防水工事は、建物のメンテナンスとして欠かせません。
近年屋上の陸屋根でも使用されている工法として、ウレタン防水が選ばれていますが、ベランダやバルコニーなどへの施工が中心でした。
そこで本記事では、ウレタン防水のメリットとデメリット・ウレタン防水の工法・費用相場など、この工法ついて詳しく紹介します。
ウレタン防水がどのようなものなのかを解説しますので、さまざまな防水工事のなかからどれを選べばいいか迷っている方も参考になるでしょう。
ウレタン防水の依頼を考えている方や防水工事選びにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ウレタン防水とは?
ウレタン防水とは、ウレタン樹脂と呼ばれる液体状の樹脂を塗り、防水層を作る工法のことです。
別名ウレタン塗膜防水とも呼ばれており、以前は耐久性が低さが問題となっていました。
しかし、近年では新しい製品開発が進んだことにより、耐久性と防水性が高くなりました。
そのため現在では、防水工事の主流の工法です。
また、ウレタンの素材は弾力性があり耐摩耗性にも優れているため、車のタイヤ・接着剤・スポンジなどにも用いられています。
ウレタン防水のメリット
ウレタン防水には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
下記の3点が主なメリットです。
低コストで施工ができる
ウレタン防水のメリットは、なんといっても低コストで施工できることです。
防水工事には、ウレタン防水以外にもFRP防水やシート防水などさまざまな工法があります。
ウレタン防水は、防水工事のなかでも最も低コストで施工が可能です。
下記に、ウレタン防水・FRP防水・シート防水それぞれの費用相場と工期・耐用年数を紹介します。
ウレタン防水 | FRP防水 | シート防水 | |
費用 1平方メートルあたり | 3,000〜7,000円 | 4,000〜7,500円 | 2,500〜7,500円 |
工期 | 約3〜10日 | 約1〜2日 | 約1〜5日 |
耐用年数 | 約10〜12年 | 約12〜20年 | 約10〜15年 |
上記のとおり、ウレタン防水は低コストで施工が可能です。
また基本的に、施工面積が広ければ広いほど費用がかかります。
そのため、1平米の単価で見ると差がないように思えますが、面積の広い場所で施工すると場合、費用の差が大きくなるでしょう。
伸縮性がある
ウレタン防水に使うウレタン樹脂は、ポリウレタンと呼ばれるプラスチック素材です。
防水工事だけではなく、接着剤や洋服などにも使われるので身近な素材といえます。
ウレタン樹脂の特徴として挙げられるのが、伸縮性の高い素材であることです。
伸縮性が高いと、温度変化で起こる伸縮や地震の揺れによる防水層の劣化を防ぐことができます。
とくに、防水層が劣化するとひび割れが起きて、雨水が浸入しやすくなってしまいます。
伸縮性があれば、自然災害によるダメージを受けても急激な劣化や破損を防げるでしょう。
複雑な箇所にも施工可能
ウレタン防水で使われるウレタン樹脂は、液体状の防水塗料です。
液体状のため、複雑な箇所でもスムーズに施工できます。
さらに、継ぎ目ができないのもメリットです。
別な工法のシート防水は、シート同士の継ぎ目がどうしても発生してしまいます。
継ぎ目は雨水が浸入しやすい部分のため、劣化の原因になる場合があります。
しかし液体状の防水塗料を使用するウレタン防水は、複雑な箇所でも継ぎ目ができません。
そのため、剥がれたりめくれたりするリスクも少ないため、長持ちする工法といえるでしょう。
ウレタン防水のデメリット
ウレタン防水のメリットを紹介しましたが、デメリットもあります。
ウレタン防水のデメリットは、主に3つあります。
紫外線に弱い
ウレタン防水は、紫外線に弱いです。
そのため、紫外線のダメージを受けてしまうと、劣化が進んでしまいます。
劣化の症状は色あせ・ひび割れ・破れなどで、とくに紫外線のダメージを受けやすい外壁・屋根・屋上は、劣化のスピードが早い傾向にあります。
