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大規模修繕のタイミングとは?マンションを守るメンテナンス周期や準備すべき点も解説

マンションにお住まいの皆様にとって、大規模修繕工事は避けて通れない重要なイベントです。
しかし、頻繁に行うものではないため「いつ行えばいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

この記事では、マンションにおける大規模修繕工事の適切なタイミングやその周期の考え方、そして準備から実施までの注意点について、詳細に解説していきます。
皆様のマンションの資産価値を守り、安全で快適な暮らしを維持するためのヒントとなれば幸いです。

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大規模修繕工事とは?

大規模修繕工事とは、経年劣化から建物を守るための定期的な計画修繕を指します。
これは、年月とともに進行するマンションの劣化に対し、大がかりな建物本体(躯体)を維持したり、共用部分を改修したりする工事のことです。
マンションは非常に頑丈な建物ですが、日々の雨風や日射といった自然環境の影響を常に受け、少しずつ変化が進んでいきます。
大規模修繕は、これらの影響で生じる建物の性能低下や不具合を回復させるために行われます。

なぜ大規模修繕が必要なの?

大規模修繕を適切に行わないまま劣化を放置した場合、以下のような深刻な問題が発生する恐れがあります。

住民の生活に支障が出る

一つ目は、排水設備などの不備による生活への支障です。
給排水設備やエレベーター・機械式駐車場などの共有設備は、定期的な修繕を怠ると、ある日突然使用できなくなるトラブルに発展する可能性があります。
このような事態は、居住者の日常生活に直接的な影響を与え、多大な不便とストレスをもたらすでしょう。

マンションの資産価値が低下する

二つ目は、マンション全体の資産価値低下を防ぐためです。
建物の経年劣化を放置すると、外観の見た目が悪くなるだけでなく、故障や不具合が増え、設備の仕様が古くなることで生活の利便性が損なわれます。
これにより、マンションそのものの価値が下がってしまい、将来的に売却や賃貸に出す際の価格や家賃を下げざるを得なくなる事態に繋がりかねません。

事故やトラブルの防止

外壁タイルの落下や漏水による駆体の劣化など、大きな事故防止のためにも大規模修繕は非常に重要です。
人命に関わる事故を防ぎ、安全な居住環境を維持するためにも、計画的な修繕は不可欠なのです。

大規模修繕ではどのような工事が行われる?

大規模修繕では、築年数ごとにさまざまな部分の工事が行われます。
建物の状況により年数や対象箇所は異なりますが、一般的には以下のような部分が対象です。

築年数の目安主な工事項目工事内容の概要
築5〜7年軽微な補修・
点検
シーリングの劣化確認、外壁や屋上防水の点検、
鉄部の簡易補修、小規模な塗装工事など。
早期の劣化防止に役立つメンテナンス段階。
築10〜12年第一次大規模修繕外壁補修・塗装、シーリング打ち替え、
屋上・バルコニーの防水改修、鉄部塗装、共用部照明・設備の更新。
資産価値維持のために重要な時期。
築20〜25年第二次大規模修繕前回と同様の工事に加え、給排水管の内部劣化調査・更生工事や
設備機器(ポンプ・受水槽など)の交換検討が必要。
建物性能の再生段階に入る。
築30〜35年第三次大規模修繕躯体補修や構造クラック対策、給排水管の更新、
エレベーターの大規模改修、バリアフリー対応の検討など。
将来的な長寿命化と再生計画が重要になる。
築40年以降維持か建替かの判断が必要修繕の継続と同時に、
建物寿命・費用対効果を踏まえた建替えや建物再生(スケルトンリフォーム等)の選択が検討される段階。

必要に応じて定期的な診断(長期修繕計画の見直し)を行うことで、より適切なタイミングでの工事計画が可能になります。

大規模修繕の一般的なタイミング

大規模修繕工事の周期について、明確なルールや決まりはありません。
しかし、一般的には10〜15年程度で設定されているマンションが多いとされています。
これは、多くのマンションで実際にこの前後の期間で大規模修繕が実施されている実態に基づいた目安です。

