防水工事の流れとは？アスファルト防水・ウレタン防水の施工手順や種類ごとのやり方・費用も解説

建物の寿命を延ばし、雨漏りや劣化を防ぐために、防水工事は重要な役割を担っています。
しかし、防水工事にはどのような種類があり、どのような流れで行われるのかをご存じない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、防水工事の必要性から、代表的な工法であるウレタン防水・アスファルト防水の種類と手順・費用相場・施工の流れまでをわかりやすく解説します。
これから建物の防水工事を検討されている方は、この記事をぜひ参考としてお役立てください。

防水工事とは？なぜ必要？

防水工事とは、建物の屋上やベランダ・バルコニー・外壁などの表面に防水層を設け、雨水の浸入を防ぐために行う工事です。

日本は梅雨や台風の季節に集中豪雨が多く発生するため、建物にとって防水性能は非常に重要な要素です。
また、気温差が大きい地域でも、防水層の劣化が進みやすく、夏の高温と冬の寒暖差によって防水材がひび割れたり、剥がれたりすることがあります。
これにより、雨水が浸入しやすくなり、建物の内部に水分が蓄積され、建材に対する悪影響を与えることになります。

また定期的に点検を行い、防水層の劣化状況を確認することも求められます。
ひび割れや剥がれが発生している場合は、早急に補修を行うことで、さらに大きな問題を未然に防ぐことができます。
特に、屋上やベランダ・バルコニーは常に外気へさらされているため、防水層の劣化が早く進行しやすい場所でもあります。
定期的なメンテナンスを行うことで、建物の耐久性が保たれ、長期的には修繕費用を削減することが可能です。

また、適切なタイミングでの防水工事は、住居としての快適性を守るうえでも重要です。
雨漏りや湿気が溜まることで、室内の環境が悪化し、カビが発生したり、アレルギーを引き起こしたりすることがあります。
これらの問題を避けるためにも、劣化が進む前に防水工事を実施することが大切です。
防水工事は、建物の価値を守り、居住空間を快適に保つために欠かせない投資と言えるでしょう。

防水工事を行わないことによるリスクとは？

防水工事を怠ることは、建物に深刻なダメージをもたらすリスクを伴います。
最も代表的なのは、雨水の浸入による構造部分の腐食や劣化です。
鉄筋コンクリート造であれば鉄筋が錆び、木造であれば柱や梁が腐り、建物全体の強度が著しく低下します。
また、壁や天井にカビやシミが発生することで、室内の空気環境が悪化し、健康被害につながるおそれもあります。
さらに、漏水が進行すると電気設備や内装にまで被害が及び、修繕費用が高額になるケースも少なくありません。
初期の段階では簡単な補修で済んだはずの問題も、放置すればするほど手間とコストがかさむのです。
こうしたリスクを未然に防ぐためにも、防水工事は定期的に行うべき重要なメンテナンスであることを認識しておく必要があります。

防水工事の種類とやり方

防水工事にはさまざまな種類があり、施工場所や目的によって適した工法が異なります。
代表的なウレタン防水やアスファルト防水を中心に、それぞれの特徴や施工方法について詳しく紹介します。
どの工法を選ぶべきかを判断するための参考にしてください。

防水工事の種類 | ウレタン防水

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
塗膜がシームレスで柔軟性があり、複雑な形状の場所にも対応できるため、一般住宅のバルコニーやマンションの屋上など幅広く採用されています。

ウレタン防水における密着工法とは？

密着工法は、下地に直接ウレタンを塗布して防水層を形成する方法です。
既存の下地が健全な場合に適しており、工期が短くコストも比較的安価です。
ただし、下地の状態が悪いと密着不良による膨れなどの不具合が生じやすいため注意が必要です。

ウレタン防水における通気緩衝工法とは？

通気緩衝工法は、下地と防水層の間に通気層（通気緩衝シート）を設け、内部の水蒸気を排出できるようにする工法です。
下地に含まれる湿気の影響を受けにくく、膨れなどのリスクを軽減できます。
下地に含水が多い場合や、長期耐久性を重視する場合に有効です。

ウレタン防水におけるメッシュ工法とは？

メッシュ工法は、防水層にガラス繊維などの補強メッシュを挟み込むことで、ひび割れや衝撃への耐性を高める工法です。
施工後の耐久性が向上し、高所や多くの人が出入りする場所に適しています。
密着工法・通気緩衝工法のどちらにも、強度を高めるために使われる工法です。