このようなダメージを少しでも軽減するため、ウレタン防水の施工をする際は、防水層を保護するトップコートの塗布が必須です。
またトップコートも、時間の経過とともに劣化してしまうので、定期的に塗り直す必要があります。
乾燥まで時間がかかる
ウレタン防水は、塗料が乾燥するまで時間がかかります。
ウレタン防水に使われるウレタン樹脂は硬化スピードが遅い塗料のため、乾燥に時間がかかると工期に影響します。
ベランダの施工の場合、FRP防水なら1〜2日で完成しても、ウレタン防水の場合は3〜10日ほどかかります。
また乾燥までの時間は天候によっても左右されるので、悪天候の場合はさらに工期を要するでしょう。
職人によって仕上がりが左右される
ウレタン防水では、職人が塗料を塗布して防水層を形成していきます。
そのため、職人の腕によって仕上がりが左右されやすいのです。
一方でシート防水は、完成している防水層を施工していくので、職人の腕は大きく影響を与えません。
しかしウレタン防水は、塗料を3ミリほどの厚さで全体を均等に重ね塗りする必要があります。
厚すぎるのも薄すぎるのも性能が落ちてしまうので、均一な厚みに塗る技術が必要です。
ウレタン防水は、防水工事のなかでも高い技術が求められるので、依頼先は慎重に選びましょう。
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ウレタン防水に使われる工法
基本的には、液体ウレタン樹脂を均一に塗布して、継ぎ目のない防水層を形成します。
特殊な機械を使わないので、大きな騒音は発生しないものの、下地処理の際に用いる工具によっては、騒音が発生する場合もあるでしょう。
また液体ウレタン樹脂は特殊なニオイがあるので、施工中はもちろん施工後も換気を行うことが大切です。
ウレタン防水の工法は、密着工法・密着メッシュ工法・通気緩衝工法の3種類があるので、下記に詳しくご紹介します。
密着工法
ウレタン樹脂を下地に直接塗ることで防水層を作り、水を防ぎます。
十分に密着させるためにも、最初にホコリや汚れをしっかりと取り除いておくことが重要です。
下地の形状に馴染みやすく密着性が高いため、既存の防水層への重ね塗りに適しています。
また防水層自体が軽いので、建物へかかる負担が少ないのがメリットです。
継ぎ目のない施工ができるので、綺麗な仕上がりになります。
そのため、複雑な形状であるベランダの施工にも向いているといえるでしょう。
密着工法は、新築や劣化が少ない部分に使われることが多い傾向にあります。
下地が乾燥するまで時間がかかるため、全体ではなく部分的に使用することが多いです。
低コストかつスピーディーな施工が可能ですが、下地の影響を受けやすく、ひび割れが起こりやすい工法でもあります。
通気緩衝工法
通気緩衝工法とは、絶縁工法とも呼ばれ、ウレタン樹脂を下地に密着させない工法です。
無数の穴が開いた通気緩行シートと呼ばれる防水シートを下地に貼り、ウレタンと下地の密着を防止します。
また脱気装置も設置するため、防水層の水分を外に排出させることが可能です。
密着工法では湿気によって膨れが起きてしまいますが、通気緩衝工法は膨れが起きにくい特徴があります。
膨れの原因となる水分をカットし、蒸気化した水分も脱気装置で排出できるため膨れを防止できる仕組みです。
通気緩衝工法は下地に水分が残っていても施工が可能なため、水分を多く吸収している築年数の古い建物や完全乾燥が難しい建物に向いています。
密着メッシュ工法
密着メッシュ工法は、ウレタン樹脂とメッシュの補強布を用いた工法です。
施工する部分に接着剤のプライマーを塗り、メッシュの補強布を貼り付けます。
そしてメッシュの補強布の上にウレタン樹脂を2層重ね塗りし、硬化させたあとトップコートを塗って完成です。
工程数が多いため大変そうに見えますが、通気緩衝工法よりも複雑ではなく、コストも比較的低いです。
密着メッシュ工法は、主に施工面積が狭めのベランダやバルコニーだけではなく、屋上や屋根のメンテナンスに用いられる傾向があります。
