病院の建物は、患者の命を預かる場所であり、診療の継続性や衛生環境の維持をより強く求められます。
そのため、一般の建物と比較して大規模修繕には高度な計画性と慎重な配慮が必要です。
外壁の劣化・配管や空調設備の老朽化・バリアフリー対応など、多岐にわたる課題に対し、診療を止めることなく修繕を進めるには、専門知識と高いマネジメント能力が不可欠です。
また、医療施設特有の複雑な機能や設備に対応する必要があるため、一般の修繕工事以上に細かな計画と調整が求められます。
例えばICUや手術室などのエリアでは、空調や換気・衛生環境に極めて高い基準が設けられており、それらを維持しつつ施工を進める必要があります。
さらに、患者の安全や診療の質を確保するために、病院全体の運用体制との連携が極めて重要となります。
この記事では、病院における大規模修繕の進め方・費用・注意点・信頼できる業者の選び方まで、施設管理担当者が知っておくべきポイントを解説します。
修繕計画を成功に導くための実践的な知識を得て、安心・安全な病院環境の維持に役立ててください。
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目次
病院の大規模修繕を実施するためのスケジュール
病院の修繕工事は、一般的な施設と異なり「診療を継続しながら進める」ことが求められるため、精密なスケジュールと調整が必要です。
病院修繕の進行には明確なステップがあるため、まずは流れを把握しておきましょう。
病院修繕の進行ステップ
- STEP
劣化診断・基本方針の策定
まずは建物の現況調査を実施し、劣化の程度や改修の必要性を評価します。
- STEP
医療スタッフとの調整・情報共有
診療スケジュールや患者導線との兼ね合いを考慮し、工事による影響を最小限に抑えるために医療スタッフと緊密に連携します。
- STEP
実施設計と見積確定
具体的な施工内容や工法を盛り込んだ設計図を作成し、それに基づく詳細な見積もりを取り、予算を確定させます。
- STEP
工事区画と仮設計画の立案
安全と効率を両立させるため、施工エリアや作業導線を明確にし、仮設施設や通路の設計も行います。
- STEP
段階施工(エリア別)
一括工事ではなく、診療に配慮したエリアごとの段階施工を実施します。
- STEP
完了検査とアフター点検
工事完了後は、性能検査や安全確認を行い、必要に応じて是正対応を行う。
病院の大規模修繕に向けての準備
病院の修繕工事は、単なる建物の補修にとどまらず、医療サービスの継続性や患者の安全、職員の働きやすさを確保するうえでも重要なプロジェクトです。
施設の劣化状況を正確に把握し、修繕の優先順位を見極め、関係者と情報共有しながら段階的に準備を進めることが、成功への第一歩となります。
そのためにも、以下のように段取りを組み、計画的に進めることが重要です。
事前の劣化診断〜基本計画の立案
修繕工事の第一歩は、現在の施設状態の正確な把握から始まります。
外壁のひび割れや塗膜の剥離・屋上防水層の劣化・給排水設備や電気系統の老朽化などを詳細に診断し、修繕の必要度と緊急性を明確にします。
さらに、建物の設計図や過去の修繕履歴も確認し、全体像を把握してから進めることが重要です。
その後、病院の運営方針に合わせて修繕内容の優先順位を設定し、対象範囲を明確にしていきます。
同時に予算の枠組みも固め、基本的な設計方針や工事スケジュールの草案をまとめることが求められます。
ここでの計画精度が、後のトラブルや予算超過のリスクを大きく左右するため、十分な時間と専門的な視点が必要です。
法的な制約や補助金制度などを確認し、適切な許可申請や手続きを事前に済ませることで、工事の着手をスムーズに進められます。
病院が立地する地域によっては、行政指導や条例に基づく追加対応が必要な場合もあるため、情報収集は念入りに行いましょう。
医療スタッフとの調整と情報共有
病院内のさまざまな部門と連携しながら調整を行うことは、修繕工事を円滑に進めるうえで非常に重要です。
医師や看護師・技師といった医療従事者に対しては、工事による影響範囲や具体的なスケジュールを丁寧に説明し、意見や懸念点を聞き取る機会を設けます。
特に、患者の導線確保や診療機器の配置替えが伴う場合には、綿密な調整が不可欠です。
また、職員全体に向けた共有資料の作成や、定期的な進捗報告も効果的です。