ウレタン防水のメリット・デメリットは？

ウレタン防水は、液状の防水材を塗布して仕上げる工法で、複雑な形状の屋上やベランダにも対応しやすいのが特長です。
継ぎ目のない美しい仕上がりになり、重ね塗りが可能なためメンテナンスも比較的簡単です。
また、軽量で建物への負担も少なく、コストも比較的抑えられる点がメリットです。
一方、施工の技術によって仕上がりに差が出やすく、職人の腕が品質に直結します。
また、乾燥・硬化に時間がかかるため、天候に左右されやすいというデメリットもあります。
工期や耐久性を考慮して、適切な工法を選ぶことが重要です。

防水工事の種類 | アスファルト防水

アスファルト防水は、アスファルトを含浸させたルーフィングシートを重ねて貼り付ける工法です。
歴史が長く、高い防水性能と耐久性を持つため、大規模施設やビルの屋上に多く採用されています。

アスファルト防水における熱工法とは？

熱工法は、アスファルトを加熱して液状にし、シートを貼り重ねながら施工する方法です。
耐久性が高く、施工後の密着性も良好ですが、施工時に煙やにおいが出るため、近隣環境への配慮が必要です。

アスファルト防水における常温工法とは？

常温工法は、加熱せずに粘着性のある改質アスファルトシートを使用する工法です。
火気を使わず安全で、施工時のにおいや煙が少ないため、病院や学校などでも安心して使用できます。
熱工法と比較すると、耐久性はやや劣ります。

アスファルト防水のメリット・デメリットは？

アスファルト防水は、防水性と耐久性に優れた伝統的な工法で、公共施設や大型建築物にも多く採用されています。
複数のシートを重ねて貼り合わせるため、防水層に厚みがあり、高い耐久性を実現できます。20年以上の耐用年数を誇るケースもあり、長期的な視点では非常にコストパフォーマンスに優れています。
一方で、施工時にバーナーで加熱する「熱工法」では火災リスクがあり、煙や独特のにおいが発生するため、周辺環境に配慮が必要です。
また、他の工法に比べて工期が長く、コストも高めになる傾向があります。

その他の防水工事

その他の代表的な防水工事には、以下のようなものがあります。

• FRP防水：ガラス繊維で強化したプラスチック（FRP）を使用する工法。高耐久・高強度で、戸建て住宅のベランダに多く使われます。
  
• シート防水：塩ビやゴムなどの防水シートを貼り付ける工法。均一な品質と比較的早い施工が特徴です。
  
• 浸透性防水：外壁などに防水材を塗布して、素材内部に浸透させることで防水効果を持たせる方法。美観を損なわずに施工できるのがメリットです。
  

防水工事の費用相場

防水工事を検討する際、もっとも気になるポイントのひとつが費用ではないでしょうか。
工法や建物の状態によって金額は大きく変動します。
防水工事の種類ごとの費用相場や、見積もり時に注意すべき点について以下に解説します。

またこの他に、足場代や下地補修費・トップコートの費用などが別途かかるため、総額での見積もり確認が大切です。

防水工事の流れ

防水工事は、調査から施工・仕上げ・引き渡しまで、複数の工程を経て行われます。
工程ごとの流れを理解することで、スムーズな工事進行やトラブル回避につながります。
一般的な防水工事のステップを時系列で紹介し、それぞれの作業内容や目的を詳しく解説します。

1. STEP

   防水工事の流れ1.現地調査・診断

   防水工事の第一ステップは現地調査と診断です。
   専門の施工業者が建物を訪れ、屋上やベランダなどの施工対象部分の状態を細かく確認します。
   劣化した箇所や既存の防水層の種類、ひび割れや雨漏りの有無、勾配や排水口の位置など、さまざまな項目をチェックして、建物の現状を正確に把握します。
   これにより、適切な防水工法の選定が可能になります。
   調査結果は報告書としてまとめられ、次の計画段階へと進みます。

2. STEP

   防水工事の流れ2.工事計画・見積もりの作成

   現地調査の結果をもとに、具体的な工事計画と見積もりが作成されます。
   使用する防水工法や材料、施工面積・工期・費用などが詳細に記載された見積書が提示され、必要に応じて説明や調整が行われます。
   ここでは、業者との十分な話し合いが重要です。
   工事内容や保証期間、施工スケジュールに関する理解を深めることで、後のトラブルを防げます。
   納得できれば正式に契約を交わし、いよいよ工事がスタートします。

