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マンション大規模修繕工事の内容を紹介|住民側の準備や修繕費用・工事全体の流れや周期を解説

マンションに住むすべての人にとって避けて通れない「大規模修繕工事」です。定期的なメンテナンスが建物の寿命や資産価値に大きく関わるため、その内容を正しく理解することが重要です。

本記事では、大規模修繕の基本から具体的な工事項目、築年数に応じた工事の違いまで、幅広く解説します。これから大規模修繕を迎える方や検討中の管理組合の方にとって、参考になる情報をお届けします。

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目次

マンション大規模修繕工事とは?なぜ大規模修繕が必要なのか?

マンションは、外壁や屋上、バルコニーといった外部からの自然環境に日々さらされています。風雨や紫外線、温度差などの影響により、年月とともに建物は少しずつ劣化していきます。こうした経年劣化を放置すると、外壁の剥離や雨漏り、安全性の低下など、居住者の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、大規模修繕工事は「建物の性能を維持し、安全・快適な住環境を保つ」ことを目的に、一定周期で実施されます。資産価値の維持・向上を図る意味でも、計画的な修繕は不可欠です。

共用部分と専有部分の違い

大規模修繕の対象となるのは、主に「共用部分」です。これは、住民全員が利用する・または構造上全体に関わる建物部分を指します。具体的には、以下のような箇所が該当します。

  • 外壁、屋上、バルコニーの防水層
  • 共用廊下・階段
  • エントランスやエレベーター
  • 給排水管、シーリング材、鉄部(手すり・玄関扉など)

一方で、各戸の室内や設備(キッチン、浴室など)は「専有部分」に該当し、原則として各所有者の責任で管理されます。ただし、専有部分内の設備でも、配管など一部は共用部分とみなされることもあるため、区分所有法や管理規約での確認が必要です。

マンション大規模修繕工事の目的|建物の経年劣化への対応

時間の経過とともに発生するひび割れやタイルの浮き・設備の劣化などを修復し、建物の機能を回復させることを目的とします。
外壁にできた小さなひび割れでも、放置すると雨水が内部に浸入し、建物全体に深刻なダメージを与える可能性があります。

マンション大規模修繕工事の目的|安全性の維持

大規模修繕により、劣化した外壁タイルやコンクリート片の落下を防ぎ、居住者や通行人の安全を確保します。
またエレベーターなどの故障による危険を防ぐことも含まれます。

マンション大規模修繕工事の目的|資産価値の維持・向上

定期的なメンテナンスは、マンションの美観を保ち、見た目の劣化を防ぎます。
また、バリアフリー化や宅配ボックス設置などの「改修工事」を同時に行うことで、建物の性能や居住性を向上させ、資産価値を高めることにもつながります。

マンション大規模修繕工事の目的|快適な住環境の維持

大規模修繕は、外観や構造面だけでなく、住民の快適さにも直結します。
例えば、外壁のひび割れから雨水が浸入するとカビや結露の原因になり、住環境の悪化を招きます。
また、バルコニーの防水工事や共用廊下の滑り止め加工なども、快適さと日常の利便性を保つために不可欠な作業です。
住みやすさを長期的に確保するためにも、大規模修繕は必要です。

マンション大規模修繕工事の目的 |トラブル・クレームの予防

劣化した外壁の落下や、屋上防水の劣化による雨漏りなど、放置された不具合が原因で事故や住民トラブルにつながるケースもあります。
こうした問題を未然に防ぐためにも、大規模修繕による点検と修繕は極めて重要です。
住民間の信頼関係やマンションの管理品質を守るためにも、計画的な修繕は欠かせません。

マンション大規模修繕工事の目的|法的・制度的な対応

マンションの管理や修繕には「マンション管理適正化法」や「長期修繕計画ガイドライン」など、法制度上のルールが関わっています。
とくに分譲マンションでは、管理組合の責任で適切な維持管理を行うことが求められており、定期的な大規模修繕は法的責任を果たすうえでも必要なプロセスです。

