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突きつけ部分の防水工事について | 施工の注意点と漏水リスクを解説

建築現場において、細部に施す作業が建物の耐久性を左右することがあります。
なかでも突きつけは、シンプルで美観に優れる一方、防水上の課題を抱えやすい部位です。

設計時に見落とされがちなこのディテールは、正しい理解と施工技術が伴わなければ、わずかな隙間からの漏水が建物全体の劣化を招くこともあるため、注意が必要です。

この記事では、「突きつけ」の基本的な意味や発生箇所の特徴・設計意図と実際の施工におけるリスク、そしてそれらを克服するための防水処理の方法について解説していきます。

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そもそも「突きつけ」とは?

「突きつけ」とは、建築施工において部材同士を隙間なく突き合わせる処理のことを指します。
目地材やシーリングを介さず、直接部材同士を接合するため、目地が視認されない納め方となります。

これらは、外壁材・笠木・サッシ廻り・ALCパネルなど、さまざまな部位で設計に応じて使用されることがあります。
施工にあたっては、納まり図や構造図をもとに、寸法精度や下地条件を考慮して処理されるのが一般的です。
ズレが生じやすく、結果として漏水やクラックの原因になることがあるため慎重な施工が求められる処理でもあります。

突きつけ処理で得られるメリット

突きつけ処理が採用されるのには、以下のような明確な理由と利点があります。

  • 美観を最優先した設計意図に応えられる…目地がないことでラインが明瞭になるため、モダンな建築物や店舗外観といった外観が重視される建物に適している
  • 工期の短縮や人的コストの軽減につながる…目地幅の調整や目地材の選定・型枠設計といった工程が不要になることで、施工効率が上がりやすい
  • 材料費を削減できる…シーリング材や目地棒などの材料が一部不要になるため、建設費用の圧縮が可能

突きつけ処理が行われている代表的な箇所

突きつけ処理は、建物の多様な部位において見られます。
防水工事を逃さず行うためにも、突きつけが行われている主な場所を把握してきましょう。

サッシ枠周辺


ビス止めされたアルミ枠では、目地を設けずに外壁材と直接突き合わせることで、施工の簡略化と見た目のすっきり感が得られます。
ただし、シーリング材の厚みが確保できないと接着不良やひび割れの原因になりやすいため、防水性能の確保が難しくなります。

パラペットと笠木の接合部

水平面と立ち上がり面が交差し、雨水が滞留しやすくなるため、処理の工夫と勾配設計・防水層の立ち上げなどが必要になります。
さらに、仕上げ材と防水層の端部や、ALC外壁パネルの縦ジョイント部など、異素材が取り合う部分も突きつけ処理が多く、防水の弱点になりやすい箇所です。

このような箇所では、設計・施工双方での配慮が重要です。

突きつけ部における防水の課題とリスク

さまざまな目的から処理が施される突きつけですが、どの背景には課題を抱えています。
安全かつ効果的な施工を行うためにも、課題とそれに伴うリスクについて理解しておきましょう。

雨水が浸入しやすい

突きつけ処理は、隙間を設けない構造上、表面的には継ぎ目が目立たず、密閉されているように見えます。
しかし実際には、施工誤差や素材の経年変化・微細な収縮や膨張によって、わずかな隙間が生じることがあります。
その結果、毛細管現象や負圧によって、雨水が外部から内部へと徐々に浸入するリスクが高まるのです。
加えて、突きつけ部分は他の処理に比べて防水処理が難しく、単一のシーリング材や防水テープだけでは長期間の性能維持が困難なケースもあります。
特に、風が強く吹き付ける外部立面や、水平面と垂直面が交わるような部位では、風圧が局所的に集中しやすく、雨水の浸入リスクが倍増します。

クラックが発生しやすい

突きつけ処理では、下地や構造体の微細な動きがダイレクトに表面に影響を与えるため、動きに対応できる柔軟性が必要になります。
温度差による膨張や収縮・地震や風圧による振動・乾燥による木材の収縮など、建物は常に変化しています。
これらの変化に突きつけ処理が追従できない場合、シーリング材に過剰なストレスがかかり、やがて亀裂や剥離・接着不良を引き起こします。
特に目地を設けない構造では、逃げ場がないために応力が一点に集中し、結果として防水層の破断や、最終的な漏水へとつながる可能性が高まるのです。