マンションごとの劣化状況に応じた周期の判断

大規模修繕工事の実施周期や回数に明確なルールがないのは、各マンションの劣化状況が異なるためです。
同じ築年数で同じ戸数のマンションであっても、建物の形状・構造的要因・海に近い、また湿気が多いといった環境的要因、そして建物の使い方といった管理の状況など、さまざまな要素が絡み合い、年月を経て建物への影響として現れるため、劣化の状況や故障の発生具合は個々の建物によって異なります。
そのため、マンションごとの劣化状況を正確に見極め、その状況に応じて周期を判断することが非常に重要になります。

長期修繕計画における修繕周期の記載

各マンションで予定されている大規模修繕工事のタイミングは、それぞれのマンションで管理している長期修繕計画に細かく記載されています。
長期修繕計画は、向こう30年程度の間にどのような修繕工事がいつ計画され、そのためにどれくらいの費用が必要になるのかを細かく記載した計画表であり、修繕積立金や管理費算出の根拠にもなっている大切な資料です。
この計画には、外壁塗装工事・鉄部塗装工事・タイル補修工事・シーリング工事・防水工事・給排水設備工事といった共用部分の各箇所の修繕時期や内容・費用がまとめられています。
ただし、長期修繕計画はあくまで計画であり、実際の建物の状況に合わせて柔軟に判断することが求められます。

大規模修繕のタイミングが「12年周期」とされる理由

大規模修繕工事の周期として「12年」という数字を耳にする方も多いのではないでしょうか。
この根拠には、いくつかの具体的な理由があります。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインの参照

多くのマンションが大規模修繕を12年周期で行っているのは、平成20年に国土交通省が公開した「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考にしているためです。
当時のガイドラインでは、12年周期の例が紹介されており、多くの分譲会社がこれを基に計画を立てたため、12年が一般的な目安として定着しました。
しかし令和3年の改訂では、劣化状況や工法の違いに応じて「12~15年程度」とされ、より柔軟な対応が求められるようになっています。

塗料や防水材などの劣化タイミングに合わせるため

大規模修繕工事が12年周期で行われるもう一つの理由は、塗料や防水材などの建材が劣化し始める時期と、前回の工事による保証期間の終了時期が重なるためです。
外部に使われる建材は10年を過ぎると劣化の兆候が現れやすく、特にコンクリート内部まで劣化が進む前に対処することが重要です。
ひび割れや膨れなどの症状が見られた場合は早期対応が求められ、修繕時期の延長を検討する際は、専門家による建物診断を受けて慎重に判断すべきです。

建築基準法に基づく特定建築物定期調査(全面打診調査)の義務化

大規模修繕工事が12年周期で行われる背景には、建築基準法で定められた特定建築物の定期調査との連動があります。
特に築10年を超えたマンションでは、外壁タイルの落下などによる危険を防ぐため、10年ごとの全面打診調査と報告が義務付けられています。
外壁調査には足場の設置が必要で、その費用が高額なため、同じ足場を活用して大規模修繕も同時に行うのが合理的です。
この効率的な方法が広く採用され、「12年周期」が一般化しました。

参考:
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン
国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について

大規模修繕のタイミングを延ばすケースと考慮すべき点

近年では、大規模修繕工事で使用される材料や工法が進化しており、それに伴い15年や18年といったスパンで工事を計画するマンションも増えてきています。
建材の品質向上や施工技術の進歩により、以前よりも耐久性の高い仕上がりが期待できるようになりました。

周期延長の主なメリット

修繕周期を延ばすことの一番のメリットは、トータルの工事回数を削減できることです。
例えば、60年の間で12年ごとに大規模修繕を実施した場合、工事回数は5回となりますが、15年ごとであれば4回で済みます。
1回の工事に数千万〜億単位の資金を必要とする大規模修繕工事では、この1回の差が長期的な大きなコスト削減に繋がります
これは、仮設工事の費用や各種申請費用など、工事回数ごとに発生する共通仮設費や間接費を削減できるため、結果として長期的なコスト削減に繋がるのです。

長周期化における注意点

しかし、むやみやたらに修繕周期を延ばせばいいというものではありません。
長周期化を実現するためには、いくつかの注意点を考慮する必要があります。

適切な材料・工法の採用と高い耐久性の確保

修繕周期を延ばすには、耐久性の高い材料と信頼性のある工法の選定が不可欠です。
近年では、フッ素系塗料や高耐久シーリング材など、耐用年数が15年以上の高性能素材が利用され、劣化を抑制できます。
外壁補修も下地処理から丁寧に行うことで、クラック再発のリスクを減らせます。
工法の選定は、現場調査や建物の劣化状況に応じた判断が必要です。
初期費用は高くなりますが、長期的にはコスト削減や建物の資産価値維持につながるでしょう。