参考:国土交通省 マンション管理適正化法

参考:国土交通省 長期修繕計画ガイドライン

マンション大規模修繕の主な対象箇所は共用部分

マンションの大規模修繕工事は、主にマンションの共用部分を対象として実施されます。
具体的な修繕箇所は多岐にわたりますが、多くのマンションで行われる大規模修繕箇所は以下の部分です。

  • 外壁
  • 屋上
  • バルコニー
  • 共用廊下や階段
  • エントランス
  • 給排水管
  • エレベーター
  • 機械式駐車場
  • その他鉄部(手すり・扉・メーターボックスなど)

これらの共用部分は、居住者が日々利用するだけでなく、建物の安全や機能維持のために重要な役割を果たしています。

マンションの大規模修繕で行われる工事内容一覧

マンションの大規模修繕工事では、建物の共用部分を中心に、複数の専門的な工事が計画的に実施されます。
主な工事項目には、足場を設置する「仮設工事」をはじめ、ひび割れや劣化を修復する「下地補修工事」、外壁タイルの浮きや剥がれを直す「タイル補修工事」、建物の隙間を保護する「シーリング工事」、美観と耐久性を高める「塗装工事」、雨水の浸入を防ぐ「防水工事」などがあります。
また、1回目の大規模修繕を終えた後の築20~30年を迎えるマンションでは「給排水管の更新」や「EV充電設備の導入」「機械式駐車場のメンテナンス」など、時代や設備の老朽化に応じた工事も行われます。
さらに美観や利便性を高める「バリューアップ工事」も検討されるようになっており、修繕にとどまらない幅広い内容が含まれるのが特徴です。

  • 仮設工事
  • 下地補修工事
  • タイル補修工事
  • シーリング工事
  • 塗装工事 (外壁・鉄部)
  • 防水工事 (屋上・バルコニー・廊下・階段など)
  • 1回目大規模修繕の後に行われる工事 (給排水管・EV充電設備・機械式駐車場など)
  • バリューアップ工事 (改良・美観改善など)

これらの工事は、建物の劣化状況や長期修繕計画に基づき、必要なものが選定されます。
詳しい内容は以下のとおりです。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:仮設工事

仮設工事は、大規模修繕における最初のステップであり、すべての作業の土台となる重要な工程です。
主に足場の設置や養生シートの張り付け、現場の安全管理に関する施設の整備などが含まれます。
特に足場の設置は、外壁の塗装や補修、防水などを高所で安全に行うために不可欠です。
足場にはクサビ式や枠組み足場などの種類があり、工事の規模や建物の形状に応じて使い分けられます。
また、養生シートは塗料やホコリが周囲に飛散するのを防ぐためのもので、住民や近隣への配慮としても重要な役割を果たします。
仮設工事は住民の生活導線にも影響するため、作業時の騒音や視界の遮断といったストレスを最小限に抑える工夫が求められます。
安全性と効率性を確保するために、仮設工事は入念な計画と専門知識が必要です。

また仮設工事は大きく「直接仮設工事」と「共通仮設工事」に分けられます。

直接仮設工事

主に高所作業などに必要となる足場を設置する工事で、大規模修繕における仮設工事はこの足場工事を指すケースも多くあります。
足場以外にも、塗料や破片などの飛散を防ぐための仮設シート、落下防止のための水平ネット、工事中の汚れや破損を防ぐための養生などもこれにあたります。
また安全や防犯のために、柵や防犯カメラ・サーチライトなどが設置されることもあります。
さらに、マンションの高さによって足場の設置ができない場合は、無足場工法が採用されることが一般的です。

共通仮設工事

足場関連のものを除く、工事全体に関わる仮設工事で、具体的には現場事務所・作業員詰所・資材置場・廃材置場・仮設トイレなどの仮設設備の設置が含まれます。
これらの設備に必要な電気や水道・インターネット環境・事務所内の機器(電話・コピー機・パソコンなど)を備える工事も共通仮設に含まれます。
また、カラーコーンやガードマンなどの安全対策関連をはじめ、掲示板や官公庁への申請費など、内容は多岐にわたります。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:下地補修工事

