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マンションの大規模修繕では水道管工事も必要?排水管・配管の種類も解説

マンションの維持管理において、大規模修繕は建物の寿命を延ばし、価値を維持・向上させるために不可欠な工事です。
大規模修繕と聞くと、多くの方が外壁の補修や屋上防水など、目に見える共用部分の工事をイメージされるかもしれません。
しかし、建物内部に張り巡らされた給水管や排水管といった配管もまた、建物の維持管理において極めて重要な要素です。
配管は普段目にすることがないため、その劣化に気づきにくく、メンテナンスの必要性を感じにくい部分ですが、時間の経過とともに着実に劣化が進行しています。
この見えない劣化を放置することは、マンション全体に大きな被害をもたらす可能性があり、建物全体の危機につながるため、配管の修繕は大規模修繕の検討範囲に必ず含めるべき重要な工事なのです。

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目次

マンションの維持管理における大規模修繕の目的

マンションの大規模修繕を行う目的は、いくつかあります。
まず、建物の共用部分に発生する経年劣化や損傷を修繕することです。
自然の温度変化や紫外線の影響、あるいは地震や台風といった自然災害によって建物は損傷します。
これらの劣化や損傷を修繕することで、建物の耐久性を維持・向上させ、居住者の安全を確保します。
また、建物の外部や内部の劣化は見た目を悪くし、建物の耐久性や機能性を低下させるため、大規模修繕による適切な修繕はマンションの資産価値を維持・向上させる意味も持ちます。
さらに、建物の修繕だけでなく機能改良を行うことで、居住者の住環境を向上させるという目的もあります。
これらの目的達成のため、マンションの維持管理において大規模修繕は不可欠な工事とされています。

なぜ配管修繕が重要なのか?

配管修繕が大規模修繕において重要視される理由は、その目に見えにくさと、劣化が引き起こす潜在的なリスクの高さにあります。
外壁や屋上など、目に見える部分は劣化が確認しやすく、修繕の必要性を認識しやすいものの、給水管や排水管は建物の内壁や床下、あるいはピットと呼ばれる空間などに張り巡らされており、日常生活ではその存在すら意識されにくい場所です。
しかし、目に見えないからといって劣化が進まないわけではありません。
長年の使用と経年劣化により、配管内部では錆や汚れの付着が進行しています。
この見えない劣化を放置すると、後述するような深刻なトラブルにつながり、建物の機能や安全性が損なわれるだけでなく、マンション全体の寿命を縮めることにもなりかねません。
そのため、他の共用部分の修繕と並行して、計画的に配管の劣化状況を診断し、必要な修繕を実施することが極めて重要なのです。

配管劣化を放置することで起こりうるトラブル

配管の劣化を放置した場合、日常生活にさまざまな支障をきたすだけでなく、建物の安全性にも関わる深刻なトラブルに発展する可能性があります。

漏水・詰まり・異臭などの日常生活への影響

最も身近なトラブルとして、給水管からの漏水や、排水管の詰まりなどが挙げられます。
詰まりを放置すると悪臭が発生したり、流した水が逆流して室内に溢れたりといった問題を引き起こします。
また、給水管の劣化が進むと水の出が悪くなったり、赤水や白濁水が出ることもあります。
これらの問題は、居住者の快適な生活を著しく損ないます。

ガス漏れ・ガス爆発の危険性(※ガス管の場合)

特にガス管の劣化は非常に危険です。
古い「白ガス管」などが腐食して穴が開くとガス漏れが発生し、最悪の場合ガス爆発を引き起こす可能性があります。
これは建物の安全性を根底から揺るがす事態です。

建物の構造や安全性へのダメージ

繰り返し発生する漏水は、建物の躯体や構造部分を劣化させる原因となります。
配管の劣化は、建物の寿命を縮めるだけでなく、安全性までも喪失させてしまうことにつながります。