修繕期間中の軽微な修繕やメンテナンスの徹底

修繕周期を長くする場合、小規模な補修や定期的なメンテナンスの重要性が増します。
外壁のひび割れやシーリングの劣化、排水溝の詰まりなどを放置すると、想定以上に劣化が進み、大規模修繕が早まる可能性があります。
こうした軽微な不具合を早期に発見・対応することで、大掛かりな工事を回避し、費用も抑えられます。

管理組合は長期修繕計画に中間メンテナンスを組み込み、日常管理と連携して実施する体制を整えることが、長周期修繕の成功につながります。

1回あたりの工事費用が高くなる傾向を理解しておく

大規模修繕工事の長周期化が進む中で、1回あたりの工事費用が高くなる傾向があります。
これは、長期間の耐久性を確保するために高性能な材料や高度な技術が求められ、補修範囲や手間が増えるためです。
さらに、給排水設備や電気設備の更新など複数の工事が同時に行われることで、費用が跳ね上がることもあります。物価や人件費の上昇も影響し、長期的にも工事費は増加傾向にあります。
そのため、長周期化を前提とした綿密な資金計画と長期修繕計画の見直しが重要です。

専門家への相談と建物診断の実施

大規模修繕工事のタイミングや長周期化を判断するには、専門家の意見を取り入れることが重要です。
建築士や施工管理技士などの専門家は、建物の劣化状況を客観的に評価し、最適な修繕時期や工事内容を提案してくれます。
特に長周期化を目指す場合は、外壁の打診調査や中性化試験など、精度の高い診断が不可欠です。
専門的な調査によりリスクの見落としを防ぎ、長期修繕計画の見直しを行うことで、将来の費用負担の平準化や不要な工事の回避にもつながります。
管理組合だけで判断せず、第三者の視点を取り入れることで、安心で効率的な修繕計画が実現します。

大規模修繕工事回数ごとの内容と期間の変化

マンションの大規模修繕工事は、実施回数によってその内容と期間が変化する傾向があります。

1回目の大規模修繕工事の内容と特徴

大規模修繕工事は複数のステップに分けて行われますが、1回目の修繕は主に以下の流れで行われるのが一般的です。

  1. STEP

    仮設工事

    最初に行われるのが仮設工事で、工事期間中に使用する施設や設備(仮の囲い、養生シート、工事用の電力・用水など)の施工を指します。
    特に、外壁塗装に用いる足場を建設するため、窓のすぐ外で人が作業したり、日差しが遮られたりする場合があるため、住民への事前周知が重要です。

  2. STEP

    下地補修工事

    外壁や屋根を塗装する前に、細かい劣化やひび割れなどを補修する工事です。
    これは外観を保ち強度を上げるだけでなく、塗装の仕上がりを左右する重要な工程です。
    この段階でも、窓の外での作業や日差しの遮断がある可能性があります。

  3. STEP

    タイル補修工事

    タイルの劣化や浮きを補修します。見た目に問題がなくても、調査診断で浮きが見つかることは少なくありません。
    これは外観だけでなく、タイルの落下による危険性を防ぐため、大規模修繕工事において必須の工程と言えます。

  4. STEP

    シーリング工事

    外壁のタイルとタイルのつなぎ目にあるゴムのような素材(シーリング)の剥がれやヒビを補修します。
    これにより、建物内部や鉄部への浸水を防ぎ、建物の劣化を防止します。
    また、建物の気密性を高め、断熱性向上も期待できます。
    この工程ではベランダや窓の外、玄関前の廊下などに作業員が出入りすることがあります。

  5. STEP

    外壁塗装工事

    マンションの外観を保つだけでなく、防水性や断熱性を保つ役割も担っています。
    上塗り・中塗り・下塗りという3つの工程があり、各工程は外装が乾かないと次の作業に進めません。
    中塗りから塗料が乾燥するまでの数日間はにおいが気になる場合があるほか、塗料を吹き付けて塗装する場合はスプレーの音が気になる場合もあります。