3. STEP

   防水工事の流れ3.下地処理

   施工の前に行う下地処理は、防水性能を大きく左右する重要な工程です。
   まず、古くなった防水層やゴミ・ほこり・油分などを丁寧に除去します。
   次に、下地のひび割れや不陸（表面の凹凸）を補修して、平滑な施工面を作ります。
   特に雨水がたまりやすい部分や勾配の乱れには注意が必要です。
   下地の仕上がりが悪いと、防水材が正しく密着せず、施工後の浮きや剥がれにつながるため、細やかな作業が求められます。

4. STEP

   防水工事の流れ4.防水材の塗布・施工

   下地処理が完了すると、いよいよ防水材の施工に入ります。
   ウレタン防水の場合は、プライマーを塗布したうえで、液状の防水材を複数回に分けて塗布し、厚みを確保します。
   一方、アスファルト防水では、加熱したアスファルトをシートに挟んで積層するなど、工法によって作業内容は異なります。
   どの工法でも、均一な厚みと隙間のない仕上がりが求められ、高い技術力と丁寧な作業が不可欠です。

5. STEP

   防水工事の流れ5.乾燥・養生期間

   防水材の塗布後は、しっかりと硬化させるために乾燥・養生の時間が必要です。
   ウレタン防水などでは、最低でも24時間以上の乾燥期間を設けるのが一般的で、気温や湿度などの環境条件によってはさらに長くかかる場合もあります。
   この間、施工箇所への立ち入りや荷重は避ける必要があります。
   十分な養生が行われないと、施工不良の原因となるため、工程としては短くても非常に重要です。

6. STEP

   防水工事の流れ6.仕上げ作業・トップコート塗布

   防水層の施工が完了したら、保護と美観を目的とした仕上げ作業を行います。
   特にウレタン防水では、紫外線や熱、摩耗から防水層を守るためにトップコートを塗布します。
   トップコートの種類や色は選ぶことができ、外観の印象を整える役割もあります。
   また、定期的なトップコートの塗り替えを行えば、防水層そのものの寿命を延ばすことにもつながります。
   施工の最終仕上げとして、より丁寧に作業が行われます。

7. STEP

   防水工事の流れ7.完了検査・引き渡し

   すべての工程が終わったら、最後に完了検査を実施します。
   仕上がりのチェックや水張り試験などを行い、防水性能に問題がないかを確認します。
   万が一不具合が見つかれば、この段階で是正対応がなされます。
   検査が完了したら、施主へ工事の内容を説明し、施工写真や保証書の提出を行って引き渡しとなります。
   完了検査は、防水工事の品質と信頼性を担保するための大切なプロセスです。

防水工事のタイミングは？

一般的に、防水工事は10〜15年に一度が目安とされていますが、環境や施工品質によって前後します。
以下のような症状が見られたら、早めの診断・施工を検討しましょう。

雨漏りがある

雨漏りが発生している場合、防水層の劣化が進行している証拠です。
雨水が建物内部に浸入すると、壁や天井にシミができたり、壁紙が剥がれたりすることがあります。
これを放置すると、湿気が内部に残り、カビや菌の発生、さらには構造材の腐食を引き起こす可能性があります。
特に木造住宅では、木材が水分を吸収し、腐敗が進むことで建物の強度が低下することになります。
雨漏りが確認された場合、早急に専門業者に依頼して原因を特定し、適切な修理を行うことが重要です。
問題を放置せず、早期に防水工事を実施することで、建物のダメージを最小限に抑えることができます。

防水層の剥がれやひび割れが目立つ

防水層に剥がれやひび割れが見られる場合、その防水層が正常に機能していない可能性があります。
防水層は紫外線や気温差、風雨などにさらされることで劣化します。
ひび割れや剥がれが進行すると、そこから水分が浸透し、建物の内部に悪影響を及ぼします。
特に屋上やバルコニーなど、外部に直に触れている部分では劣化が早く進行します。
こうした劣化を見逃すと、雨水が建物内部に浸入し、雨漏りやカビの発生につながります。
剥がれやひび割れを発見したら、早期に修理を行い、防水層の再施工を検討することが推奨されます。

表面に膨れや浮きがある

防水層の表面に膨れや浮きが見られる場合、防水材が不完全に接着している証拠です。
膨れや浮きは、湿気や空気が防水層と下地の間に入り込んだ結果発生します。
特に屋根やベランダなどの水分が多い場所では、湿気が防水層の下にたまることがあります。
膨れが広がると、破裂や剥がれを引き起こし、さらに深刻な雨漏りや建物の劣化に繋がる可能性があります。
膨れや浮きを発見した場合は、速やかに点検と修理を行い、再施工が必要な場合は早期に対応することが大切です。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、定期的なメンテナンスと点検が欠かせません。