資産価値の低下を招く

配管トラブルが頻発するマンションは、住環境が悪化し、建物の評価も下がります。
これはマンションの資産価値を大きく低下させる要因となります。

これらの深刻なトラブルを未然に防ぐためにも、配管の計画的な修繕が不可欠です。

マンション大規模修繕の対象となる主な配管の種類

マンションの大規模修繕において、修繕の対象となる主な配管は以下の通りです。

給水管(給湯管を含む)

給水管は生活用水を各戸へ供給する重要な配管です。
劣化が進むと赤水や漏水の原因となり、衛生面にも影響します。
特に築20年以上のマンションでは内部の腐食や錆の進行が懸念され、早期の点検と修繕が必要です。

排水管

使用済みの生活排水(台所・浴室・洗面所・洗濯)やトイレの排水、雨水などを建物外の下水道などへ排出するための配管です。
排水管は、排水の種類によって以下の通り細分化されています。

  • 汚水管…トイレの排水を流す配管
  • 雑排水管…台所・浴室・洗面所などの生活排水(洗剤や油分、髪の毛などを含む)を流す配管
  • 雨水管…屋根やベランダなどに降った雨水を流す配管
  • 汚水処理施設(浄化槽)…公共下水道がない地域に設置が義務付けられている

ガス管

ガス管は都市ガスやプロパンガスを供給するための配管で、万一の漏れは火災や爆発につながる恐れがあります。
過去に使用されていた亜鉛メッキ管は腐食しやすいため、現行のポリエチレン管などへの更新が推奨されています。

これらの配管は、いずれも日常生活に不可欠なライフラインであり、建物の内部に隠されていることが多いですが、適切な時期に劣化診断や修繕を行う必要があります。

給水管・排水管に現れる主な劣化サイン

給水管や排水管の劣化は、目に見える形でさまざまなサインとして現れることがあります。
これらのサインが見られたら、配管の劣化が進んでいる可能性が高く、点検・修繕を検討する時期だと言えます。

給水管の主な劣化サイン

  • 水の色の変化(赤水・白濁水)
    • 白濁水…給水管内部の亜鉛メッキが腐食して溶け出すことが原因で、水が白く濁ります。
    • 黄水および赤水…給水管内部に錆が発生し、腐食して溶け出したものが原因です。錆の混入率が低いと黄色、高いと赤色になります。特に古い鉄管で発生しやすい症状です。
  • 水の流れや出の悪さ…給水管内部に錆がこぶ状に付着し、管内が狭くなったり詰まったりすることで、水の出が悪くなります。
  • 漏水…給水管に亀裂が生じたり、腐食が進んで穴が開いたりすることで、天井や床、壁などから水漏れが発生します。

排水管の主な劣化サイン

  • 詰まり…排水管の劣化症状として最も代表的なものです。特に台所や浴室・洗面所といった油分や毛髪を含む雑排水管で頻繁に発生します。油分が管内に付着して管内が細くなったり、髪の毛や垢が溜まったり、尿石が付着したりすることで起こります。
  • 異臭や逆流…詰まった排水管内で油分や汚れが腐敗することで悪臭が発生します。また、詰まりがひどくなると、流した水がせき止められて逆流することがあります。
  • 漏水…配管の劣化により管に穴が開いたり、継手部分が腐食したりすることで漏水が発生します。
  • 水の流れが悪くなる…管内にサビが発生したり、詰まりかけたりすることで、水の流れが悪くなります。
  • 水が濁ってくる、赤っぽくなる…給水管と同様、排水管内にサビが発生している場合、水の色が変化することがあります。

これらのサインは、配管が寿命に近づいている、あるいは劣化が進行している明確な兆候です。
放置せずに、劣化診断を検討しましょう。

配管の耐用年数はどのくらい?修繕の目安時期

マンションの給排水管は、法律上「建物付属設備」に該当し、法定耐用年数は15年と定められています。
しかしこれは税法上の考え方であり、実際には法定耐用年数よりも長く使用されていることが多いのが実情です。
配管の実際の寿命や修繕の目安時期は、使用されている管の材質や劣化状況によって異なります。