下地補修工事は、塗装や防水工事の下地ともなる壁や天井などのコンクリート・モルタルの、ひび割れ(クラック)や浮き、欠損などの劣化部分を補修する工事です。
この工程は、その後の塗装や防水工事の出来栄え、さらには建物の寿命を左右するほど重要な部分です。

具体的な工事内容は、コンクリートのひび割れ・はがれ・欠損・コンクリート内部の鉄筋の錆など、劣化部を取り除いたり充填したりして補修することです。
まずは建物の壁や天井などを目視や打診などで状態を確認し、建物の構造なども踏まえて最適な工法が決定されます。
代表的な劣化症状とその補修方法は、以下の通りです。

クラック(ひび割れ)

気温変化や地震などで発生し、放置すると雨水が内部に浸入してコンクリート内部の劣化や鉄筋の錆び・膨張による爆裂など、建物寿命に関わる深刻な問題につながります。
また、白華現象(エフロレッセンス)による美観低下も招きます。
クラックの規模によって、さまざまな方法で補修が行われます。

モルタルの浮き

モルタル(セメント・水・砂の混合物で、コンクリートの凹凸調整や塗装・タイルの下地に使用)が、雨水の浸入や地震などで下地から浮いている状態です。
目視では判別が難しく、打診で音や反応の違いから判別され、放置するとタイルなど表層部と一緒に剥がれ落ちる恐れがあります。

鉄筋爆裂・コンクリート欠損

クラックなどから雨水が浸入し、コンクリート内部の鉄筋が錆びて膨張することで、コンクリートが欠けたり、鉄筋が露出したりする症状です。
鉄筋の錆びが軽い場合は削り取って錆止めを行いますが、重い場合は鉄筋の交換が必要です。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:タイル補修工事

タイル補修工事は、経年劣化や地震などにより下地から浮いたりひび割れたり、また欠損したりしているタイルを補修する工事です。

タイルと下地の接着力が弱まると「浮き」が発生し、雨水が浸入しやすくなり劣化が進行します。
浮きを放置するとタイルが剥がれ落ち、最悪の場合、落下したタイルにより物損や人身事故が発生し、管理組合が責任を負うことになる恐れがあります。
また、タイル自体のひび割れや欠損からも雨水が浸入し、コンクリート内部の劣化や鉄筋の錆び、爆裂など、建物寿命にかかわる深刻な問題に繋がる恐れもあります。

工事はまず、目視や打診でタイルの状態を確認することから始まり、その後下地補修・タイル補修・目地補修が行われます。
主なタイル補修の方法は、以下の二つです。

浮き補修

専用ドリルで目地やタイルに穴を開け、浮きによってできた下地との空間にエポキシ樹脂などの接着剤を注入する工法です。
工事期間が短く、下地がモルタルごと浮いているケースに適しています。

張り替え補修

タイルを剥がして、新しいタイルに張り替える工法です。
主にタイルのひび割れや欠損に対して行われます。
既存品を使用しない場合は、施工前にサンプルを作成し、色・柄・質感などを現状のタイルとよく比較検討することが重要です。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:シーリング工事

シーリング工事は、外壁と外壁の間や、外壁と窓枠(アルミサッシ)の間など、建材同士の隙間にゴム状のシーリング材(コーキング材とも呼ばれます)を充填する工事です。

シーリング材は隙間を埋めるだけでなく、接着や硬いもの同士がぶつかって傷つかないようにする緩衝といった役割も果たします。
そのため、接合部分の材質に合った種類を選ぶことが重要です。

シーリング材は経年劣化により硬くなったり、ひび割れが発生したりします。
一般的に劣化が始まるのは施工から5〜10年後と言われ、シーリング材の劣化により隙間ができると、防水性が失われ雨水やホコリが建物内部に浸入しやすくなります。
これは雨漏りの原因となるだけでなく、建物自体の劣化を進行させてしまいます。
また気密性や伸縮性が失われると、地震や台風などの自然災害の影響をより強く受け、建物全体の劣化に繋がる恐れもあります。

シーリング工事には「打ち増し工事」と「打ち替え工事」があり、施工場所や状態によって最適のものが選択されます。

打ち増し工事

既存のシーリング材の上から、新しいシーリング材を塗り重ねる工法です。
コストを抑えられますが、効果は数年程度の延命措置にしかならない場合があることに注意が必要です。