  6. STEP

    鉄部塗装工事

    扉や外部の階段、手すりなどに使用されている鉄部分の塗装を施す工事です。
    錆の発生を防止し、見た目や耐久性を保つことで、マンションの資産価値維持に繋がります。
    外壁塗装と同様、音やにおいが気になる場合があります。

  7. STEP

    防水工事

    屋上や各部屋のバルコニー、廊下といった箇所を雨水や汚れからコンクリートを守るための作業です。
    シート防水やFRP防水などさまざまな種類があり、それによって見積もりや工法が変わります。

1回目の大規模修繕工事はマンションの規模によって期間が異なり、一般的には50戸程度のマンションで3〜4カ月、100戸程度で6〜8カ月が目安となります。

2回目以降の大規模修繕工事の内容と特徴

2回目の大規模修繕工事は、1回目に比べてより踏み込んだ工事が必要となります。
建設されてから24〜30年が経過するため、建物全体の劣化具合がさらに進行しており、同じ工事内容であっても、工事期間が長く、費用も高くなる傾向にあります。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、2回目の大規模修繕工事で必要となる工事の一例として、以下のような項目が示されています。

屋上防水の撤去・新設

1回目の大規模修繕工事では部分的な補修や既存防水層を残したままの修繕が一般的ですが、2回目以降の工事では既存の防水層を撤去して新たな防水層を形成するといった、一からの修繕が必要となり、費用も増額となる傾向があります。

金物の交換

集合ポスト、宅配ボックス、ベランダのパーテーション(隣戸との仕切り板)など、年数を重ねるにつれて錆や破損が多く発生するようになります。
特にベランダの金物は、足場がある2回目の大規模修繕工事のタイミングで検討することが推奨されます。

消防用設備の交換

消防法で定期的な点検が義務付けられていますが、経年劣化による不備がないよう、交換時期に合わせて設備を取り替えることが大切です。
例えば、屋内消火栓設備や連結送水管設備は23~27年ごと、自動火災報知設備は18~22年ごとといった目安が定められています。

機械式駐車場の交換

機械式駐車場の場合は、18~22年を目安に装置の入れ替えを検討します。
しかし、都心部では高齢化や車離れにより空きが増加しており、保守点検や修繕費用が不足する課題を抱える管理組合も少なくありません。
そのため、2回目の大規模修繕工事のタイミングで機械式駐車場を解体し、平置き駐車場への変更を検討するケースも増加しています。
平置きでも路面陥没や白線消失のメンテナンスは必要ですが、機械式よりランニングコストを抑えられます。

さらに、3回目以降の大規模修繕となると、排水管やサッシ・電気設備などの工事が加わるほか、バリアフリー設備の増設なども必要になる可能性があり、さらに費用がかかることを想定しておく必要があります。
工事期間も、1回目よりも長くなる可能性があると考えておくと良いでしょう。

大規模修繕準備から実施までの主な流れとタイミング

大規模修繕工事は、その重要性と規模から、準備から実施、そして完了後までの一連のプロセスを計画的に進めることが成功の鍵となります。

準備の開始時期(築10年を超えた頃から)

多くのマンションでは、築10年を超えた頃から大規模修繕に向けた情報収集を始めたり、修繕委員会を立ち上げたり、建物診断を実施したりと、少しずつ準備を始めるケースが多いようです。
大規模修繕工事の準備には、通常でも1年~1年半程度の期間がかかります。
工事時期を延ばすといった議題が加わる場合は、さらに検討時間が必要となるため、準備期間に余裕を持つことが重要です。

管理組合内の体制づくり(修繕委員会の設置など)

大規模修繕工事を進めるにあたり、まずは管理組合内で適切な体制を整えることが重要です。
通常は理事会が主導しますが、業務の負担を軽減するため「修繕委員会」を設置するケースも一般的です。
この委員会は、工事の準備から完了までの実務を担います。
過去に修繕経験がある人や建築知識を持つ人が加わると、よりスムーズに進行できます。

ただし、修繕委員会の設置は必須ではなく、各管理組合の事情に応じて判断します。
また、引継ぎの混乱を避けるため、理事の任期延長や交代制の導入を行う組合もあるため、それぞれのマンションに応じた柔軟な体制づくりが大切です。