建物が築10年以上経過している

建物が築10年以上経過している場合、特に防水性能に関しては再確認が必要です。
時間の経過とともに、防水層は劣化しやすく、初期の防水工事が不十分だった場合には、早期に問題が発生する可能性があります。
10年を過ぎた建物では、屋上や外壁の防水層が経年劣化し、ひび割れや剥がれが生じることがあります。
このため、築年数が経過した建物では定期的な点検を行い、必要に応じて防水工事を行うことが求められます。
特に屋上やベランダなどの外部に直に接する部分は、定期的にメンテナンスを行うことで、防水機能を長期間にわたって維持できます。

防水工事が必要な箇所とは

建物には、防水工事が必要な場所が複数あります。
主な箇所は、以下のとおりです。

屋上・陸屋根

屋上や陸屋根は、建物の中でも特に雨水の影響を受けやすい部分です。
外部に直接さらされるため、紫外線や風雨、温度変化などの厳しい環境条件によって、防水層の劣化が進行しやすくなります。
特に陸屋根は勾配が少なく、排水が不十分な場合、雨水が長時間滞留することがあります。
これにより、防水層が早期に傷んでしまい、雨漏りの原因となることがあります。
屋上や陸屋根の防水工事は、定期的な点検とメンテナンスが重要で、適切なタイミングでの再施工が求められます。

ベランダ・バルコニー

ベランダやバルコニーも、防水工事が必要な場所の一つです。
特に、床の勾配や排水口の詰まりにより、雨水が溜まりやすくなります。
雨水が溜まると、長期間にわたって防水層に負担がかかり、ひび割れや剥がれを引き起こす原因となります。
また、足元が濡れることで居住空間の快適性にも影響が出ます。
これを防ぐためには、ベランダやバルコニーに適切な勾配を確保し、排水口の詰まりを防ぐために定期的な清掃を行うことが大切です。
防水層の劣化が見られる場合は、早期に補修を行い、長期的に防水性能を保つことが求められます。

外階段・廊下

外階段や廊下も防水工事が必要な箇所です。
日常的に人が歩くため摩耗しやすく、特に外部にさらされている部分では、風雨や紫外線などの影響で防水層が劣化しやすくなります。
防水層が劣化すると雨水が浸透しやすくなり、建物内部にダメージを与える原因となります。
また、摩耗によって防水層が剥がれたりひび割れが生じたりすると、修理が難しくなることもあります。
そのため、外階段や廊下の防水層は定期的に点検し、必要に応じて補修や再施工を行うことが重要です。

浴室・トイレ・キッチン

浴室・トイレ・キッチンなどの水回りは、室内でも特に湿気や漏水のリスクが高い場所です。
これらの場所では、水分が長時間接触するため、防水処理が必須です。
特に浴室には湿気がこもりやすく、カビや腐食が発生しやすい環境です。
また、トイレやキッチンでは配管の不具合や漏水が原因で、水が床下に浸透することがあります。
部分的な防水処理を施すことで、湿気や水漏れを防ぎ、建物全体の耐久性を保つことができます。
定期的な点検と、必要に応じた防水工事を行うことで、長期間快適な住環境を維持できるでしょう。

防水工事に関するよくある質問

まとめ

防水工事は、建物の寿命を延ばし、安全で快適な住環境を維持するために欠かせないメンテナンスのひとつです。
雨水や湿気の浸入を防ぐことで、構造材の劣化やカビの発生を抑え、長期的な修繕コストの削減にもつながります。
特に日本のように降雨量が多い地域では、屋上やベランダ・外壁などの防水対策を怠ると、思わぬ損害を招くことがあります。

ウレタン防水は柔軟性があり複雑な形状にも対応しやすい一方で、アスファルト防水は高い耐久性と実績を誇るなど、それぞれの工法にメリットと適材適所があります。
施工方法も密着工法や通気緩衝工法などさまざまで、建物の状態や使用目的に応じた適切な選択が求められます。

また、防水層の劣化は目に見えにくいため、定期的な点検と専門業者による診断が非常に重要です。
劣化を放置すれば大規模な改修が必要になるケースもあるため、症状が現れる前の予防的なメンテナンスが理想的です。

本記事を参考に、防水工事の基礎知識と流れを把握し、ご自身の建物に最適な工法の選定・施工時期をしっかりと見極めることが、安心で快適な暮らしへの第一歩となるでしょう。