打ち替え工事

既存の劣化したシーリング材を全て取り除き、新しいシーリング材を充填する工法です。
打ち増しよりもコストは高くなりますが、防水性や気密性・伸縮性に優れ、長期的な効果が期待できます。

シーリング工事を行うには、外壁と同様に足場が必要なため、大規模修繕工事の際に他の工事とまとめて一緒に施工する方が経済的です。
シーリング材の打ち替えは、防水性・気密性を高め、雨水の浸入を防ぐうえで非常に重要な工事です。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:塗装工事

塗装工事は、マンションを雨風や紫外線・汚れなどから守るための塗装膜を施す工事です。
建物の美観を保つだけでなく、コンクリートや鉄を保護し、劣化を防ぐという大切な役割があります。
塗装工事は大きく「鉄部塗装」と「外壁塗装」に分けられます。

鉄部塗装

屋上の配管・鉄骨階段・玄関扉・メーターボックス・共有廊下の手すり・機械式駐車場など、マンションの共用部分にある鉄製品の錆を落とし、塗装する工事です。
鉄製品は塗膜で保護されていますが、経年劣化や衝撃で塗膜が薄くなると錆びが発生し、美観や強度に悪影響が出ます。
錆が進行しすぎると塗装での補修が困難になり、取り替えが必要になることもあるため、錆を放置せず適宜塗装を行うことが重要です。

外壁塗装

外壁はもちろん、屋上・共有廊下・階段・ベランダ・バルコニーなどの壁面・天井面を塗装する工事です。
塗装前には既存の塗膜や汚れを落とし、下地との付着力を確認します。
付着力が弱い場合は既存塗膜を剥がしますが、基本的には下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りを行います。
塗料にはシリコン・ウレタン・フッ素などさまざまな種類があり、目的や塗装面の状況に応じて最適なものが選択されます。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:防水工事

防水工事は、風雨にさらされる部分を中心に防水処理を行うことで、雨水の浸入から建物を守るための重要な工事です。
雨水は建物の劣化を進行させる最大の要因の一つであり、防水機能が低下すると、雨漏りだけでなく、コンクリート内部の鉄筋の錆びや腐食を招き、建物の構造的な寿命にまで大きな影響を及ぼします。

代表的な防水処理が施される部分は、屋上・共有廊下・階段・バルコニーなどです.

屋上防水

屋上は紫外線や雨風に強くさらされる最も過酷な環境下にあるため、劣化が非常に進みやすい箇所です。
劣化が進み、ひび割れや防水層の破断・浮きなどが発生すると、各戸への雨漏りにつながり、居住者の生活に大きな影響を与えます。
また、大量の水がコンクリートや鉄筋に入り込むと、建物単位での劣化も進行し、金銭的な被害も大きくなってしまいます。

屋上防水の工法には、主に「かぶせ工法」と「撤去工法」があります。

工法名概要メリットデメリット
かぶせ工法劣化した部分のみを剥がし補修し、既存の防水層の上に新しい防水層を重ねる工法。コストと工期を抑えやすい既存防水層との相性を考慮する必要がある
撤去工法既存の防水層をすべて撤去し、下地処理後に新しい防水層を施工する工法。防水層の種類を自由に選べるコストと工期がかぶせ工法よりも高くなる傾向がある

また素材・方式には、以下のようなものがあります。

素材・方式特徴メリットデメリット主な用途例
ウレタン防水液状の防水材を塗布し、硬化させて防水層を形成。
複雑な形状にも対応可能。
複雑な形状や狭い場所に適応可能継ぎ目がない紫外線に弱く劣化しやすく、定期的なトップコートの塗布が必要屋上・バルコニー・廊下など
塩ビシート防水塩化ビニル製の防水シートを接着・固定して防水層を形成。耐久性が高く、仕上がりが美しい下地の凹凸に影響されやすく、複雑な形状に不向き屋上・陸屋根など
アスファルト防水アスファルトを含浸したルーフィングを複数層重ねて貼り合わせる。歴史が長く信頼性が高い工期が長く、においや煙が出ることがある大型施設の屋上・地下室など
FRP防水ガラス繊維強化プラスチックで防水層を形成。
硬化後は非常に硬く強い。
耐久性・耐摩耗性が高い硬化時ににおいが強く、ひび割れのリスクもある屋上・ベランダ・階段など

