さまざまな防水工事の種類と選び方を解説
2024/09/06
建物の寿命を伸ばすには、さまざまな部分の保護機能をメンテナンスによって改善させる必要があります。
なかでも防水工事は、雨漏りによる建物へのダメージを防ぐため、定期的に行うことが大切です。
そこで本記事では、防水工事の種類や選び方について解説します。
防水工事の必要性や種類ごとの特徴を説明し、適切な防水工事を選択するためのポイントについても触れています。
防水性能の維持に重要な工事なので、建物の維持管理を必要されている方は、参考としてご覧ください。
なぜ防水工事が必要なのか?
ここではなぜ防水工事が必要なのか、その理由や防水工事が施される箇所を紹介します。
建物の耐久性向上と防水工事
防水工事は、建物を雨や風から守り劣化を防ぐために必要な工事です。 建物は定期的なメンテナンスをすることで、長期的に健康な状態を保つことができます。 建物の中でもメンテナンスが行き届きにくい屋上は、劣化によって雨漏りや腐食を起こす原因にも繋がりますし、状態によっては防水工事を依頼するよりも料金が高くつく場合も。 このような被害を防ぐためには、事前に防水工事で建物自体を雨や風などから守れるよう対策しておくことが大切です。
防水工事が施される箇所
防水工事が施される場所は以下のとおりです。 屋上 ベランダ 浴室 トイレ キッチン 室内など 雨や風でさらされやすい箇所以外にも、水を利用する頻度の多い浴室やトイレ、キッチンなど室内に設置されている箇所でも漏水や地下水対策として防水工事が必要となります。 また防水工事は1度行えば永久的に効果が期待できるわけではありません。 経年劣化によって塗膜のひび割れや剥がれが起こる可能性もありますので、注意が必要です。
各種防水工事の種類と特徴
「防水工事」と一言にしても種類は豊富。
防水工事を依頼したいと考えたら、まずは防水工事の種類をチェックしておきましょう。
防水工事の種類は主に5種類です。
- 塗膜防水
- ゴムシート防水
- 塩ビシート防水
- FRP防水
- アスファルト防水
また、5つそれぞれの防水工事に関してメリット・デメリットがあります。
ここでは、5つの防水工事についてメリット・デメリットをわかりやすく紹介します。
1.塗膜防水
塗膜防水とは、ウレタンやエポキシ樹脂と呼ばれる素材を原料にした液体の防水材料をスプレーやハケなどを利用して下地に1回〜数回塗布することにより、防水効果が期待できる膜を作る方法です。
塗装の仕上げとして行うことも多く、屋根や外壁などあらゆる箇所に使用できます。
塗膜防水のメリットとデメリット
塗膜防水のメリットは以下のとおりです。
- あらゆる箇所で使用できる
- 元々防水層がある場合でも上塗りできる
- 産業廃棄物を出さず、費用を抑えられる
- 液状の液体を塗布して固めるので、継ぎ目ができず仕上がりが綺麗に見える
塗膜防水は、複雑な形状をしている箇所でも利用できる防水工事法です。
元々防水層がある場合、通常だと産業廃棄物が出る防水工事法を採用する業者もありますが、塗膜防水であれば、防水層の上から上塗りできるので、産業廃棄物を出さず、その分費用を抑えられます。
加えて、塗膜防水は液状の液体を塗布し、固めて防水加工を施す防水工事法なので、塗布した部分に継ぎ目のような見た目に違和感が出るようなこともなく、綺麗な仕上がりが期待できます。
一方、塗装防水のデメリットは以下のとおりです。
- 乾かすのに時間がかかる
- デザイン性は期待できない
- 塗布する職人の腕によって仕上がりが左右される
- 他の防水工事法と比較すると耐用年数が短い
塗膜防水の大きなデメリットは、塗布した液状の液体が乾くまで時間がかかることです。
乾かす時間が長ければ長い程、その分、工期が長期化しがちと言えます。