給水管の材質別の寿命と修繕目安

材質名特徴修繕目安
亜鉛メッキ鋼管(鉄管)1970年頃まで多用。
内部に錆が出やすく、劣化が早い
10~20年
硬質塩ビライニング鋼管鋼管の内側を
硬質塩化ビニルで被覆
15~20年
硬質塩化ビニル管現在主流。水垢・錆は出にくいが経年劣化あり20~30年
ステンレス鋼管耐久性が高い材質30~35年
ポリエチレン管現在主流。柔軟性・耐久性がある約30年

給水管の材質別の修繕目安はおおむね20年前後が多いことから、一般的な大規模修繕の周期に合わせて検討されることがほとんどです。

排水管の材質別の寿命と修繕目安

材質名特徴修繕目安
硬質塩化ビニル管現在主流の材質の一つ。20~30年(配管場所により異なる)
硬質塩化ビニルライニング鋼管現在主流の材質の一つ。20~25年
亜鉛メッキ鋼管以前使われていた材質。記載なし
鋳鉄管以前使われていた材質。
主に汚水管に使用。
35~40年
耐火二層管最近の建物で使用される材質。記載なし

排水管は給水管と同じ材質が使われることもありますが、油分やゴミが流れるため給水管よりも劣化が早く、詰まりやすい傾向があります。
そのため、給水管より早めの点検・修繕が必要になる場合も少なくありません。
排水管も、おおむね20年が修繕目安と言われています。

ガス管の寿命と修繕目安

材質名特徴点検・交換の目安
亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)土壌中で腐食しやすく、平成8年に新規使用禁止。現在使用している場合は早急な対策が必要。点検・交換目安:10~15年
ポリエチレン管・
ポリエチレン被覆鋼管
現在主流。
耐腐食性が高く安全性に優れる。
耐用年数:約30年
(定期点検・修繕が重要)

このように、配管の種類や材質によって耐用年数は異なりますが、多くの配管が築20年を経過すると劣化が進み、修繕が必要になる可能性が高まります。

配管修繕に最適なタイミングは「2回目の大規模修繕」以降

配管の法定耐用年数は15年ですが、実際の使用可能期間はそれ以上であることが多く、材質にもよりますが、おおむね20年を超えたあたりから劣化症状が現れやすくなります。
そのため、一般的な12年周期の大規模修繕を計画しているマンションでは、1回目の大規模修繕時(築12年頃)には配管の劣化がまだ軽微なことが多く、修繕を見送ることもあります。

給排水管の修繕に最適なタイミングは、一般的に「2回目(築24年)以降の大規模修繕」と言われています。
この時期になると、多くの配管が修繕目安の年数(20~30年程度)に差し掛かり、油分の付着や汚れによる詰まり・漏水といった具体的なトラブルが発生し始めることが多いためです。
特に1990年以前に建てられたマンションでは、古い材質の配管が使用されている可能性が高く、築30年を超えると寿命が来ていると考えられるため、早めの修繕検討が推奨されます。

ただし築年数だけでなく、配管の劣化診断結果や、既に発生している具体的な劣化症状(赤水・詰まり・漏水など) も重要な判断基準となります。
劣化が進んでいる場合は、築年数に関わらず修繕を検討する必要があります。
早めに対策を取ることで、深刻なトラブルを防ぎ、結果的に修繕費用を抑えることができる場合もあります。

配管修繕プロジェクトを始める前の準備

給排水管の修繕は、大規模修繕全体の中でも特に専門的な知識と計画性が必要な工事です。
プロジェクトをスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。

修繕委員会の立ち上げ

配管修繕工事は、検討期間が大規模修繕工事と同等、あるいはそれ以上に長期間必要となる場合があります。
そのため、専門委員会として配管修繕に向けた修繕委員会を立ち上げることが推奨されます。
委員会を中心に検討を進め、活動状況を居住者に周知することで、工事への理解を得やすくなります。