防水工事は、雨水の浸入を防ぎ、建物の耐久性を維持しながら居住者の快適な生活を守るために非常に重要な工事です。
国土交通省の実態調査によると、大規模修繕工事の費用内訳で外壁塗装と並んで多い項目です。

マンション大規模修繕で行われる工事内容:バリューアップ工事

大規模修繕工事は、劣化した箇所を元の状態に戻す「修繕工事」が中心ですが、これに加えて、マンションの性能や機能を向上させ、居住性や資産価値の向上を目指す「バリューアップ工事」も選択肢として検討されます。

バリューアップ工事は、単なる劣化回復に留まらず、現在の社会環境や居住者のライフスタイルに合わせてマンションを進化させることを目的とします。
実施には費用が多くかかりますが、 快適な住環境の実現やマンションの競争力強化に繋がることが期待できます。

代表的なバリューアップ工事としては、以下のようなものが挙げられます。

  • エントランスの美観改善や自動ドア化
  • 宅配ボックスの設置
  • LED照明化
  • バリアフリー化
  • 防犯カメラ設置
  • 外壁のデザイン・カラーチェンジ
  • 玄関扉やサッシの交換(断熱性や防音性の向上)

建物の状況や工事内容によっては、補助金や助成金を受給できるケースもあります。
費用はかかりますが、長期的な視点で見れば、マンションの将来的な競争力や居住者の満足度を高める有効な手段と言えるでしょう。

築年数で異なる大規模修繕の内容|1回目・2回目・3回目の違い

マンションの修繕内容は築年数によって大きく異なります。築年が浅い段階では外装や防水が中心ですが、年数が経過するにつれて設備や構造そのものへの対応が求められるようになります。

1回目(築12〜15年):基本的な外装・防水メイン

初回の大規模修繕では、外壁塗装や屋上・バルコニーの防水工事、シーリング材の打ち替えなど、外装全般のメンテナンスが中心となります。建物の美観と防水性能を維持するための工事が優先される時期です。

2回目(築20〜25年):配管や設備工事が加わる

築20年を超えると、給排水管の劣化が進み始め、漏水リスクへの対応が求められます。加えて、エレベーターや機械式駐車場などの設備機器も更新対象に含まれやすくなります。見えない部分の劣化に備えた対応が重要です。

3回目以降(築30年超):構造補強や大規模改修も視野に

築30年を超えると、コンクリートの中性化や鉄筋の腐食など、構造部分の劣化が深刻化する可能性があります。耐震補強や玄関扉・サッシの交換、間取りの変更を伴うリノベーションなど、抜本的な改修を検討するマンションも増えます。

マンションの規模・構造で変わる工事内容と優先順位

マンションの規模や構造も、大規模修繕工事の内容や進め方に大きく影響します。小規模・大規模・高層など、それぞれに応じた課題や配慮点を理解しておくことが重要です。

小規模マンションと大規模マンションの違い

小規模マンションでは、管理費・修繕積立金の負担を少人数で賄うため、工事項目の取捨選択が必要となる場面が多くあります。一方で大規模マンションでは、修繕対象箇所が多く専門的な判断が必要となるため、第三者コンサルタントの活用が推奨されます。

タワーマンションで重視される項目とは?

