マンションやアパートなどの不動産を所有していると、定期的に「大規模修繕」という大きな工事が必要になります。
建物の資産価値を維持・向上させるために不可欠なこの修繕ですが、工事費用が高額になることから、税務処理の方法に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
特に確定申告の際、大規模修繕費用をどのように計上すべきかは、不動産経営において非常に重要なポイントです。
本記事は、この費用区分の判断基準や具体的な処理方法・確定申告が必要なケース・適切な税務処理を行うための準備や注意点などについて解説します。
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目次
大規模修繕とは
マンションやアパートなどの集合住宅では、築年数の経過にともなう建物の老朽化は避けられません。
こうした老朽化に対応し、資産価値や安全性を維持・向上させるために実施されるのが「大規模修繕」です。
具体的には、外壁の補修や屋上防水・配管設備の更新・共用部分の改修など、居住環境全体の質を保つために必要な工事が該当します。
これらの修繕は、見た目の美しさだけでなく、雨漏りや構造劣化といった重大なトラブルを未然に防ぐ役割も果たします。
特に不動産投資においては、大規模修繕の有無が入居者の定着率や物件の収益性に直結します。
適切なタイミングで修繕を実施し、計画的に資金を確保しておくことが、長期的に見て非常に重要です。
所有物件の価値を守るだけでなく、信頼されるオーナーであるためにも、大規模修繕は避けて通れない管理業務の一つと言えるでしょう。
確定申告とは
確定申告とは、1年間(通常は1月1日から12月31日まで)に得た所得や経費を集計し、納めるべき税金の額を自ら計算して税務署に申告する手続きです。
主に個人事業主やフリーランスが行うものと思われがちですが、不動産所得のある方や副収入が一定額を超える会社員・譲渡所得や医療費控除を申請する方なども対象となります。
不動産オーナーの場合、家賃収入は「不動産所得」として課税対象になり、必要経費を適正に計上することで、課税所得を抑えることにつながります。
確定申告は納税義務を果たすだけでなく、適正な経費処理によって税負担を軽減する機会にもなります。
特にマンションなどの収益物件を所有している場合、確定申告の知識は不動産経営における重要なスキルの一つとも言えます。
大規模修繕費用における税務上の区分について
大規模修繕にかかった費用を税務上どのように扱うかは、その工事内容によって大きく2つに分けられます。
それが「修繕費」と「資本的支出」です。
この区分は、費用をいつ・どのくらいの金額で経費として計上できるかに直結するため、税負担に直接的な影響を与えます。
修繕費とは
建物の通常の維持管理や劣化した部分を元の状態に戻すための原状回復を目的とした支出を指します。
工事を行ったその年の必要経費として、費用全額を一括で計上するのが一般的です。
修繕費として処理できれば、その年の所得を大きく減らすことができるため、納める税金が少なくなり、結果として手元に残るお金が多くなります。
資本的支出とは
建物の価値を増加させたり耐久性や機能性を向上させたりするような、資産の価値を高めることを目的とした支出を指します。
資本的支出と判断された費用は、修繕費のようにその年の経費として一括で計上することはできません。
基本的には「減価償却」という手続きを通じて、建物の法定耐用年数に基づき、一定の期間にわたって段階的に費用として計上していきます。
どちらの区分になるかで、税金計算が大きく変わるため、この違いを正しく理解することが、適切な税務処理の第一歩です。
また意図的に税金を減らす目的で区分を誤ると、税務調査で指摘を受け、追徴課税が発生する可能性もあるため注意しましょう。
大規模修繕費用における税務上の判断基準
大規模修繕の費用が「修繕費」となるか「資本的支出」となるかは、工事内容が維持管理や原状回復のための支出なのか、それとも価値や性能向上をもたらす支出なのかを判断し決定されます。
確定申告や節税にも大きく影響するため、工事の内容や目的を的確に把握したうえで、正しく判断することが大切です。
修繕費として処理できる工事内容
修繕費として税務処理が認められるのは、建物の通常の維持管理や、損傷部分の原状回復を目的とした工事にかかる費用です。