専門業者(施工会社・コンサルタント)の選定

配管の劣化診断から工法選定、実際の施工に至るまで、専門的な知見が必要です。
信頼できる施工業者や、客観的なアドバイスを得られるコンサルタントを選定することが、適切な計画と工事の成功に不可欠です。
大規模修繕支援センターのような第三者機関が、優良なコンサルタントや施工会社を紹介してくれるサービスもあります。

給排水管の劣化診断

配管修繕プロジェクトにおける最も重要な第一歩は、給排水管の劣化診断を実施することです。
これは、現在の配管の状態を正確に把握し、修繕の必要性の有無や最適な工法を判断するために不可欠なプロセスです。

劣化診断の方法はいくつかあり、調査会社によって多少異なりますが、一般的には以下の調査が組み合わせて行われます。

外観調査

給水メーター周りの給水管や、専有部分・ピット(配管メンテナンス用の空間)にある排水管の外観を目視で確認します。
錆や腐食、漏水の跡などがないかを確認します。

抜管調査(サンプリング調査)

給水管や排水管の一部を抜き取って、その断面や内部の状態を直接確認します。
これにより、錆のこぶや汚れの付着状況、管の厚みの減少具合などを詳しく調べることができます。

内視鏡調査

配管内部に内視鏡カメラを入れて、内部の錆や汚れの付着状況、亀裂などを映像で確認します。
抜管できない箇所や、広範囲の内部状態を確認するのに有効です。

これらの専門的な調査に加えて、居住者へのアンケートを実施することも重要です。
日常的に使用している居住者から、水の色の変化や水の出の悪さ、詰まりや悪臭などの自覚症状を聞き取ることで、劣化診断の参考にします。

診断結果に基づき、使用されている配管の種類・具体的な劣化状況・配管ルートなどを総合的に考慮して、具体的な改修工事の計画を立てていきます。

診断結果に基づく具体的な修繕工法の検討

劣化診断の結果、配管に劣化が見られ修繕が必要と判断された場合、具体的な修繕工法を検討します。給排水管の修繕工法は、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 更生(ライニング)工法…既存の配管をそのまま利用し、その内部を修繕・補強する方法
  • 更新(交換)工法…古くなった配管を撤去し、新しい配管に取り替える方法

どちらの工法を選択するかは、配管の劣化状況をはじめ、マンションの築年数・将来的な修繕計画・予算などを総合的に考慮して、専門家と十分に協議したうえで決定する必要があります。
それぞれの工法には、メリットとデメリット、費用や工事期間に違いがあります。

修繕工法 | 更生(ライニング)工法

更生(ライニング)工法は、既存の給水管・排水管の内部に発生した錆や腐食の進行を抑制するために、配管の内側をクリーニングしたうえで、エポキシ樹脂などの塗膜でコーティングする工法です。
この塗膜によって水との接触を断つことで、内部の腐食の進行を防ぎます。

  • 工法の仕組みとメリット…既存の配管をそのまま活用するため、壁や床などを大きく壊す必要がない場合が多く、更新工法に比べて工事費用や工期を抑えることができます。また、1世帯あたりの作業期間が短く、多くの場合1日で作業が完了します。これにより、居住者への影響を最小限に抑えることができます。
  • 費用目安と工事期間…費用は一戸当たり10万円~が目安とされています。共用部のみの場合は一戸当たり20万〜40万円程度となることもあります。これはあくまで目安であり、マンションの規模や配管の状況によって変動します。工事期間は、1世帯あたり1日程度ですが、全体の工期は世帯数や配管の総延長によって異なります。
  • 更生工法の耐久年数…更生工法によって配管の寿命は延びると言われており、工法や使用する材料によって異なりますが、約10~40年程度の耐久性が期待できます。ただし、更新工法よりは耐久年数が短い傾向にあります。