タワーマンションでは、外壁や防水といった一般的な工事に加えて、高層建築特有の課題として「外壁タイルの落下リスク」「非常用設備のメンテナンス」「風圧・温度差への対応」などが挙げられます。足場工事も高額化するため、計画的な実施が必要です。

予算と工事項目の優先順位の決め方

限られた予算の中で最大の効果を得るためには、建物診断結果に基づいて劣化の進行度合いを正確に把握し、「緊急性」「安全性」「将来のコスト削減効果」などを基準に優先順位を決定することが大切です。

修繕委員会から着工までの内容|住民が知っておくべき大規模修繕の全体像

大規模修繕は管理組合や専門家だけでなく、住民自身の参画も不可欠です。とくに工事計画の立案から着工に至るまでの流れにおいて、住民が果たすべき役割は多岐にわたります。ここでは、住民が主体的に関わるべき準備と行動を段階ごとに紹介します。

修繕体制の整備と修繕委員会の立ち上げ

大規模修繕を円滑に進めるため、まずは管理組合内に修繕委員会を設置します。住民の代表として現場の声を拾い上げ、専門家や施工会社との橋渡しを担う存在です。委員の公募を行い、多様な意見が反映される体制を整えることが重要です。

建物の現状把握と専門家による劣化診断

修繕対象となる建物や設備の現状を正確に把握するため、専門業者による劣化診断が実施されます。点検時には、住民の協力(部屋の立ち入り・立ち会いなど)も求められる場合があります。正確な診断結果を得るためにも、積極的な協力が必要です。

修繕計画と予算案の策定

診断結果をもとに、必要な工事の範囲や優先順位、予算配分を検討します。長期修繕計画との整合性、住民の費用負担、自治体の補助金制度の活用可否なども加味しながら進めていきます。住民説明会やアンケートを通じた意見集約がカギになります。

信頼できる施工会社の選定

複数の施工会社から見積もりを取り、実績・信頼性・コストなどを比較して選定します。選定過程の透明性を確保し、住民の信頼を得ることがポイントです。外部の専門家(建築士やコンサルタント)を活用するケースも増えています。

管理組合総会での承認手続き

検討された工事計画・予算案・施工会社の選定結果について、管理組合の総会で正式な議決が行われます。区分所有者の3/4以上の賛成が必要なケースもあり、ここが事実上の最終判断の場となります。

工事内容と生活影響の事前説明

工事内容や日程、注意事項などについて、施工会社や管理組合から住民向けに説明会が開催されます。質疑応答を通じて疑問や不安を解消し、住民との協力体制を築く重要な場です。

契約締結と着工への移行

総会決議を経て正式に契約を締結し、いよいよ工事が始まります。住民は工事中のルール(バルコニーの使用制限、騒音対策など)を遵守し、トラブルのない進行に協力することが求められます。

このように、住民側の行動もまた、大規模修繕の成否を左右する大きな要素となります。初期の段階から積極的に関与し、共有財産であるマンションの価値を共に守っていきましょう。

マンション大規模修繕の周期と実施時期の目安

マンション大規模修繕工事の時期や回数に明確な法律上の決まりはありませんが、一般的な目安としては12年〜15年程度の間隔で実施される場合がほとんどです。
この目安は、国土交通省が発表している「長期修繕計画作成ガイドライン」で示されていることや、建材の保証期間が10年程度に設定されているケースが多いことなどが要因となっています。

また、2008年の建築基準法施行規則の改正により、特定行政庁が指定するマンションは、竣工または外壁改修から10年経過後に外壁の全面打診調査(打診用ハンマーで叩いて浮きなどを調べる調査)を実施・報告することが義務付けられました。
3年以内に調査を行うことが確実な場合は、13年以内の実施義務となります。
この外壁打診調査は、足場を設置して行うため、費用や時間のかかる工事です。
この調査時期に合わせて大規模修繕工事を実施する方が、費用や作業面で効率的であるため、築後または前回の大規模修繕後10年〜13年で大規模修繕を実施するケースが多くなってきました。

ただしこれはあくまで目安であり、建物の立地や形状・使用状況によって劣化の進行状況は異なります。
目立った劣化がないからといって先延ばしすると、かえって劣化が深刻化し、修繕費用が高額になる可能性もあります。
したがって、適切な時期に実施するためには、定期的な建物の点検や調査で劣化状況を正確に把握し、総合的に判断することが重要です。
前回の修繕から10年を超えたあたりから、大規模修繕の実施について検討を始めるマンションが増加する傾向があります。