特に情報共有が不足すると、現場での混乱や不安を招く原因となります。
各部門から代表者を立て、定例会議を設けて調整を進めることで、スムーズな合意形成が可能となります。
さらに、感染症対策を意識した調整も重要です。
例えば病棟内での空気の流れや導線設計など、普段の診療では問題ない動線でも、工事中には感染リスクを高めることがあります。
施工エリアと非施工エリアを明確に区分し、空気圧の管理やダスト制御など、衛生対策を徹底することが求められます。
病院の大規模修繕におけるスケジュール作成のポイント
病院の大規模修繕では、スケジュール設計の段階から診療への影響を最小限に抑える工夫が求められます。
特に外来患者や入院患者にとって、普段通りの医療サービスが提供されることが重要であり、そのためには綿密なスケジュール設計と現場との連携が不可欠です。
スムーズな工事進行と安全確保のため、以下のようなポイントを意識してスケジュールを立てることが求められます。
診療時間や病棟稼働との調整
外来診療が集中する曜日・時間帯や、手術・検査などの繁忙日を避けて工事日程を組むことが重要です。
また、入退院が多くなる月末月初のタイミングなども考慮に入れると、医療現場との衝突を避けやすくなります。
段階施工とゾーニングの併用
工事範囲を明確に分け、機能ごと・フロアごとに施工を進める段階施工の手法を取り入れることで、病院機能を止めずに対応できます。
特に手術室やICUなどの重要エリアは、最小限の影響で済むよう慎重に工程を組む必要があります。
夜間・休日の活用
緊急対応の負荷にならない範囲で、夜間や休日に施工を進めることで診療への支障を減らせるでしょう。
また、施工音や振動を抑える特殊工法の併用も検討材料となります。
予備日やバッファの確保
資材の納入遅延・天候不順・診療延長など、予期せぬトラブルはつきものです。
そのため、スケジュールには一定の余裕(バッファ)を持たせることが推奨されます。
特に、中間検査や行政手続きなどでの遅れも想定したうえで、リカバリープランを用意しておくと安心です。
医療スタッフとの定例調整会議
工事の進行状況を定期的に共有することで、トラブル発生時の迅速な対応が可能になります。
月単位・週単位での調整会議の実施は、現場との信頼関係構築にも効果的です。
事前に各診療科との個別ヒアリングを行うことで、より実務に即したスケジューリングが実現します。
患者や来院者への情報提供
工事中の影響を最小限にするためには、患者や来院者への丁寧な告知も大切です。
館内掲示やチラシ・Webサイトなどで工事内容・期間・影響範囲を事前に周知することで、混乱やクレームを回避できます。
こうした事前調整と柔軟なスケジュール管理が、診療との両立を可能にし工事の信頼性を高めるとともに、患者サービスの質を維持するうえでも極めて重要な役割を果たします。
大規模修繕中に病院の運営を妨げないための段階的な進行方法
病院の修繕において難しいポイントとなるのが、修繕工事中の医療提供です。
工事中も通常と変わらない医療提供を継続する必要があるため、全館を一度に閉鎖することはできません。
そこで、以下のような段階的な施工手法が一般的に採用されます。
エリア分割による施工
外来棟・病棟の分離施工外来と入院機能が分かれている病院では、それぞれの棟を独立して施工することで、患者への影響を最小限に抑えながら効率的に作業が進められます。
外来患者は日中の来院が中心であり、病棟は24時間の対応が求められるため、それぞれの性質に応じて施工時間や方法を工夫することが重要です。
また、フロアごとの順次施工1フロアごとに工事を進めることで、施工エリアと非施工エリアを明確に区分でき、騒音や振動による影響の軽減にもつながります。
特に入院病棟では、患者の移動計画と連動させて段階的に工事を進行させることが求められます。
時間帯を工夫した施工
集中治療室(ICU)といった診療に直結する重要エリアは、夜間や休日など診療時間外に工事を実施することで、業務への支障を最小限に抑えられます。
特に夜間や休日を活用した工事は、騒音・振動対策の面でも有効であり、医療スタッフや患者のストレス軽減も可能にするでしょう。
仮設対応や一時移設
仮設診療所の設置外来機能や検査部門を一時的に仮設エリアへ移すことで、主要エリアの施工中も診療業務を継続できます。