具体的には、以下のような工事が修繕費に該当します。
- 外壁の塗装工事
- 壊れた部分を交換する工事
- 原状回復工事
- 雨漏りの修繕工事
- 故障した備品や設備の修理工事
- 外壁のひび割れ補修工事
これらの工事は、あくまで既存の建物の性能や機能を維持すること、あるいは劣化を修繕して元の状態に戻すことを目的としているため、修繕費として一括経費計上できます。
ただし、使用する材料のグレードを大幅に上げたり、機能を追加したりする場合は、後述の「資本的支出」に該当する可能性も出てくるため、注意が必要です。
資本的支出と判断される工事内容
資本的支出と判断されるのは、建物の価値を増す・耐久性を高める・機能を向上させるといった目的で行われる工事や設備投資です。
修繕費のようにその年に全額経費にすることはできず、減価償却によって複数年に分けて経費計上することになります。
具体的な工事内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- エレベーターの入れ替え工事
- 屋上防水の全面改修工事
- 非常階段の取り付け工事
- 耐久性を増すための外壁材変更工事
- グレードアップした設備の取り付け工事
- 耐震補強工事
- 増改築工事
- バリアフリー工事
これらの工事は、建物の物理的な寿命を延ばしたり、市場における競争力を高めたりすることを目的とするため、資産価値の増加や機能向上につながる「資本的支出」と判断されます。
また、グレードアップした設備を取り付けた場合、同等品への交換費用との差額部分が資本的支出と認められるケースもあります。
判断が難しい場合の判断基準
大規模修繕の費用が「修繕費」となるか「資本的支出」となるか、その判断は容易なものではありません。
工事内容によっては、両方の要素を含んでいたり、どちらとも明確に区別できなかったりするケースも多くあります。
そのため、以下のような修繕費に該当するかどうかの形式基準が設けられています。
種類 | 修繕費として認められる条件 |
少額な費用の基準 | 1件ごとの支出が20万円未満(工事項目ごと・場所ごとに区分して判断) |
周期的な修繕の基準 | 概ね3年以内の周期で繰り返し行う修繕(継続的・計画的に実施される修理・改良を含む) |
不明瞭な場合の基準 | 以下のいずれかに該当する場合:・費用が60万円未満・対象資産の前期末取得価額の10%以下(取得価額=購入・建設費+過去の資本的支出分) |
これらの判断基準は複雑であるため、判断に迷う場合や、自社のケースに適用できる特例があるか確認したい場合は、税務署や税理士などの専門家に相談するのが安心です。
参考:国税庁 資本的支出と修繕費
大規模修繕の費用を確定申告する流れ
大規模修繕費用が修繕費と判断された場合、その費用は工事が完了し支払いが確定した事業年度(通常は工事を行った年)の必要経費として、確定申告で一括して計上します。
資本的支出と判断された場合、その支出金額は該当する固定資産として帳簿に計上・登録し、法定耐用年数に基づいて減価償却を行います。
毎年、償却限度額の範囲内で算出された減価償却費を経費として計上し、それをもとに確定申告を行う流れになります。
また原則として確定申告が必要とされているのは、マンションやアパートといった不動産賃貸業を営んでいる場合です。
賃貸経営から得られる収入(家賃収入など)から、必要経費(ローンの利息・固定資産税・管理費・修繕費など)を差し引いて所得を計算し、その所得に対して所得税などが課税されます。
修繕費を適切に必要経費として計上することは、所得を圧縮し納める税金を少なくするための重要な節税対策の一つです。
確定申告の流れ
- STEP
確定申告に必要な書類を準備する
税務署から入手する申告書類や不動産に関する書類(不動産売買契約書・賃貸借契約書・家賃送金明細書など)・所得や控除に関する書類(源泉徴収票、生命保険料控除証明書など)を準備します。
申告書類は税務署の窓口や郵送をはじめ、オンラインで作成・提出することも可能です。
不動産関連書類は、不動産会社や管理会社が発行するものもあるため事前に確認し、早めに用意しておきましょう。
- STEP
経費に関する書類を準備する