しかし、下地に水分が含まれていると膨張するため、注意が必要です。
水分を含んだ下地に密着メッシュ工法でウレタン防水の施工をすると、太陽光で熱された水分が水蒸気になり、防水層を膨らませてしまいます。
防水層が膨らんでしまうとひび割れを起こしてしまうので、下地が安定した新しい建物への施工が適しています。
ウレタン防水における工法ごとの費用相場
ウレタン防水を依頼するには、相場を知っていると安心です。
工法ごとの費用相場は、以下のとおりです。
密着工法 | 密着メッシュ工法 | 通気緩衝工法 | |
費用 1平方メートルあたり | 3,500~5,000円 | 4,500~7,500円 | 6,000〜8,500円 |
工法以外には、使用する塗料のグレードや施工する広さによっても変動します。
場合によっては修繕や撤去に関する費用の発生もあるので、事前に確認しておくといいでしょう。
ウレタン防水に関するQ&A
ここではウレタン防水についての疑問やよくある質問に回答したいと思います。それぞれウレタン防水工事に関して気になる疑問などチェックしてください。
Q
ウレタン防水工事では臭いが発生する?
A
ウレタン防水工事では、施工中や乾燥中にシンナー特有の臭いが発生します。特に、ベランダやバルコニーなど室内に近い場所での工事の場合、いつもと違う刺激的な臭いを感じることがあります。十分な換気を行うことで臭いを最小限に抑えられますが、完全に取り除くことは難しいでしょう。臭いに敏感な方は、事前に施工業者に相談し、対策を検討することをおすすめします。最近では環境配慮型の溶剤もあるので、施工前に臭いの少ない溶剤を利用することも選択肢の1つです。
Q
ウレタン防水材が乾くまでにはどのくらいかかる?
A
ウレタン防水材の乾燥時間は、気温、湿度、塗布厚さ、使用する材料などの条件によって異なります。一般的に完全乾燥には48時間から72時間程度かかります。つまり3、4日前後はかかる計算になります。ただし、気温が低い場合や湿度が高い場合は、乾燥時間がさらに長くなる可能性があります。施工後は、防水層が完全に乾燥するまで水分や荷重をかけないよう注意が必要です。
Q
ウレタン防水を長持ちさせる方法は?
A
定期的な点検とメンテナンスが重要です。年に1〜2回程度、防水層などのクラック、膨れ、剥がれや損傷、劣化がないか確認し、早期に発見・補修することで耐用年数を延ばすことができます。またトップコートを塗布することで、紫外線や外的要因からウレタン防水を保護し、寿命を延ばすことも可能です。定期的なメンテナンスとして落ち葉や砂などのゴミを掃除することも詰まりによる水たまりなどを防ぎ長持ちさせる秘訣です。
ウレタン防水工事についてのまとめ
本記事でご紹介した内容をまとめると、下記のとおりです。
- ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を用いて防水層を構築する工法で、近年の製品開発により耐久性と防水性が向上している
- ウレタン防水のメリットは、低コストでの施工が可能で伸縮性によって温度変化や地震の影響を受けにくく、複雑な箇所でも施工できる
- ウレタン防水のデメリットは、紫外線に弱く劣化が起こりやすいこと、乾燥までの時間がかかること、職人の技術によって仕上がりが左右されること
- ウレタン防水の工法には、密着工法・密着メッシュ工法・通気緩衝工法の3種類があり、それぞれ異なる特徴や適用場所がある
- 費用相場は1平米あたり約3,000〜7,500円程度であり、工法や施工面積によって異なるため、事前に確認が必要
ウレタン防水は、ベランダ・バルコニー・陸屋根など、幅広い場所に利用できる防水工事です。
塗料の進歩によって防水工事のなかでも多く採用されているので、内容を参考にしながら検討してみてください。
また、ウレタン防水はDIYも可能ですが、材料の取り扱いが難しく不具合が発生する場合もあるため、専門業者へ依頼すると良いでしょう。
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