プレハブや既存空間の活用により、柔軟な運用が可能です。
診療機能の一時移設一部の診療機能を他の空いている病棟や隣接施設に一時的に移すことで、工事エリアを確保しながら医療提供を維持します。
患者の移動導線にも配慮し、混乱を避ける工夫が必要です。
工程の柔軟な見直し
進捗に応じたスケジュール調整医療現場の事情や突発的な事態に対応するため、工事スケジュールは固定せず、進捗状況に応じて柔軟に見直すことが求められます。
天候や資材納入の遅れに備えて、予備日や代替案を盛り込むと安心です。
段階ごとの品質・安全確認
工事完了ごとの点検とテスト各段階が完了するたびに、電気・給排水・空調などの設備について安全性と性能を確認します。
不具合があれば速やかに修正し、次の工程へ進む前に必ずチェックを行うことが、病院のような高機能施設では特に重要です。
病院の大規模修繕にかかる費用と内訳
病院の大規模修繕では、多くの設備や構造が対象となるため、工事費用も高額になる傾向があります。
ここでは、修繕にかかる主な費用項目や内訳・見積もりの考え方について詳しく解説します。
病院大規模修繕の主な費用内訳
費用項目 | 内容の例 | 割合目安(%) |
建築本体工事費 | 外壁補修・屋上防水・内装改修 | 30〜40 |
設備工事費 | 空調・電気・給排水・感染対策設備 | 25〜35 |
仮設工事費 | 仮設診療所・導線確保・養生など | 10〜15 |
設計・監理費 | 設計図作成・現場監理・コンサルタント費用 | 5〜15 |
その他・予備費 | 仕様変更対応・行政手続き・検査対応など | 5〜10 |
建築本体工事には、外壁や屋上防水・内装の改修が含まれ、設備工事費には空調や給排水・電気設備などの更新が該当します。
病院特有の感染対策やクリーンルームの設置などがある場合、設備費用は一般の施設よりも高額になるケースが多いです。
仮設工事費とは、診療を継続するために必要な仮設診療所や通路・養生などにかかる費用です。
特に院内での導線確保や安全確保のために、一般建築以上に丁寧な仮設計画が必要となり、それに伴う費用も増加します。
設計・監理費は、設計事務所や施工業者が行う調査・設計図の作成・工事監理にかかる費用で、全体費用の5〜15%程度が目安です。
その他、行政手続きや検査に関わる雑費なども含め、総額で数千万円〜数億円規模になることが一般的です。
さらに、緊急時や予期せぬ仕様変更に備えて「予備費」を計上しておくことが推奨されます。
特に医療施設では、設備機器の納期遅延や診療科の要望に応じた変更が発生しやすいため、全体予算の5〜10%程度を予備費として見込んでおくと安心です。
病院の大規模修繕修繕工事で起きやすいトラブルとその防止策
大規模な病院修繕では、多くの関係者と工程が複雑に絡むため、さまざまなトラブルが発生しやすくなります。
安全かつスムーズな修繕工事を行うためにも、代表的な問題とその対処法について把握しておきましょう。
診療妨害・クレームへの対応策
工事中に発生する騒音や振動・粉塵などが患者や医療スタッフに与える影響は大きく、診療の妨げやクレームにつながる可能性があります。
このような事態を防ぐためにも、事前に工事内容や期間を院内掲示や説明会などで周知し、患者や職員の理解を得ることが基本です。
また、苦情や問い合わせに即座に対応できる窓口を設けることで、不満がエスカレートする前に対処できます。
加えて、作業時間を調整して診療への影響を最小限に抑えるなど、柔軟な対応も重要です。
工期遅延・コスト増加の原因と防止法
工期の遅延や予算の超過は、工事全体の信頼性を損なう要因となります。
これらを防ぐには、定期的な進捗確認と早期のフィードバックが欠かせません。
週次や月次での打ち合わせを行い、現場の状況を即座に把握できる体制を整えましょう。
また、資材調達の遅延や仕様変更に備え、予備費の確保や代替資材の検討も効果的です。
設計段階での精度向上と仕様の早期確定も、工事開始後の手戻りを減らすうえで非常に重要です。
施工中の事故・ヒヤリハット対策
安全管理の徹底も、欠かせません。
病院内では多くの人が行き交い、設備も複雑なため、事故が発生しやすい環境と言えます。
事故防止には、作業エリアの明確な区画・表示、作業員・職員への安全教育の徹底、緊急時の連絡体制や避難経路の共有などが効果的です。