この工法は、配管の劣化が比較的初期段階である場合や、コストや工期を重視する場合に選択されることがあります。

修繕工法 | 更新(交換)工法

更新(交換)工法は、古くなった給水管・排水管を新しい配管に物理的に交換する工法です。
近年では、錆や腐食が発生しにくいように既に内部がコーティングされた新しい管を使用することが多いです。

  • 工法の仕組みとメリット…既存の管を根こそぎ新しい管に取り替えるため、水に関するトラブル(赤水・詰まり・漏水など)を根本的に解消できます。これにより、以降のトラブル発生リスクが大幅に低減します。最大のメリットは、耐久年数が非常に長いことです。
  • 費用目安と工事期間…更新工法は、古い管を撤去し新しい管を設置するために、壁や床を剥がすなどの解体工事と、その後の内装復旧工事が必要となります。管自体の交換費用は一戸当たり30万円~が目安ですが、内装復旧費用を含めると一戸当たり50万円~が必要となります。共用部のみの場合は一戸当たり30万~70万円程度となることもあります。更生工法と比較すると、費用は1.5~2.5倍程度高くなる傾向があります。工事期間も長くなり、内装復旧を含めると1世帯あたり3~5日程度の日数がかかります。
  • 更新工法の耐久年数…新しい管に交換するため、耐久年数は40~50年程度と、更生工法よりも長く持ちます。長期的な視点で見ると、ライフサイクルコストで有利になる場合もあります。

この工法は、配管の劣化が末期的な場合や、築年数がかなり経過しており根本的な解決と長期的な安定性を重視する場合に選択されます。

給排水管修繕にかかる総費用とその相場

マンションの給排水管修繕にかかる総費用は、採用する工法・マンションの規模・使用されている配管の材質・劣化の程度・工事の範囲(共用部のみか専有部含むか)など、さまざまな要因によって大きく変動します。

  • 工法による費用差…前述の通り、更生工法は比較的安価で、一戸当たり10万円~(共用部のみで20万~40万円/戸)が目安です。一方、更新工法は内装復旧を含めると一戸当たり50万円~(共用部のみで30万~70万円/戸)が目安となり、更生工法の1.5~2.5倍程度の費用がかかる傾向があります。
  • 大規模修繕全体の費用とのバランス…マンションの大規模修繕全体の費用相場は、一戸当たり約75万~125万円と言われています。この金額には、外壁塗装・防水工事など、他の共用部分の修繕費用も含まれます。配管修繕は、この大規模修繕費用の一部を占めることになります。配管修繕の費用は、大規模修繕全体の予算に大きな影響を与えるため、計画段階での正確な費用見積もりと資金計画が非常に重要です。

配管の劣化診断を実施し、専門家と協議しながら最適な工法を選び、複数の業者から見積もりを取得することが、適正な費用を把握するために不可欠です。

工事中の居住者への影響と注意すべき点

大規模修繕工事は、基本的に居住者が生活しているなかで行われます。
特に給排水管の修繕は、外壁や屋上などの建物の外部を中心とした一般的な大規模修繕とは異なり、建物の内部を中心とした工事となります。
そのため、居住者の日常生活により大きな影響を及ぼす可能性があり、細やかな配慮が必要です。