またデザイン性はあまり期待できないことや、塗布する職人の技術力によって見た目の仕上がりが左右されてしまう点もデメリットと言えるでしょう。
加えて、他の防水工事法で期待できる耐用年数(防水保証年数)が10年程度であるのに対し、塗膜防水に関しては耐用年数が5年程と短い点もデメリットとなっています。
2.ゴムシート防水
ゴムシート防水とは、シート状に形成した合成ゴム糸の防水シートを接着剤や機械などで下地に貼り付け・固定して防水加工する防水工事法です。
使用される防水シートの厚さは1.2mm〜2.0mmで耐用年数も10〜15年前後と比較的簡単に防水対策ができる防水工事法となっています。
ゴムシート防水のメリットとデメリット
ゴムシート防水のメリットは以下のとおりです。
- 伸縮性が高く耐久性に優れている
- 他の防水工事法と比較して工期が短く済む
- 温度の変化や高温にも耐えられるタフな面を持つ
ゴムシート防水の大きなメリットは、ゴムならではの「伸縮性」でしょう。
耐久性に優れており、耐用年数も長め。加えて工期に関しても2日〜程度と塗膜防水やアスファルト防水と比較しても工期が短く済む点もメリットとなっています。
- 塗膜防水:4日〜5日程度
- アスファルト防水:1週間〜1週間半程度
その他にも、温度の変化や夏の熱い太陽による日差しにも耐えられるタフな面もあります。
そのため、野外や屋上の防水工事で使用されることの多い防水工事法です。
一方、ゴムシート防水には以下のようなデメリットもあります。
- 防水層の厚みが薄いので鳥による被害を受けやすい
- 複雑な形状には利用しにくい
- ラップ部分(ゴムシート同士が重なっている部分)が劣化しやすい
先ほど解説したとおり、ゴムシート防水で使用されるシートはとても厚みが薄く、鳥による啄み(ついばみ)や衝撃に弱い点が大きなデメリットです。
また下地とゴムシートをしっかりと接着させるためには、下地が平らの状態でなければならないので、複雑な形状の部分へは利用しにくい点も挙げられます。
加えて、ゴムシート同士が重なっている部分は劣化しやすく、そのまま放置しているとその部分から剥がれて水が入ってきやすくなるので、注意が必要です。
3.塩ビシート防水
塩ビシート防水とは「塩化ビニル樹脂製」のシートを接着剤や機械などで下地に貼り付け・固定して防水加工を行う防水工事法です。
ゴムシート防水と同じく屋上の防水はもちろん、バルコニーの床やマンションなどにある共用廊下などあらゆる箇所に利用できます。
塩ビシート防水のメリットとデメリット
塩ビシート防水のメリットは以下のとおりです。
- 一度に広範囲の施工ができる
- 熱やオゾン、紫外線への耐久性が優れている
- 鳥によるついばみなどの被害にも強い
- 保護層がなくても軽度の歩行ならば耐えられるタフさを持つ
- メンテナンス不要
塩ビシートは、シート型なので先ほど紹介した塗膜防水と比較して一度に広範囲の防水加工ができます。これはゴムシート防水も同様のことが言えるでしょう。
また、熱はもちろんオゾンや紫外線に対しても優れた耐久性を発揮します。
加えて、ゴムシート防水ではデメリットとして挙げた鳥のついばみによる被害も、塩ビシートの場合は問題なく利用できます。
その他にも、塩ビシートは高い伸縮性と耐久性があるので、保護層を施さなくても軽度の歩行ならば耐えられる点や、メンテンナンスが不要な点もメリットと言えるでしょう。
一方、塩ビシート防水のデメリットは以下のとおりです。
- シート同士をしっかり接着させる必要がある
- 独特なニオイが残る
- 工事費用が高くなる場合も
塩ビシートは、シート同士を接着する必要があります。
ただ、綺麗に接着できない場合はつなぎ目が不自然で見た目に違和感が生じたり、熱を使って接着させたりしなければならない点はデメリットと言えるでしょう。
また、塩ビシートは独特なニオイのあるシートで工事後しばらくは残ることが多いです。