修繕費の確定申告にて欠かせないのが、大規模修繕費用に関する契約書・見積書・工事内容が分かる明細書・領収書などの書類です。
これらが不足していると、税務署からの問い合わせや税務調査に対応できない可能性があるため、しっかり保管し、確定申告前に準備しておきましょう。
また、不動産経営に関する経費経費として計上する費用の支払いを示す書類(ローンの支払明細書・固定資産税や都市計画税の納付書・管理会社への支払明細など)も、同様です。
- STEP
申告書類の作成と提出
準備した書類に基づいて、所得と経費を計算し、申告書類に記入します
作成した申告書類を税務署に提出します提出方法は、税務署の窓口への持参・郵送、またはオンラインでの申告があります。
なお確定申告手続きに不安がある場合は、その場で不明点を質問したり書類の不備を確認してもらえたりするため、直接税務署の窓口に持参するのがおすすめです。
これらの手順を正確に行うことで、修繕費として適切に費用計上でき、その年の納税額を抑え、資金繰りを有利に進められます。
適切な税務処理を行うためのポイント
大規模修繕にかかる費用は、高額かつ内容が多岐にわたるため、税務上の処理方法を誤ってしまうと、後々の税務調査や申告修正といったトラブルにつながる可能性があります。
そのため、申告そのものの正確さはもちろん、事前の準備や日頃の帳簿・書類管理も含め、総合的に丁寧な対応が求められます。
税務処理を適切に進めるためにも、修繕費や資本的支出の判断・計上にあたって、押さえておきたい重要なポイントを把握しておきましょう。
工事に関する各種書類をきちんと保管しておく
工事の契約書・施工会社からの見積書・工事内容の詳細が分かる明細書、そして支払いを証明する領収書や振込明細書などの書類は、税務署に修繕費または資本的支出として計上した根拠を示すための証拠となるものです。
特に税務調査が入った際には必ず確認されるため、いつでも提示できるように整理して保管しておく必要があります。
帳簿付けを正確に行う
適切な税務処理を行ううえで、日々の帳簿管理は欠かせません。
特に大規模修繕に関わる支出を「修繕費」として経費処理するのか、「資本的支出」として固定資産に計上するのかの判断は、帳簿上にも明確に区分する必要があります。
例えば、修繕費として処理する場合は「修繕費」勘定で仕訳、資本的支出と判断された場合は「建物」や「構築物」として固定資産勘定に計上するなどです。
さらに資本的支出とした資産は、固定資産台帳に登録して継続的に管理し、毎年の減価償却費を適正に計上する必要があります。
減価償却の計算を誤ると、課税所得が過少・過大になる可能性があるため、定期的なチェックと正確な会計処理が不可欠です。
このような帳簿付けの精度が、確定申告の際はもちろん、税務署からの確認にも耐えうる「信頼性のある帳簿」として評価されるのです。
修繕費として計上するための方法と注意点
支出した年度に全額を一括で経費計上でき、確定申告まで行えるため、大規模修繕費をできるだけ修繕費として処理したいと考えるオーナーは少なくありません。
税務署に「修繕費」と認められないといった事態を避けるためには、原則に従いつつ、判断基準を理解したうえで工夫を凝らす必要があります。
有効な対策として挙げられるのが、見積もりを項目・工事箇所ごとに分けることです。
施工会社に依頼し、工事全体の見積もりを細かな項目や工事個所ごとに分割してもらうことで「1件20万円未満の工事は修繕費」という形式基準を活用できる可能性が高まります。
全体では高額でも、個々の項目が20万円未満であれば修繕費として処理できることがあるため、詳細を確認しておきましょう。
ただし、あくまで適法な範囲内での対応に限ります。
実際の工事内容が明らかに資本的支出であるにも関わらず、形式基準だけを根拠に意図的に修繕費として計上することは、税務調査で利益操作と見なされ、否認されて追徴課税を受けるリスクをともなうため注意が必要です。
そのため判断に迷う場合や、ご自身のケースでどの基準が適用されるのか不安がある場合は、必ず税理士などの専門家に相談することを忘れてはいけません。
特に不動産関連の税務に詳しい税理士に相談することで、最新の税法や過去の判例・税務署の判断事例などを踏まえて、適切なアドバイスや処理方法を提案してもらえるでしょう。
将来の税務調査を見据えた適正な処理を行うことは、安心感を得たりトラブルを避けたりするのに役立ちます。