  • 大規模修繕(外部)と配管修繕(内部)の違い…大規模修繕で必要な大規模な足場は配管修繕では不要な場合が多いですが、配管修繕では居住者の部屋(専有部分)への立ち入りが必須となります。また、更新工法の場合は、室内の壁や床(天井)といった内装の解体および復旧工事を伴う可能性が大きいです。
  • 水の使用制限・騒音・におい…工事中は、断水などによる水の使用制限が発生します。また、配管の切断や内装解体による騒音、管内部の作業によるにおいなどが伴う可能性もあります。
  • 事前の周知と配慮…これらの影響を最小限に抑え、居住者の協力を得るためには、事前の周知と工事中の配慮が不可欠です。工事の内容、時期、期間、そして工事中に発生する可能性がある影響(水の使用制限・騒音・におい・室内への立ち入りなど)を、事前に詳しく、そして丁寧に居住者に伝える必要があります。居住者が心構えをできるよう、立ち合いが必要な日程に合わせて工程を組むなどの配慮も重要です。工事期間中は、掲示板などで工事に関する最新情報(騒音・においの発生日、洗濯物が干せない日など)を発信するよう施工業者に依頼することも、トラブルを減らすために有効です。

最もデリケートな問題:専有部分(横引管)の工事

給排水管修繕において、最もデリケートで課題となりやすいのが、専有部分に設置されている横引管の工事です。
配管は共用部分である竪管(縦に延びる管)と、各住戸の床下などを横方向に通る専有部分の横引管に分かれます。

横引管工事の必要性と課題

大規模修繕で共用部の竪管を修繕する際に、専有部の横引管も同時に工事することが望ましいとされています。
なぜなら、竪管だけを新しくしても、劣化が進んだ横引管が残っていると、そこから漏水事故が発生する可能性があるからです。
しかし、横引管は法的に専有部分に該当するため、原則として管理組合が勝手に工事することはできず、居住者個人の判断と費用負担によって実施するしかありません。
これが大きな課題となるのです。

費用負担と公平性

専有部分の工事費用を居住者個人が負担することは、費用負担の公平性という点で問題が生じる可能性があります。
そこで、横引管が専有部分であっても、できうる限り管理組合の責任と負担で、共用部の竪管工事と同時に行うべきであるという考え方が推奨されています。

内装復旧の基準設定

更新工法で横引管を交換する場合、室内の床や壁を剥がす必要があり、工事完了後に内装を復旧することになります。
築年数が経過したマンションでは、各戸でリフォームが実施され、内装が竣工時と異なっていることが多々あります。
管理組合が内装復旧費用を負担する場合、各戸の内装に合わせてすべてを負担することは公平性の観点から難しい場合があります。
そのため、事前に管理組合として復旧すべき内装仕上げなどの基準を作成し、居住者に対して十分にアナウンスしておくことが重要です。

居住者への説明と協力依頼(入室対応含む)

専有部分の工事には、居住者への丁寧な説明と協力依頼が不可欠です。
工事の必要性・範囲・工事期間中の制限・費用負担、そして室内への立ち入りが必要であることを十分に理解してもらう必要があります。
スムーズな工事のためには、居住者に工事中の立ち合いや在宅をお願いすることが原則となります。

スムーズな工事のためのコミュニケーションと配慮

配管修繕工事を成功させるためには、居住者との良好なコミュニケーションと、工事中の細やかな配慮が鍵となります。特に専有部分の工事を伴う場合、居住者の協力なしには工事が進みません。

事前の周知と工事説明会

工事に着工する前に、工事の目的・必要性・内容・期間・工事中の影響などについて、十分な時間をかけて居住者に周知することが重要です。
工事説明会を開催し、居住者からの疑問や懸念に直接答え、不安を解消することも有効です。
居住者アンケートを実施し、事前に懸念事項を把握しておくことも役立ちます。

工事期間中の情報提供

工事期間中は、エントランスの掲示板などを活用し、工事の進捗状況や、騒音・においが発生する作業や断水、洗濯物が干せない日など、居住者の生活に影響する具体的な情報をタイムリーに提供することが重要です。
これにより、居住者もある程度の心構えができ、苦情やクレームなどのトラブルを減らすことができます。