そのため、屋上や人が近寄らない場所であれば良いのですが、生活エリアや人通りがある場所で塩ビシート防水を行う場合、ニオイに敏感な方は体調を崩す可能性もあります。
加えて、塩ビシート防水はメンテンナンスの必要性がない分、他の防水工事法と比較して料金が高めに設定されている場合もあります。
4.FRP防水
FRP防水とは「繊維強化プラスチック(Fiber reinforced Plastics)」のシートを防水加工したい部分に敷いて、その上から樹脂を塗布して硬化させる防水工事法です。
FRPはベランダやバルコニー、屋上、バスタブなど住宅に関する防水以外にも、自転車のボディパーツやロケットなどさまざまなシーンで利用されています。
FRP防水のメリットとデメリット
FRP防水のメリットは以下のとおりです。
- 高い防水性を誇る
- 軽量かつ丈夫
- 工期が短い
FRPは上で解説したとおり、バスタブやロケットなど防水性がとても重要なものにも利用される素材です。この素材で作られたシートを使用するFRP防水は高い防水性が期待できます。
また、FRP防水層は1㎡(平米)で約4kg前後と軽量で、築年数が経過しているお家のベランダやバルコニーでも安心して利用できる点がメリットと言えるでしょう。
その他にも、FRPは硬化までの時間が1時間〜2時間と短いので、全体的な工期に関しても短縮させられる点もメリットとなっています。
一方、FRP防水のデメリットは以下のとおりです。
- 料金がやや高め
- 硬化するまで独特なニオイがする
- 伸縮性がない
- 施工できる場所が限られている
- 紫外線に弱い
FRP防水は、高い防水性を誇るので、その分施工料金やメンテナンス料金が高めになります。
またとても短い時間ではあるものの、硬化するまで独特なニオイがする点もデメリットでしょう。
加えて、FRP防水は伸縮性がないので10㎡(平米)以上の広い面積や、木造住宅へ施工するとひび割れを起こす可能性があるので向いていません。
この他にも、FRP防水は長時間の紫外線に弱い点もデメリットです。
ただこれに関しては防水層の上からトップコートと呼ばれる保護膜を塗装することでカバーできるデメリットなので、5年に1回など定期的にメンテンナンスを行っていれば問題はありません。
5.アスファルト防水
アスファルト防水とは、溶解アスファルトを用いて防水加工を行う防水工事法です。
この工事法は従来の防水工事でもよく利用されています。
合成繊維不織布のシートに液状に溶かしたアスファルトをしみ込ませてコーティングしたシートを、二層以上に仕上げることで、防水機能をパワーアップさせる効果が期待できます。
またアスファルト防水は以下3つの種類で分かれています。
- 熱工法
- トーチ工法
- 常温工法
熱工法は、上で解説した溶けたアスファルトの上へ更にコーティングしたシートを貼り付けて何度も積み重ねていく防水工事法です。
トーチ工法は、アスファルトを溶かす作業は共通ですが、溶かす方法が異なります。
そして常温工法は、熱を使用せず、片面に接着効果が含まれる「改質アスファルトルーフィング」と呼ばれるシートを交互に貼り付けて防水効果を作り上げる防水工事法です。
アスファルト防水のメリットとデメリット
アスファルト防水のメリットは以下のとおりです。
- 耐用年数が長め
- 実績による効果への信頼性が高い
- 「剥がれ」が起こりにくい
アスファルト防水の耐用年数は20年前後と本記事で紹介している防水工事法で最も耐用年数が長めとなっています。
またアスファルト防水は、防水工事でよく利用される工事法なので実績も多く、防水効果によるデータも豊富に存在しているので、信頼性の高さが魅力です。
加えて、アスファルト防水は下地との密着度が高く、劣化によって起こりやすい「剥がれ」も起こりにくいという点がメリットと言えます。