所有形態別の対応ポイント
大規模修繕費用の税務処理は、物件の所有形態や用途によって対応のポイントが異なります。
必要な手続きや節税の効果を逃さないためにも、ご自身がどのパターンに該当するのか把握したうえで適切な対応を行いましょう。
賃貸物件として運用している場合
マンションやアパートの一室(区分所有)を賃貸に出している方や、一棟マンション・アパート全体を賃貸経営しているオーナーは、不動産所得について確定申告を行うのが基本です。
この場合、大規模修繕にかかった費用は、事業遂行のために必要な経費となります。
前述の通り、その費用が修繕費と判断されればその年の経費に一括計上でき、資本的支出と判断されれば減価償却によって複数年にわたって経費計上することになります。
どちらで処理できるかによって、年間の不動産所得の金額・納める税金の額が大きく変わってくるため、確定申告における大規模修繕費の取り扱いを正しく理解し、適切に処理することが非常に重要です。
管理組合が主体となって大規模修繕を実施する場合でも、各区分所有者として費用負担分をどのように税務処理するかを把握しておく必要があります。
自宅として居住している場合
ご自身が居住しているマンションや一戸建てにかかる修繕費や改修費は、税務上の必要経費としては認められないのが一般的です。
これは、事業として不動産から収入を得ているわけではないことから、その維持・管理にかかる費用は家事費とみなされるためです。
したがって、自宅の大規模修繕費に関しては、確定申告で経費として計上する必要はないと考えて良いでしょう。
ただし自宅であっても、将来その物件を売却する可能性がある場合は、修繕やリフォームにかかった費用の記録を残しておくと安心です。
そうすることで、不動産を売却した際に発生する譲渡所得の計算において、建物の「取得費」に、資本的支出とみなされるリフォーム費用などを加算できる可能性があります。
取得費が増えれば、譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税の税負担軽減につながるでしょう。
まとめ
マンションやアパートの大規模修繕費用は、確定申告における税務処理が非常に重要です。
費用は「修繕費」と「資本的支出」のいずれかに区分されます。
修繕費は建物の価値や性能を維持・回復するための支出であり、支出した年度に一括で経費計上できるという特徴があります。
一方で資本的支出は、建物の価値を高めるための改良や増築などの支出であり、支出した年度に一括で経費にできず、耐用年数に応じて数年にわたり減価償却する必要があります。
そのため、一括で確定申告が行える「修繕費」の方が、節税効果も大きいと言えます。
しかし、節税効果だけで判断すると税務リスクを招くこともあります。
税務署は、工事の内容や目的に基づき厳密に「修繕費」か「資本的支出」かを判定します。
見かけ上は同じ工事でも、その実態や目的が「価値向上」と判断されれば資本的支出として処理しなければならず、不適切な経費計上は追徴課税や延滞税の対象となることもあります。
したがって、工事の契約書や見積書・工事完了報告書などの書類に工事目的を明確に記載し、修繕費・資本的支出の区分根拠をきちんと残すことが重要です。
また大規模修繕費の税務処理は、単に節税だけを追求するのではなく、適正な区分と証拠資料の整備・専門家のアドバイスのもとで計画的に行うことが何よりも重要です。
そうすることで税務リスクを抑えつつ、建物の維持・価値向上と安定した不動産経営を実現できます。
毎年の確定申告を円滑に進めるためにも、修繕費の性質や計上方法を理解し、日頃から正確な帳簿管理と書類保存を心がけることが不可欠です。
大規模修繕を予定している方は、早めに税理士へ相談し、最善の方法で税務処理を行う準備を整えましょう。
大規模修繕は、資産の価値を守り不動産経営の継続的な成功を支える重要な投資と言えます。
税務処理の正確さが、将来の安心と経営の健全さにつながることを意識したうえで、日々の管理業務を行うことが大切です。
目先の節税だけでなく、建物の安全性・機能性・美観を維持向上させ、入居者に選ばれる物件にするという大規模修繕本来の目的を理解し、長期的な経営視点を持って計画を進めることが大切です。
正しい知識に基づいた税務処理と経営判断が、法令遵守と資産価値の維持・向上につながるでしょう。