入室拒否・不在物件への根気強い対応

専有部分の工事には、原則として居住者の在室または立ち合いが必要となります。
居住者が在室できない場合は、業者に鍵を預けるなどの対応が必要ですが、プライバシーの問題や後々のトラブルを防ぐために、誓約書や承諾書を交わすなどの対策が考えられます。
また、どうしても室内への立ち入りを拒否する居住者がいた場合や、空室物件・長期不在物件がある場合、工事を進めるうえで大きな課題となります。
このような場合でも、配管修繕工事の重要性や、工事ができないことによる他の居住者への影響などを根気強く説明し、協力をお願いすることが必要です。

修繕積立金の確認と計画的な積立て

マンションの大規模修繕は高額な費用がかかる工事であり、給排水管修繕も大きな割合を占める可能性があります。
これらの費用は、原則として居住者が毎月積み立てている修繕積立金から賄われます。

しかし、計画的な修繕積立金の値上げが行われていない場合や、過去に計画外の修繕で積立金を取り崩した場合など、大規模修繕実施時に修繕積立金が不足するケースは少なくありません。
特に築年数が経過するにつれて必要な修繕費用は増加する傾向があり、配管修繕のように比較的費用のかかる工事が加わると、予算不足のリスクが高まります。

修繕積立金が不足した場合、居住者から一時金を徴収したり、管理組合が金融機関から融資を受けたりといった対策が必要になりますが、これらは居住者の負担をさらに大きくすることになり、大規模修繕自体への反対意見やトラブルの原因となることがあります。
最悪の場合、必要な修繕箇所を減らしたり、工事を延期したりせざるを得なくなる可能性もあります。

このような事態を避けるためには、現在の修繕積立金の積立て状況を確認し、将来的な大規模修繕(特に配管修繕が含まれる可能性のある2回目以降)に必要な費用を長期修繕計画に基づいて算出し、計画的に十分な積立てを行うことが非常に重要です。

第三者機関や専門業者への相談も有効

マンションの管理組合や修繕委員会だけでは、給排水管の劣化診断や最適な修繕工法の選定・費用見積もり・工事の進め方など、専門的な判断が難しい場合も少なくありません。
このような場合、第三者機関や専門業者に相談することが非常に有効です。

  • 専門家(コンサルタント、建築士など)…マンション大規模修繕の経験豊富なコンサルタントや建築士などの専門家は、中立的な立場で配管の劣化診断の依頼先の選定から、診断結果の評価・修繕工法の比較検討・施工業者の選定・工事監理に至るまで、さまざまなサポートを提供してくれます。これにより、管理組合は専門的な知見に基づいた適切な判断を行うことができます。
  • 大規模修繕支援センターなどの第三者機関…大規模修繕支援センターのような組織は、大規模修繕に関する情報提供を行っており、優良な施工会社やコンサルタントを無料で紹介してくれるサービスや、専門相談員による無料相談 を行っています。こうした機関を活用することで、信頼できる専門家を見つけやすくなります。
  • 施工業者…配管工事の実績が豊富な専門の施工業者も、具体的な劣化診断や工法提案・費用見積もりなどに関して専門的なアドバイスを提供してくれます。複数の業者から提案を受けることで、工法や費用の比較検討に役立ちます。

専門家の知見を借りることで、適切な時期に適切な方法で配管修繕を実施し、長期的な視点でマンションの維持管理を効果的に行うことができます。

まとめ

マンションの給排水管は生活に欠かせない設備ですが、建物内に隠れているため劣化に気づきにくく、対応が遅れがちです。
しかし、劣化を放置すると漏水や詰まり、異臭だけでなく、構造への悪影響や資産価値の低下を招く恐れがあります。
築20年を超えると配管の老朽化が進みやすく、2回目の大規模修繕(築24年前後)を目安に修繕の検討が推奨されます。
修繕には更生工法と更新工法があり、専門家による診断を基に選定するのが効果的です。
また、工事には居住者の協力が不可欠で、事前説明や騒音・入室対応などの配慮も求められます。
費用面では積立金の見直しや第三者機関への相談も有効です。
将来のトラブル回避と資産価値維持のため、計画的な修繕を進めましょう。

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