給水管や排水管といった配管設備は、私たちの日常生活に不可欠なライフラインです。
しかし、これらの管は長年の使用によって少しずつ劣化が進行し、最終的には漏水事故や、さらには水質の悪化による健康被害を引き起こす可能性を秘めています。
これらのトラブルを未然に防ぎ、安全で快適なマンション生活を継続するためには、適切なタイミングでの配管設備の更新や更生が強く求められます。
この記事では、マンションの配管設備に関する基本的な知識から、配管が劣化する理由・具体的な劣化の兆候・修繕や更新の具体的な方法などについて紹介します。
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目次
マンションの配管設備とは?その種類と素材
マンション内には、さまざまな目的で使用される配管設備が存在します。
これらの配管は、各住戸への水の供給や使用済み排水の排出・ガス供給や排水時の空気圧調整など、多様な役割を担っています。
マンションの配管設備は、その役割によっていくつかの種類に分けられます。
主なものは、以下の通りです。
配管の種類 | 主な役割 | 設置場所・特徴 |
給水管 | 水道局からの上水を各住戸へ送る | 共用部から各住戸のキッチン・お風呂・洗面所・トイレなどへ水を供給 |
給湯管 | 給湯機で温めたお湯を供給 | 給水管とは別に設置。キッチン・お風呂などお湯を使う場所へ分配 |
排水管 | 使用済みの水を排出 | 下記の2種類に分かれる。 ・汚水管:トイレ排水 ・雑排水管:生活排水 |
ガス管・通気管 | ガスの供給および排水時の空気圧調整 | ガス供給のためのガス管と、排水管の空気圧を調整する通気管がある |
雨水管 | 屋根に降った雨水を排水 | 建物の屋根から地上または下水へ雨水を流すための配管 |
これらの配管は、各住戸の内部(専有部)だけでなく、パイプスペースや共用階段内といったマンションの共用部にも張り巡らされています。
専有部と共用部では、管理責任の所在が異なる場合があるため、注意が必要です。
専有部の給排水管については、一般的に所有者の責任で修繕を行うことになります。
また、配管に使われる素材もさまざまで、それぞれに特徴と耐用年数があります。
主な素材とその特徴は、以下の通りです。
素材名 | 特徴 | 一般的な耐用年数の目安 |
鋼管・鉄管(配管用炭素鋼鋼管) | 鉄と炭素が主成分で白ガス管・SGP管とも呼ばれる。 亜鉛メッキで防錆処理されているが、 経年劣化により錆や腐食が発生しやすい。 ネジ接合部の肉厚が薄く、漏水のリスクあり。 | 約15~40年(種類により差あり) ・鋼管:約15~20年 ・鉄管:約30~40年 |
鋳鉄管・ダクタイル鋳鉄管 | 鋳型で製造される管材。 衝撃に強く、強度・耐久性・施工性に優れている。 防食面が損傷すると、腐食しやすい。 | 約35~40年 |
硬質塩化ビニル管(塩ビ管) | 耐食性・耐薬品性に優れている。 軽量で加工しやすく、比較的錆びない。 コストが比較的安価で、新築マンションで多用されている。 | 約20~25年 |
ポリエチレン管 | 可とう性が高く、曲げやすくて施工性が抜群。 耐寒性・耐熱性・耐食性に優れており、劣化しにくい。 | 約30~40年 |
銅管 | 主に古い建物で給湯管に使用れていている、 腐食に強く熱伝導性が高いが、酸性水などでは劣化しやすい。 | 約20~30年 |
これらの素材は、それぞれに定められた耐用年数がありますが、長期間使用することで錆や腐食、漏水といった様々なリスクが高まっていきます。
特に鋼管や鋳鉄管といった鉄系の配管は、時間の経過とともに錆の発生が進みやすく、トラブルの原因となりやすいことが指摘されています。
マンションの配管更新をしなかったらどうなる
マンションの配管設備は、目に見えない場所にあるため普段はその存在を意識することは少ないかもしれません。
しかし配管の劣化を放置することは、さまざまなリスクを招き、最終的にはマンションの安全性や快適性・資産価値を大きく損なう原因となります。
配管更新をしないことによるリスクについて、紹介します。
配管の寿命による不具合の増加
前述した通り、どのような素材で作られた配管にも、必ず耐用年数があります。
それぞれの耐用年数が経過したからといって、すぐに配管が破損して漏水するわけではありません。
しかし、経年による劣化は確実に進行します。
特に、かつて広く使用されていた鋼管や鉄管は錆びやすく、管内に錆が蓄積すると水の通り道が狭くなることによる水圧低下や、管に穴が開いて漏水事故を引き起こす最大の原因となります。
また、錆が水に溶け出すことで「赤水」が発生し、水質が悪化することも考えられます。
修繕コストの増大と生活への深刻な影響
配管の漏水事故が発生した場合、その修理には壁や床を壊すといった大規模な工事が必要となることが少なくありません。
これは、配管が建物の構造体に隠されているためです。
突発的に発生したトラブルに対して、応急処置や部分的な修理で対応しようとすると、多大な費用がかかるだけでなく、工事期間中の断水などにより、マンション住民の日常生活に大きな支障を与えることになります。