マンション大規模修繕工事にかかる費用と相場

大規模修繕工事の費用は、通常「長期修繕計画」に基づいて積み立てられる「修繕積立金」から支出されます。
区分所有者は毎月一定額を積み立て、将来の高額な修繕に備えています。
また新築時には「修繕積立一時金」を徴収することで、初期費用をカバーし月々の負担を抑えるケースもあります。
修繕積立金の目安は国土交通省のガイドラインで示されており、マンションの規模や構造により異なります。
特に高層マンションや機械式駐車場を備えた建物では、高額になる傾向があります。

マンション大規模修繕工事にかかる費用と相場(概要表)

項目内容
総費用の目安数千万円~数億円(マンションの規模・劣化状況・材料などで大きく変動)
戸あたり費用の相場約100万円/戸(または130万~150万円/戸という見方も)
費用に影響する主な要素建物の規模・形状、劣化の程度、工事範囲、使用材料、工法など

国土交通省調査による主な費用内訳

工事項目内容例備考
外壁関係塗装、タイルの補修など費用の中で大きな割合を占める
防水関係屋上やバルコニーの防水工事雨漏り対策などに不可欠
仮設工事足場設置、養生など全体工事の前提として必要

予算が不足する場合は、専門家に診断を依頼し、緊急性の高い箇所から優先して工事を進めることが重要です。
資金が足りない場合は、一時金の徴収や金融機関からの借入、自治体の助成金を活用する選択肢もあります。

大規模修繕工事の全体の流れと期間

マンションの大規模修繕工事は、準備期間と工事期間に分けられ、全体で2年〜3年程度を要する大きなプロジェクトです。
適切な準備と計画的な進行が成功の鍵となります。

大規模修繕工事の内容|準備期間(計画から着工まで)

一般的に、着工までの準備期間は1年~2年程度かかります。
ただし、マンション内で工事の目的や内容について共通理解がある場合は、この目安より早まることもあります。

  1. STEP

    体制づくり

    まず管理組合内で、大規模修繕工事を実施するための体制づくりが必要です。
    理事会が主導することも多いですが、大規模修繕委員会などの専門委員会を立ち上げるケースが増えています。
    修繕委員会は計画段階から工事完了まで継続的に関わるため、理事の負担軽減や継続的な対応が可能になるメリットがあります。

  2. STEP

    建物調査・診断

    建物の現状(劣化状況や不具合箇所)を正確に把握するための調査・診断を実施します。
    目視や打診だけでなく、居住者へのアンケート・赤外線サーモグラフィー・ドローン、・竣工図などの書類調査など、さまざまな方法があります。
    建物調査は、工事内容や予算を検討するうえで非常に重要です。

  3. STEP

    工事内容・予算案の検討

    建物調査の結果に基づき、早急な対応が必要な箇所とそうでない箇所を洗い出し、優先順位をつけて工事内容や予算案を検討します。
    専門的な判断が必要なため、建物調査の段階から専門家(建築士やコンサルタントなど)に相談することが推奨されます。

  4. STEP

    施工会社の選定

    複数の工事会社から見積もりを取得し、内容や実績・費用などを比較検討して、信頼できる施工会社を選定します。

  5. STEP

    居住者向け説明会・広報

    区分所有者全員の理解と協力が不可欠なため、工事の目的や内容・スケジュール・費用などについて、説明会や丁寧な広報活動を通じて情報を共有し、意見を聴取することが大切です。

  6. STEP

    総会決議

    検討した工事内容・予算・施工会社などについて、管理組合総会(または臨時総会)で決議を行います。
    工事内容によっては、区分所有法に基づく特別な決議(3/4以上の賛成など)が必要となる場合があります。

  7. STEP

    工事契約

    総会で承認された内容で、選定した工事会社と正式な契約を締結します。

大規模修繕工事の内容|全体の流れと工事期間(着工から完了まで)

着工から工事完了までは、数ヶ月~1年程度が目安となります。
建物の規模によって期間は異なり、50戸以下の小規模マンションでは3〜4ヶ月程度、50~100戸の中規模マンションでは4~6ヶ月程度、100戸を超える大規模マンションでは半年から1年程度が目安です。