起こり得るリスク

突きつけ処理に起因する不具合の代表例として、以下のようなトラブルが挙げられます。

  • サッシ下端部の水切り未処理やシーリング施工の不良により、内部への漏水が生じサッシ周辺にカビや腐食する
  • 止水処理が不完全なまま施工されたことによる、コンクリートの劣化や内部鉄筋の腐食が進む
  • 防水テープの未施工によって、雨水が浸入し内部断熱材を劣化させる

突きつけ処理の特性とリスクを十分に理解せず、安易に処理してしまうと、このような事態に陥る可能性も否定できません。
したがって、防水計画の初期段階から「突きつけ」の存在を意識し、適切な施工計画を立てることが極めて重要だと言えるでしょう。

突きつけ部の防水処理の基本と推奨工法

突きつけ処理における防水処理は、その特性上、非常に繊細かつ高度な施工技術を必要とします。
適切な防水処理を施すことで、構造的な耐久性を維持し、漏水リスクを最小限に抑えることが可能になります。
以下に、材料別における防水処理方法の種類をまとめたので、参考にしてみてください。

材料区分主な用途・役割特徴・利点使用上の注意点
ブチル系防水テープALC継ぎ目や下地との突き合わせ部の一次防水処理自己粘着性が高く、凹凸部にも密着しやすい接着面の清掃・乾燥が不十分だと剥がれやすい
ウレタン系シーリング材屋外の突きつけ部での充填・防水柔軟性と耐候性に優れ、動きに追従しやすい施工温度・湿度の管理が必要。
硬化時間に注意
変成シリコーン系シーリング材外壁や金属部材の接合部での防水充填中性で幅広い下地に適応し、耐久性も高いプライマーとの相性を確認する必要あり

突きつけ処理の施工フロー

突きつけへの防水処理は、一般的な流れとは異なることがほとんどです。
そのため、単にシーリングを打設するだけでは不十分です。
高い施工精度と段階的な処理が求められるため、それぞれの工程を丁寧に行うことが、最終的な仕上がりと防水性能を左右します。

  1. STEP

    下地処理

    防水材の接着性を確保するうえで極めて重要な工程であり、下地に付着したほこりやゴミ・油分・水分などを丁寧に取り除く必要があります。
    特に湿気や汚れが残っていると、後の剥離や浮きの原因となるため、施工前には乾いた状態を十分に確認しておくことが求められます。

  2. STEP

    プライマーの塗布

    防水テープやシーリング材の密着性を高めるために、欠かせない工程です。
    プライマーは使用する材料に応じて適切な種類を選定し、塗布後には一定の乾燥時間を確保する必要があります。
    この養生時間は気温や湿度などの施工環境によって異なるため、現場状況に応じて判断することが重要です。

  3. STEP

    防水テープの施工

    防水テープは突きつけ部の一次防水層として機能し、部材の接合部に沿ってまっすぐ圧着することで、水の浸入を防ぎます。
    この際、テープが浮いたりたるんだりしないように、手やローラーで確実に押さえながら貼り付ける必要があります。

  4. STEP

    目地底部へバックアップ材を挿入する

    この材料は、シーリング材が三面接着にならないよう調整する目的で使用されます。
    適切な深さと幅を確保することで、防水層としての可動性と耐久性を両立させる下地となります。

  5. STEP

    シーリング材の打設

    シーリング材は目地の中に連続的に充填され、空気が入らないように注意しながら打ち込みます。
    その後、ヘラを使って表面を押さえ、均一な厚みと滑らかな仕上がりになるよう丁寧に整えます。
    この工程は見た目の美しさだけでなく、接着性や防水性にも影響するため、技術的な精度が求められます。

  6. STEP

    施工部位を保護する

    施工直後から初期硬化が完了するまでの間、雨やほこり・作業者の接触などにより表面が乱されると、硬化不良や密着不良の原因となりかねません。
    そのため、必要に応じて養生シートや仮設の保護措置を施すことが望まれます。

このように、突きつけ部の防水処理は、各工程の積み重ねによってその品質が決まります。
どれか一つでも手を抜けば、後の不具合につながるリスクがあるため、設計段階から施工完了まで、全ての工程において高い注意力と判断力が求められる処理と言えるでしょう。

部位別|突きつけ処理の防水ポイント

突きつけ処理は、建物内外のさまざまな部位に採用されるため、部位ごとに特性やリスクを理解し、それに応じた防水処理を行うことが求められます。
以下では、特に漏水リスクが高い代表的な部位に分けて、具体的な対策方法と注意点を解説します。