工事発注方式の決定

大規模修繕の発注方式は大きく分けて以下の3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、マンションの実情に合った方法を選ぶことが重要です。

責任施工方式

施工会社またはマンション管理会社1社とのみ工事請負契約を結ぶ方式です。

  • メリット: 劣化診断や修繕計画・工事・アフターサポートなどの窓口が一本化されるため、管理組合側が工事状況などを把握しやすく、コンサルタント費用が発生しない点が主な特徴です。
  • デメリット: 第三者のチェックがないため、手抜き工事による品質低下や、適正な工事が行われたかといった判断が難しくなり、公正性・公平性が保ちにくいという点が挙げられます。また管理組合での検査負担が増える可能性もあります。

設計監理方式

設計監理業務はコンサルティング会社と契約を結び、工事は工事施工会社と請負契約を結ぶ方法です。

  • メリット: コンサルタントが入ることで、管理組合の予算や要望に合わせた設計内容に調整でき、適正な工事を行うための精査が可能となります。管理組合にとっては透明性が担保され、合意形成もしやすくなります。
  • デメリット: 工事費の他にコンサルタント費が発生します。また、設計コンサルティング会社と施工会社が癒着したり、施工会社間で談合が行われたりといった不適切なケースも起こり得る点は注意が必要です。

アドバイザー方式(プロポーザル方式)

基本計画立案および業者選定補助業務契約、工事監理契約の2つの契約をコンサルティング会社と結ぶ方式です。施工会社決定後に工事請負契約を交わすため、コンサルティング会社と施工会社との癒着を防ぐことが可能と言えます。

  • メリット: コンサルタントのアドバイスを受けながら基本計画書を決定するため、管理組合の要望が反映されやすくなり、予算管理がしやすくなります。施工会社の見積り比較がしやすく、実力を理解した上で高い品質を担保できることがメリットです。
  • デメリット: 管理組合には設計や工事監理に能動的に関わる姿勢が求められます。

管理会社に管理業務を委託しているマンションの場合、そのマンションのことを熟知しており、何かトラブルがあった際の対応力が最も高い管理会社に何らかの形で工事に関与してもらう方が望ましいでしょう。
ただし、管理会社に発注することで、費用が割高になる場合も考えられます。

修繕計画・予算の策定

建物診断で劣化状況が判明した後は、修繕の優先順位や実施時期、内容を検討します。
劣化が進んだ部分は早急に対応し、状態の良い箇所は次回まで維持できる処置に留め、限られた予算で改良工事なども検討するメリハリのある対応が重要です。

修繕費用には積立金が充てられますが、不足している場合は内容や時期の見直しが必要です。
また、積立金は将来の工事にも関わるため、長期的視点での予算管理が求められます。
工事前には長期修繕計画を見直し、必要に応じて管理費なども再検討することが大切です。

施工会社の選定

工事の内容や予算が決まったら、施工会社の選定に移ります。
複数の会社から見積もりを出してもらい、比較検討するのが一般的です。
施工会社を決定する際、費用は非常に重要な判断材料の一つですが、これまでの施工実績や経験・工事への意気込み、また経営の安定性もしっかり見たうえで総合的に判断することが大切です。

施工会社とは工事中はもちろん、施工後もアフター点検などを通じて長年にわたる付き合いがあることを想定して会社を選ぶことが重要なポイントです。

総会決議と組合員の合意形成の重要性

大規模修繕工事についての概要が決まったら、総会を開催し、組合員に対し修繕の目的・費用・期間など工事計画の概要について報告します。
この総会で組合員の承認を得てから、ようやく正式に工事の発注ができるようになります。
大規模修繕工事は多額の費用を伴い、居住環境にも影響を与えるため、組合員の理解を得ないと実施することはできません。
そのため、選考や決定の過程において公平性・透明性が保たれていることが非常に大切です。

総会に至るまでの過程でも、報告会や広報誌の作成、場合によっては臨時総会を開催し、組合内での意見の吸い上げや調整を行うなど、丁寧なコミュニケーションが組合員の合意形成を促すうえで非常に大切です。