  1. STEP

    足場・養生の設置

    工事中は建物周囲に足場が設置され、作業員や車両の出入りが増えます。
    洗濯物干しや窓開け、バルコニーの使用などに制限がかかることもあるため、工事に関わる専門家や施工会社と密にコミュニケーションを取り、居住者の日常生活への影響を最小限に抑える工夫が必要です。

  2. STEP

    工事の進捗確認

    工事期間中は、工事の遅れや計画との違いがないか、問題が発生していないかなどを確認しながら進められます。
    専門家や管理会社に委託している場合は、これらの工事監理も重要なポイントです。

  3. STEP

    完了検査・引き渡し

    工事完了後、工事の漏れや計画との相違がないか最終確認(完了検査)を行い,、問題がなければ引き渡しとなります。

  4. STEP

    アフター点検

    一般的に、工事完了後6ヶ月や1年といった一定期間が経過した後に、アフター点検が行われます。
    工事後に不具合が発生した場合、アフターサービスの内容に従って再修繕が行われます。

マンション大規模修繕工事に関するよくある質問

Q

大規模修繕工事はいつ、どのくらいの頻度で行うべきですか?

A

一般的に、マンションの大規模修繕工事は12〜15年ごとに1回のペースで実施されるのが理想です。
ただし、建物の構造や使用状況、過去の修繕履歴などによって最適なタイミングは異なるため、長期修繕計画に基づいて判断することが重要です。

Q

修繕工事中は通常の生活に支障がありますか?

A

一部の期間では騒音や工事関係者の出入り、バルコニー使用の制限などが発生するため、多少の生活への影響は避けられません。
ただし事前に住民説明会が開かれ、工程表や注意点が共有されるのが一般的です。
管理組合や施工会社と連携しながら、可能な限り負担の少ない対応が取られます。

Q

大規模修繕工事にはどれくらいの費用がかかりますか?

A

一戸あたりで100万円前後、全体で数千万円から数億円規模の費用がかかるケースが多いです。
工事の範囲やマンションの規模によって変動するため、見積もりと積立金のバランスが重要です。
費用負担を抑えるために、適正価格で信頼できる施工業者の選定も欠かせません。

Q

修繕積立金が足りない場合はどうすればいいですか?

A

修繕積立金が不足している場合、追加で一時金を徴収するか、借入を行う必要が生じます。
ただし、住民の合意が必要なため、トラブルの原因にもなりかねません。
そのためにも、早期からの計画的な積立と、定期的な見直しが重要です。

Q

大規模修繕の工事内容は住民が決められるのですか?

A

基本的な工事内容や範囲は管理組合と専門コンサルタント、施工会社の提案に基づき検討されますが、最終的な工事の決定には総会での住民の合意が必要です。
説明会や意見募集の場を通じて、住民が納得できる内容になるよう進められるのが一般的です。

マンションの大規模修繕工事の内容まとめ

マンションの大規模修繕工事は、約10年から15年という周期で必ず訪れる、マンションを維持していくうえで不可欠な工事です。
一度の工事に多額の費用と長い期間を要する大きなプロジェクトですが、その目的は、建物の経年劣化に対応し、居住者の安全で快適な生活を守り、建物の寿命を延ばしながら大切な資産であるマンションの資産価値を維持・向上させることです。

適切な時期に適切な内容で大規模修繕を実施することは、単なる出費ではなく、マンションの未来を守るための重要な投資と言えます。
劣化した箇所を放置すると、小さな問題がより深刻なダメージに繋がり、結果的に大規模な修繕や多額の費用が必要になることもあります。

大規模修繕を成功させるためには、管理組合が主体的に関わること、居住者全体の理解と協力を得ること、事前の建物診断で劣化状況を正確に把握すること、そして長期修繕計画に基づいた計画的な資金準備が非常に重要です。
また、信頼できる専門家や施工会社を選定し、彼らの知識や経験を上手に活用することも成功の鍵となります。

大規模修繕工事は、居住者一人ひとりの快適な暮らしと、マンションという共有資産の価値を守るために不可欠な取り組みです。
大切な資産を守るためにも、大規模修繕に関心を持ち、管理組合の活動に積極的に参加することをおすすめします。

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