サッシと外壁の突きつけ部

サッシと外壁との取り合い部は、突きつけ処理が多用される典型的な箇所です。
特にALCパネルやRC外壁との取り合いにおいては、動きの異なる素材同士が接触するため、ひび割れや隙間の発生リスクが高くなります。
このような部位では、一次防水としてのシーリング処理に加え、止水テープや水切り金物などの二次的な防水要素を組み合わせることが基本です。
ALCの場合は、パネルの断面に吸水性があるため、防水テープの張付けやジョイント部の面取り処理が重要になります。
また、サッシ枠下部では、重力で水が溜まりやすくなるため、下端部に十分な勾配と排水機構(ドレイン孔や水切り板)を設けることも欠かせません。

パラペットと笠木の取り合い部

屋上やルーフバルコニーに設置されるパラペットの上部に取り付けられる笠木は、突きつけ処理になりやすい箇所です。
ここでは、強風時に雨水が巻き上がる現象(逆流現象)により、水平面と垂直面の境界に雨水が滞留し、防水層の剥離や漏水につながることがあります。
このようなリスクを防ぐには、笠木の端部に水返し(折り返し処理)を施し、立ち上がりの防水層としっかり一体化させることが基本です。
また、接合部にはジョイントシートを用いて動きに追従できる構造とし、ビス止め部には必ずシーリングやキャップを施すことで、貫通部からの浸水も防ぎます。
さらに、金属製笠木の場合は熱伸縮による歪みも想定されるため、あらかじめ伸縮対応の目地やスライド接合の設計が必要です。

外壁パネルと下地

外壁パネル同士、あるいはパネルと下地材の突き合わせ部は、建物全体の外観に関わる重要な処理ですが、防水上の弱点にもなりやすい部分です。
特にALCや押出成形セメント板、窯業系サイディングなどを使用した外壁では、パネル間の継ぎ目に隙間ができやすく、雨水の浸入経路となる可能性があります。
このような部位では、施工前に下地の不陸(凸凹)をしっかり修正し、接合部にジョイントテープを張付けたうえで、面状のシーリング処理を行うのが一般的です。
さらに、表面塗装や防水塗膜の連続性が保たれているかどうかを確認し、下塗り~上塗りの各層で均一な厚みが確保されているかもチェックする必要があります。
また、部材の乾燥収縮や温度差による動きによりパネルに微細なクラックが入るケースもあるため、定期的な点検と再シーリング処理を想定した設計が望まれます。

施工時に注意すべきチェックポイント

突きつけ処理における防水施工では、事前の準備から完了後の検査まで、すべての工程で注意を要します。
ここでは、施工時に特に重要なチェックポイントを工程ごとに詳しく解説します。

処理図・仕様書の事前確認

施工前にまず確認すべきなのが、詳細な処理図や断面図、部位ごとの仕様書です。
特に突きつけ処理は標準化された寸法ではないことが多いため、現場条件に応じた設計図との照合が必要です。
処理図からは、構造部材の可動方向・シーリング幅・防水層の立ち上がり高さなどを確認し、寸法ズレや処理不備がないかを事前に把握しておくことが重要です。
また、使用される部材(パネル材・防水材・テープ類・プライマー等)について、相互の適合性や使用可能な施工条件(温湿度・乾燥時間など)を施工前に確認しておくことで、作業中のトラブルを防げます。

下地処理とプライマー施工の徹底

突きつけ処理の防水では、下地処理が不十分なままシーリング材を施工してしまうと、密着性の低下や早期剥離が発生する原因となります。
下地は、汚れ・油分・ほこり・水分を完全に除去し、乾燥状態を確認したうえで作業を開始します。
粗面の場合はプライマーを2回塗りするなど、下地状態に応じた対応が求められます。
プライマー塗布後は、メーカーが指定する乾燥時間(通常は15分〜1時間)を厳守しなければなりません。乾
きすぎた場合や逆に湿っている場合は、再塗布の必要があります。

シーリング施工時の注意点

突きつけ部は動きに追従できる柔軟性が求められるため、シーリング材は「二面接着」を基本とします。
三面接着にならないように、バックアップ材を適切に挿入し、シーリング材の断面形状を弾性に富むものに整えます。
厚みは最低でも10mm以上、幅は処理図に基づいて確保し、動き代を吸収できる構造を形成します。
シーリング材は連続して空気を巻き込まずに充填し、直後に均一な押さえ仕上げを行います。
ヘラの押さえ角度や力加減も重要で、表面に凹凸があると汚れが溜まりやすく、劣化の原因になります。