一方、アスファルト防水のデメリットは以下のとおりです。
- 熱工法・トーチ工法は職人の高い技術力が必要
- アスファルトを溶かす際に独特のニオイや煙が発生する
- 木造住宅には不向き
熱工法やトーチ工法は、高い防水効果が期待できる防水工事法ですが、アスファルトを溶かすので均一に接着したり伸ばしたり、熱する必要性があります。
そのため、アスファルト防水の実績が少ない方や、技術力不足の方が施工を担当すると「せっかく工事をお願いしたのに効果がない」となる場合も考えられるでしょう。
またアスファルトを熱を使用して熱する際に火傷をしたり、独特なニオイや煙が原因で近隣にお住まいの住民からクレームを受けたりする場合もあります。
加えて、防水工事で使用されるルーフィングシートは単体でもとても重く、そこにアスファルトを重ねる必要があるので重量の問題から建物へ負担をかけやすい点もデメリットです。
これらの点を踏まえて、お家の土台が強固とは言えない木造住宅や経年劣化が進んでいる家には不向きと言えるでしょう。
適切な防水工事を選択するためのポイント
最後に、本記事で解説したことを踏まえて「適切な防水工事を選択するためのポイント」を3つ紹介します。
建物の特性と用途を把握する
防水工事には建物の特性と用途によって適している工事法があります。
そのため、建物の特性と用途をしっかりと把握して、適した工事法を選んでください。
「適した工事法が自分ではよくわからない」という場合は、ハウスメーカーやリフォーム会社、防水専門会社などにメールや電話で相談してみると良いでしょう。
また賃貸アパートやマンションの場合、大家さんや管理会社に相談することで、長年お付き合いしている業者さんを紹介してもらえる可能性もあります。
費用対効果とメンテナンスを考慮する
防水工事は、種類によって料金が異なります。
加えて、メンテンナンスが必要となる防水工事法に関しては1回ではなく、定期的にメンテンナンス料金を支払う場合もありますので以下の点に注目して選んでください。
- 料金に見合った防水効果が得られるのか
- メンテナンスが必要か・必要ではないか
- メンテナンスが必要な場合、定期的に支払える料金か
また、できるだけ安い料金で防水工事をお願いしたい場合は料金比較サイトで相場をチェックして、相場よりも高すぎない業者を選ぶと良いでしょう。
専門家のアドバイスを活用する
防水工事は頻繁に行うものでもないので、人によっては「防水工事をお願いしたいけどよくわからない」「料金相場がいくらか自分で調べるのは面倒」という方もいるかもしれません。
また、とりあえずハウスメーカーやリフォーム会社、防水専門会社に相談してみたけれど「本当に防水工事が必要なの?」と考えてしまう方もいるでしょう。
そんなときは、1つの業者に相談して決断するのではなくて「ハウスメーカーと防水専門会社」「見積もり業者とリフォーム会社」など複数の専門家に相談してみることをおすすめします。
その他にも、防水工事の料金はすべての業者が同じ料金でお願いできるわけではありませんので、専門家に相談した後は、複数の業者から話を聞き、料金を知り、そこから防水工事が必要か、どこにお願いするかを決めてください。
よくあるトラブルが、インターネットで最初に見つけた業者へ相談・見積もりをお願いして本来の相場よりも高い料金を払った方や、そもそも防水工事は必要ないのに工事してしまったというもの。
専門家へ相談のアドバイスを活用して信頼できる業者へ防水工事をお願いしましょう。
まとめ
今回は、防水工事の種類についてメリット・デメリットを含めて紹介しました。
また注意点として、適した工事法を選ばないまま、工事をお願いしてしまうと思ったような効果が期待できないまま料金だけを無駄にしてしまう場合もあるので注意が必要です。
本記事を参考に、適した工事法を選び、お家や会社を健康に保ってあげましょう。