水質悪化による健康リスク
古い配管が劣化し管内に錆や汚れが蓄積すると、供給される水に錆の成分が混ざって赤水が出たり、管内で細菌が繁殖したりする可能性があります。
このような水を使用することは、見た目の不快さだけでなく、健康被害を引き起こす恐れも否定できません。
安全で清潔な水を安心して利用するためにも、配管の適切な維持管理は重要です。
配管の劣化は見えづらいものの、確実に進行しています。
これらのリスクを理解し「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に備える」という考え方で、計画的な配管更新を検討することが、マンションの長期的な維持において極めて重要です。
配管更新の適切なタイミングと判断材料
マンションの配管更新は、建物の大規模修繕と同様、計画的に行うことが理想です。
では、具体的にどのようなタイミングで、どのような情報を元に配管更新の必要性を判断すれば良いのでしょうか。
建築後の経過年数
多くのマンションで、建築後20~30年が経過すると、配管設備の劣化が顕著になり始めると考えられています。
配管素材の一般的な耐用年数を目安とするのはもちろん、建築後の年数も参考にしたうえで配管の修繕や更新を検討することが大切です。
過去の配管トラブルの履歴
過去にマンション内で漏水事故や赤水・詰まりなどの配管トラブルが頻繁に発生している場合、それは配管全体の劣化が進んでいる強い兆候となります。
トラブルが発生する度に修理を行うよりも、抜本的な対策として更新や更生を検討すべきサインと言えます。
住民からの声
マンション住民からの「蛇口から赤水が出るようになった」「水の出が悪くなった」「排水口から嫌な臭いがする」「トイレの水の流れが悪い」といった声は、配管内部で劣化や詰まりが発生している可能性を示す重要な情報です。
これらの日常的な兆候を見逃さず、管理組合に報告することが大切です。
専門業者による配管劣化調査の結果
目視による確認だけでは、建物の壁や床のなかに隠されている配管の内部状態を正確に把握することはできません。
内視鏡や超音波・カメラを用いた専門的な劣化調査を行うことで、管内部の錆の発生状況や腐食の度合い・詰まりの有無などを詳細に調べられます。
この調査結果は、配管更新の必要性や最適な工法を判断するうえで最も客観的で重要な判断材料となります。
マンション全体の中長期修繕計画との連動
配管更新は比較的大規模な工事となるため、マンション全体の中長期修繕計画に組み込んでおくことが望ましいです。
一般的に、マンションの大規模修繕工事は12年程度の周期で行われます。
配管の耐用年数を考慮すると、2回目または3回目の大規模修繕工事のタイミング(築24~36年頃)に合わせて、配管更新を行うのがふさわしいでしょう。
また、マンションの修繕計画と連動させることで、工事全体の効率化や費用負担の平準化も期待できます。
これらの判断材料を総合的に評価し、配管更新の必要性が高いと判断された場合には、速やかに具体的な検討を進める必要があります。
配管更新の種類と工法
マンションの配管を修繕する方法は、大きく分けて「更新」と「更生」の2種類があります。
それぞれの工法には特徴があり、メリット・デメリットが異なります。
配管更新工事
配管更新工事とは、既存の古い配管を撤去し新しい配管に取り替える方法で、昔から広く行われている信頼性の高い工法です。
古い配管を完全に新しいものへ交換することで、劣化によるトラブルの再発リスクを大幅に抑えることができ、修繕方法として非常に確実性が高いとされています。
近年では防錆コーティングが施された配管材が多く使用されており、錆や腐食が起こりにくく、交換後の配管の耐久年数は一般的に40~50年と長期にわたって安心して使用できます。
ただし、既存の配管が壁や床の内部に通っている場合には、それらを開口して撤去・交換する必要があるため、工事が大掛かりになりやすく、費用も比較的高くなる傾向があります。
また、配管更生工事に比べて工期も長くなる場合があります。
配管更生工事(ライニング工事)
配管更生工事またはライニング工事とは、既存の配管を撤去せずに内側に特殊な樹脂やライニング材を施工することで、内壁の錆や腐食の進行を抑えながら水質を改善する修繕方法です。
既存の配管をそのまま活用するため、壁や床を大きく壊す必要がなく、工事が比較的簡易で済むのが特徴で、費用も抑えやすく工期も短くなる傾向があります。
また騒音や振動も少ないため、居住中の建物でも施工しやすいというメリットがあります。
一方で、物理的に大きく破損している配管には適用できず、管の状態によっては施工できない場合もあります。
更生工事にはいくつかの工法があり、それぞれ耐久年数が異なります。
従来の塗布ライニング工法では耐久年数は約10年程度と短いですが、FRP(繊維強化プラスチック)などを用いた工法では約40年程度の耐久性があり、更新工事に近い性能を期待できます。
