズにし、不要なトラブルを避ける鍵となります。
いざという時に備えて、管理組合や住民が普段から心がけておきたいポイントを押さえておきましょう。
- 日常的な点検と報告体制の整備…小さな劣化や不具合を早期に発見し記録しておく
- 管理組合活動への積極的な参加…組合員として修繕の流れを理解し合意形成の土台を築いていく
- 修繕積立金の見直しと適正化…定期的に積立金の見直しを行い長期修繕計画と整合性を取っておく
- 建物の使用ルールを守る意識づけ…過度な設備負担による劣化を遅らせることで修繕コストを抑えられる
- 情報共有と住民間のコミュニケーション促進…日常からの連携を大切にし修繕に対する意識を高めてもらう
大規模修繕工事着工後の主な工事と期間
着工までの準備が整えば、いよいよ実際の工事が開始されます。
大規模修繕工事は、事前に綿密な施工計画を立てていたとしても、足場を設置し、実際に施工箇所を確認して初めてわかる不具合なども出てくることがあります。
工事期間中は、理事会や修繕委員会と監理者・施工会社とで定期的に打ち合わせを行い、こうした変更箇所の確認や工事の進捗・住人からの要望などを共有し、工事がスムーズに進むよう各種調整や意見交換を行います。
主要な工事項目と期間
大規模修繕工事には、さまざまな工事項目が含まれます。
主な工程とそれに要する期間の目安は、以下の通りです。
工事名 | 内容の概要 | 工期の目安 |
仮設工事・足場設置 | 建物周囲に足場を組み、工事に必要な施設を設置する初期段階の工事 | 小規模:10〜15日 中〜大規模:20〜30日 |
下地補修・シーリング工事・鉄部塗装 | 外壁のひび割れ補修や目地シーリングの打ち替え、鉄部の錆止めなどを実施 建物の寿命延伸と安全性確保に不可欠な工程 | 約15〜30日 |
防水工事・外壁塗装工事 | 屋上・バルコニーなどの防水機能を回復し、外壁を塗装して資産価値と美観を維持 | 約1〜3ヶ月(規模により変動) |
クリーニング工事 | エントランスの石材・タイルなどの洗浄。見た目の美しさを保つ仕上げ工程 | 工事終盤に短期間で実施 |
その他バリューアップ工事 | スロープ設置・手すり増設・自動ドア化など、居住性を高める改修。資金や住民ニーズにより実施可否が決まる | 規模・内容により異なる |
工事期間に影響を与える要因
工事内容によってある程度の工事期間が決まってはいるものの、さまざまな要因によって長期化もしくは短期化することも多いです。
工事期間が変われば、着工までの準備内容が変わってくることがあるため詳細を把握しておきましょう。
マンションの規模
工事期間は、マンションの規模(総戸数)によって大きく異なります。
- 小規模マンション(50戸未満)…約3〜4ヶ月
- 中規模マンション(50〜100戸)…約4〜6ヶ月
- 大規模マンション(100戸以上)…半年〜1年
工事内容の変更・追加
計画段階では分からなかった主要部分の破損や劣化が、足場を組んで施工を開始してから発覚し、追加工事が必要になることがあります。
管理組合側から設備のグレードアップや工事内容の追加を要望することも可能ですが、大幅な工期延長や追加費用につながるため、安全性に関わる作業以外は慎重に検討し、必ず組合員の合意を得て行うべきです。
天候による工事延期
外壁塗装や防水工事など、屋外で行われる作業は天候によって延期せざるを得ない場合があります。
これは避けられない要因ですが、施工委員会などは工事の進捗状況を常に把握し、工事予定の変更があった場合は速やかに住民に周知することが重要です。
工事が長引く時は住民への配慮を忘れずに
工事期間中は、建物周囲に足場が立ち、大きな音が出たり多くの作業員や工事車両が出入りしたりと、マンションを取り巻く環境が普段とは大きく変わります。
工事期間が延期すると、その分居住者がストレスを感じる期間も長引くため、普段の生活への影響を極力抑える配慮が非常に大切です。
特に、居住者の生活に直接影響のある事柄や安全に関する注意点は、工事中に設置される掲示板や各戸への案内チラシの配布などを通じて、必ず事前にお知らせしましょう。
こうした広報活動や、居住者からの疑問・相談・依頼・クレームへの迅速なコミュニケーションが、工事の円滑な進行と居住者の安心につながります。
よくある質問(Q&A)
Q
大規模修繕工事の着工まで、どんな準備が必要ですか?
A
まずは調査・診断で建物の状態を把握し、修繕計画を立てます。
その後、管理組合の総会で計画の承認と予算決定を行い、施工会社や設計事務所との契約を締結します。
さらに、近隣住民への説明会や工事内容の周知も大切な準備段階です。
Q
着工までに管理組合が行うべきことは?
A
管理組合は施工業者選定のための検討委員会を設置し、複数業者から見積もりを取り比較検討します。
また、総会で住民の合意を得て計画と予算を正式に決定します。
さらに、住民説明会を開いて工事の内容やスケジュールを周知し、住民の理解と協力を得ることが重要です。
Q
着工前にどのくらいの期間がかかりますか?
A
調査から計画策定・施工会社選定・総会承認、住民説明会など一連の準備には、一般的に数か月から半年程度かかる場合が多いです。
建物の規模や管理組合の体制によって前後します。
Q
施工会社の選定はどうやって行いますか?
A
施工会社選定は複数の業者から見積もりを取得し、価格だけでなく過去の実績や提案内容、信頼性を総合的に比較して決定します。
場合によっては設計監理会社やコンサルタントが関わり、公正な選定をサポートします。
Q
着工前に住民説明会は必須ですか?
A
法律で義務づけられているわけではありませんが、住民の理解と協力を得るために非常に重要です。
説明会で工事の目的や内容・スケジュール・生活への影響をしっかり伝えることで、トラブルを防げます。
Q
着工予定日が変更になることはありますか?
A
はい。
設計や施工計画の見直し・管理組合の総会承認の遅れ・近隣調整などの影響で、変更が生じることがあります。
工事委員会は進捗を管理し、変更があれば住民に速やかに周知することが大切です。
まとめ
大規模修繕工事は、建物の機能を回復させ資産価値や居住性を維持していくための重要な工事です。
それと同時にマンションにとっては、今後の方向性を決定づけていく大きなターニングポイントにもなります。
計画段階から着工までに多くの段階を経ますが、ここで紹介した手順をしっかり踏み計画的かつ慎重に進めることで、トラブルのないスムーズな工事を実現できます。
大規模修繕工事に携わることは、多くのマンション役員にとって重い責任と感じられるかもしれませんが、マンションの建築・設備、管理組合の運営について詳しくなる貴重な機会でもあります。
日常の管理にも興味を持つようになり、マンションでの生活がより充実したものになったという声も聞かれます。
大規模修繕工事に積極的に関わり、早めの準備や必要に応じて専門家のサポートを最大限に活用することで、大規模修繕を成功に導けます。
建物としての資産価値向上を目指すことはもちろん、大規模修繕工事をマンション内部の活性化や将来像を考えていくための大きなチャンスと捉え、管理組合として上手に活用していくことが「より住みやすいマンション」「より資産価値の高いマンションを築き上げる道」となるでしょう。