工事説明会の実施と居住者への配慮

総会で大規模修繕工事実施の承認が得られたら、決定した施工会社と契約を締結し、工事の準備に入ります。
着工の1カ月程度前に工事説明会を実施し、組合員や居住者に工事の概要や注意点などを説明します。
特に安全上の留意点や対策、日常生活への影響については時間をとって丁寧に説明しましょう。

ここで上がった意見や懸念点はパートナーや施工会社にも共有し、極力生活に影響が出ないよう対応策を検討することが重要です。

着工から竣工・引き渡し

大規模修繕工事は、近隣への挨拶や説明会を終えた後に着工します。
事前に綿密な計画を立てていても、実際の施工中に初めて見つかる不具合もあるため、理事会・修繕委員会・施工会社・パートナー間で定期的な打ち合わせを行い、進捗や変更点、住民からの意見を共有・調整しながら進めます。

また、工事中の居住環境は大きく変化するため、騒音や安全面に配慮した事前周知が重要です。
掲示板やチラシを活用し、生活への影響を最小限に抑える広報が求められます。
こうした配慮は、居住者の信頼や協力を得るためにも不可欠です。

工事終盤には管理組合・施工会社・パートナーで竣工検査を行い、最終確認後に引き渡しとなります。
竣工時に受け取る竣工図書は、今後の建物管理における重要書類として、適切に保管する必要があります。

大規模修繕のタイミングに関する質問

Q

築10年未満でも修繕が必要になるケースはありますか?

A

はい、あります。
施工不良や立地環境(海風・豪雨・塩害地域など)により、想定よりも早く劣化が進行するケースがあります。
築年数だけで判断せず、定期点検や劣化診断の結果をもとに、早期の対応が必要かどうかを確認することが重要です。

Q

長期修繕計画と実際の修繕タイミングがズレても問題ないですか?

A

多少のズレは問題ありませんが、定期的に点検や診断を行い、現状に即した修繕時期へ柔軟に対応することが重要です。
長期修繕計画はあくまで目安であり、建物の劣化状況によっては早めの工事が必要になる場合もあります。
逆に劣化が軽微であれば、次回に繰り越す判断も可能です。

Q

修繕のタイミングを遅らせるためにできることはありますか?

A

日常的なメンテナンスをしっかり行うことで、劣化の進行を抑え、修繕時期を延ばすことが可能です。
たとえば、排水溝の清掃やコーキングの点検、小さなクラックの早期補修などが効果的です。
また、定期診断をもとに部分補修を重ねることで、大規模修繕を計画的に先延ばしする選択肢も取れます。

Q

大規模修繕のタイミングは管理組合だけで決めていいのですか?

A

基本的には管理組合の決議によって進められますが、専門家の診断結果や長期修繕計画に基づいた判断が必要不可欠です。
また、大規模修繕は区分所有者全体の資産価値や生活環境に関わるため、居住者への丁寧な説明や合意形成も重要なプロセスとなります。

まとめ

マンションの大規模修繕工事は、建物の経年劣化を防ぎ、維持管理していくために不可欠な工事です。
一般的な周期として10年~15年、特に12年周期が目安とされてきましたが、これは国土交通省のガイドラインや建材の劣化・法的義務(特定建築物定期調査)など、さまざまな要因が複合的に影響しています。

しかし、長期修繕計画はあくまで計画に過ぎません。
最も重要なのは、定期的な計画修繕と劣化状況の正確な見極めです。
そのためには、計画的な建物調査診断を必ず実施し、建物の劣化状態を見極め、修繕の時期を逃さないことが非常に重要となります。

また、大規模修繕工事は多額の費用を伴うため、長期的な視点での資金計画と、適切なタイミングでの実施が求められます。
修繕積立金の状況を定期的に見直し、将来的な不足がないよう、必要に応じて計画や積立額を調整していく必要があります。

大規模修繕工事は、マンションにとっては、今後の方向性を決定づけていく大きなターニングポイントでもあります。
工事の内容を組み立てていくうえで、資金面での検証や現状とのバランス、マンションの将来像など、さまざまな可能性を検討して進めていく必要があります。
建物としての資産価値向上を目指すことはもちろん、大規模修繕工事をマンション内部の活性化や将来像を考えていくための大きなチャンスととらえ、管理組合として上手に活用していくことが、マンションの未来のための最適なタイミングを見つける鍵となるでしょう。

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