特に医療機器や電源系統への影響がある場合は、誤作動や電源断を未然に防ぐための確認手順を明文化し、複数人でのチェック体制を整えておくことが望ましいです。
情報伝達ミスによる混乱防止策
多職種が関わる病院修繕では、情報伝達ミスが混乱の原因になることもあります。
特に、工事に伴う通行制限や診療機能の一時的な変更などは、共有の不徹底が業務支障を招きかねません。
こうしたリスクを防ぐには、工事関連情報を一元化して管理できるシステムの導入や、定例会議での情報共有を徹底することが効果的です。
掲示板やメール・口頭連絡など、複数手段を併用して伝達漏れを防止する仕組みを構築しましょう。
病院の大規模修繕を依頼する業者選定のポイント
病院の大規模修繕では、専門性と実績のある施工業者を選ぶことが成功の鍵となります。
通常のビルや住宅とは異なり、病院特有の設備や衛生環境・診療の継続性などに配慮した工事が求められるため、経験豊富な業者でなければスムーズな対応が難しいのが実情です。
業者選定の際に確認すべき主なポイントは、以下のとおりです。
- 病院・医療施設での施工実績があるか…どのような施設で、どの規模の修繕を行ったのか、工程管理や診療への配慮がどう行われたかを確認しましょう。
- 医療スタッフとの調整・連携経験があるか…診療スケジュールとの調整や緊急時の対応経験など、現場対応力を見極める材料になります。
- 提案力があるか…修繕内容の提案時に、予算に応じた複数の工法や資材選定を提示できる業者は、状況の把握力と柔軟性に優れています。
- 柔軟な施工体制を整えているか…夜間・休日の施工対応や、突発的なスケジュール変更への対応可否も重要です。
- 現場見学や面談を実施できるか…書面上の評価だけでなく、実際の担当者との面談や過去の施工現場見学で信頼性を確認することが望ましいです。
これらの観点から業者を選定することで、診療を継続しながらの大規模修繕を安全かつスムーズに進めることが可能になります。
よくあるQ&A
Q
診療を止めずに本当に工事できますか?
A
診療時間外の作業やエリアごとの段階施工・仮設診療所の設置などにより、診療への影響を最小限に抑えられます。
このような配慮を行うことで、診療を工事の同時進行が可能になります。
Q
工事中の騒音や振動はどの程度ありますか?
A
作業内容によって異なりますが、遮音パネルの設置や作業時間帯の工夫によって、できる限りの配慮がなされます。
事前説明で影響範囲を把握することが、大切です。
Q
病棟内にほこりは出ませんか?
A
防塵シートやエアシャワーの設置、陰圧管理による粉塵対策などを講じることで、空気中の汚染を防ぎます。
特に、感染症対策エリアでは厳重に管理されます。
Q
修繕の優先順位はどう決めればいいですか?
A
まずは構造や設備の安全性、診療機能に直結するエリアを優先するのが基本です。
そのうえで、予算や使用頻度を加味し、段階的に進める計画を立てましょう。
Q
修繕にかかる平均的な期間は?
A
内容や規模によって異なりますが、数カ月〜1年以上かかることもあります。
診療と両立させるため、工程は余裕を持たせて調整されます。
Q
業者とのトラブルが起きたらどうすればいい?
A
基本的には、契約書に記載された範囲で対応が可能です。
特に瑕疵担保責任やアフター対応の内容は事前に明確にし、定例会議などで密に連携を取ることが大切です。
まとめ
病院の大規模修繕は、診療を止めることなく進めるという非常に高度なプロジェクトであり、緻密な計画と多方面との調整が不可欠です。
特に、医療現場への配慮・感染対策・安全管理・段階的な進行といった要素は、通常の建築工事とは比べものにならないほど高い水準での対応が求められます。
成功のためには、準備段階から病院スタッフと密に連携し、現場の実情を反映させた修繕計画を立案することが重要です。
そのうえで、実績と柔軟性を兼ね備えた施工業者と協力し、段階的に作業を進めていくことが、円滑な工事の実現につながります。
また、想定外の事態にも対応できるよう、予備費の確保や工程に余裕を持たせておくことで、長期的に安定した病院運営を支える修繕が実現できます。
病院修繕は単なる工事ではなく、医療の質と安全を支える重要なインフラ整備であるという認識を持って取り組むことが、よりよい環境づくりにつながるでしょう。