施工完了後の検査と記録

施工完了後は、目視検査と寸法確認・硬化確認を行います。
シーリングラインの均一性・はみ出し・剥離・ひび割れがないかをチェックし、不備がある場合は即座に補修を行う必要があります。
さらに、散水試験や水張り試験を実施することで、漏水の有無を確認することができます。
これにより、引き渡し後のトラブルリスクを大幅に低減できます。
施工記録として、使用した材料のロット番号・施工日・天候・気温・湿度・作業時間などを台帳に記録しておくことで、後のメンテナンスや不具合対応時にも有効な資料となります。

Q&A|突きつけ処理の防水でよくある疑問

Q

突きつけ処理と目地処理の違いは?

A

突きつけ処理は部材同士を隙間なく突き合わせることで、目地が目立たず美しい仕上がりになります。
一方で、防水性は低くなりやすく、施工の精度が求められます。
目地処理は意図的に隙間を設け、シーリング材などで処理するため、防水性能や可動性に優れており、施工時の誤差にもある程度対応可能です。

Q

なぜ突きつけ処理では漏水が発生しやすい?

A

突きつけ処理は、構造的な動きに対応する逃げがないため、微細な隙間やクラックが発生しやすいのです。
しかも外観的には密着して見えるため、施工不良や経年劣化が発見されにくく、結果として漏水が進行しやすい特徴があります。

Q

防水処理にはどんな材料が使われるの?

A

突きつけ部では、防水テープ(ブチル系)・変成シリコーン系・ウレタン系のシーリング材・ジョイントシート・バックアップ材・プライマーなどが使用されます。
場所や部位によって、組み合わせや施工方法が異なるため、材工一体での適合性を確認することが重要です。

Q

サッシまわりの突きつけ処理はどう処理する?

A

サッシ枠と外壁の突き合わせ部では、止水テープ+バックアップ材+高耐候性シーリング材による三重の処理が推奨されます。
さらに、下端には水切りを設けて、重力による雨水の滞留・逆流を防ぐように設計します。
可能であれば、シーリングラインの動き方向に対して直角になるよう設計することで耐久性が向上します。

Q

突きつけ処理で施工不良を防ぐには?

A

施工前の図面確認・材料選定に加え、下地処理とプライマー乾燥時間の厳守・バックアップ材の挿入・二面接着の徹底が重要です。
また、施工後には目視だけでなく、散水試験などの実試験を行うことが望まれます。

Q

既存建物に後から防水処理を追加できる?

A

可能です。
ただし、既設下地の状態(劣化・汚染・亀裂)によっては既存材の撤去や下地補修が必要になることがあります。
特に旧シーリング材が硬化・脆弱化している場合は、完全除去のうえで再施工が必要です。
調査と診断を踏まえたうえで、専門業者の対応を推奨します。

まとめ

突きつけ納まりは、目地を設けずに部材同士を突き合わせる施工方法であり、そのシンプルで美しい意匠性から多くの建築物に採用されています。
しかしその一方で、防水性能の確保が難しく、わずかな施工ミスが漏水や構造劣化に直結するリスクをはらんでいます。
特に、外部に面するサッシ周りや笠木部・ALCパネル接合部などは、雨仕舞や動きへの対応が複雑化しやすく、設計・施工・検査の各工程において高度な対応が求められます。

設計段階では、部位ごとの動きの方向性や周辺構造との関係を踏まえたうえで、設計図や仕様書を明確化し、必要に応じて二次防水の検討も含めるべきです。
施工段階では、下地の清掃・乾燥からプライマー処・シーリング材の二面接着・圧着・押さえ仕上げまで、すべての作業において精度と丁寧さが求められます。
また施工後の検査では、目視確認だけでなく散水試験や膜厚確認を実施することで、施工不良や未処理部を早期に発見し、必要な是正措置が講じられます。

突きつけ納まりを成功させるには、「見た目」と「性能」の両立を図るという意識が不可欠です。
美観に優れた仕上がりを維持しながら、長期にわたり漏水を防ぐためにも、見えない部分こそ手を抜かず、確かな根拠に基づいた防水施工を積み重ねることが求められます。

[離脱防止ボーダル(html)]