ただし、一度更生工事を行うと、その後の修繕では配管の交換(更新工事)しか選択肢がなくなることが多いため、長期的な修繕計画を立てるうえで慎重な判断が求められます。
どちらの工法を選択するかは、配管の劣化状況・築年数・マンション全体の修繕計画・予算・住民の希望などを考慮して、慎重に判断する必要があります。
工事の難易度と費用目安
配管工事とひとことで言っても、その難易度や費用は工法によって大きく異なります。
そのため「どの方法を選べばいいのか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
比較するうえでの判断材料として、工事の内容ごとに異なる作業の複雑さや、おおよその費用感について把握しておきましょう。
工事の難易度
マンションの専有部における配管の設置方法には「床スラブ上配管」と「床スラブ貫通配管」という2つのタイプがあります。
床スラブ上配管は、床と建物の構造体であるスラブとの間に配管が設置されているもので、更新工事の際には床を開口することで作業が可能です。
一方で床スラブ貫通配管は、床下すぐにスラブがあり、その下を配管が通っている構造で、特に築年数の古いマンションで見られることがあります。
この場合、更新工事を実施するには対象住戸だけでなく、その下階の住戸の天井を開口する必要があるため、工事の難易度が高く他住戸への影響や費用も大きくなる傾向があります。
こうした構造的な条件によって工法の選択肢も変わるため、慎重な判断が求められます。
ただし、更生工事であれば、こうした開口作業を伴わずに施工できるケースも多いため、工事負担を抑える選択肢となり得ます。
配管修理工事の費用目安
配管修理の費用は、工事の規模(共用部のみか、専有部も含むか)、場所、そして選択する工法によって大きく変動します。
一般的な目安として、1戸当たりの費用は以下の通りです(共用部のみの金額)。
- 更新工事(取り換え工事)…1戸当たり30~70万円
- 更生工事(ライニング工事)…1戸当たり20~40万円
これらの目安からも分かるように、更新工事の方が更生工事よりも費用は高くなる傾向があります。
その理由は、更新工事では古い管を撤去し新しい管を設置するために、壁を開口する面積が増えることが多く、その分の建築費用が高くなるためです。
また、マンション全体の配管を補修する場合、更新工事は更生工事よりも施工日数が長くなる傾向があり、これも費用が高くなる要因となります。
概算としては、更新工事は更生工事の1.5~2.5倍程度の費用がかかると考えておくと良いでしょう。
ただし、上記の金額はあくまで一般的な目安であり、実際の費用はマンションの築年数・構造・配管の劣化状況・対象範囲・選択する工法や業者によって大きく異なります。
正確な費用を知るためには、複数の専門業者に見積もりを取ることが不可欠です。
管理組合が行うべき準備と対応
マンションの配管設備は、建物の重要な共用設備の一部であり、その維持管理は管理組合の重要な役割です。
計画的な維持管理と適切な対応を行うことで、将来的な大規模トラブルやそれに伴う高額な費用負担を回避できます。
定期的な点検・診断の実施
配管の劣化は目に見えにくいため、日常の目視点検だけでは限界があります。
専門業者による定期的な配管劣化診断を受けることが、非常に重要です。
劣化診断では、内視鏡調査や水質検査・カメラ調査など、さまざまな専門的な手法を用いて配管内部の状態を詳細に調べます。
これにより、管の錆の発生状況・腐食の度合い・詰まりの兆候などを早期に発見し、適切な修繕や更新のタイミングを見極められます。
劣化が軽度であれば、高圧洗浄といった比較的安価な方法で数年間は延命できる可能性もあります。
定期的な診断は「壊れる前に備える」ための、第一歩です。
修繕積立金の計画的な確保
配管更新や大規模な更生工事は、一般的に高額な費用がかかります。
これらの工事費用に充てるための修繕積立金が不足していると、必要な時期に工事を実施できない、あるいは工事内容を縮小せざるを得ないといった事態に陥る可能性があります。
これを避けるためには、マンションの中長期修繕計画に配管設備の修繕・更新費用を必ず盛り込み、計画的に修繕積立金を見直して、必要な積立額を確保していくことが非常に重要です。
将来を見据えた資金計画は、マンション全体の資産価値維持にも直結します。
住民への丁寧な説明と合意形成
配管更新工事、特に専有部内の作業を伴うような工事は、マンション住民の協力と理解が不可欠です。
工事の必要性・工事内容・工期・費用、そして工事期間中の生活への影響などについて、住民向けの説明会を開催したり、分かりやすい資料を配布したりするなどして、丁寧に情報共有を行う必要があります。
住民からの疑問や懸念に対して誠実に対応し、工事に対する合意形成を図ることが、スムーズな工事実施のために欠かせません。
住民の理解が得られないまま工事を強行しようとすると、総会で紛糾するなど、余計な時間や労力がかかるだけでなく、コミュニティ内の不和を招く可能性もあります。
これらの準備と対応を怠ると、突発的なトラブルへの対応に追われたり、必要な修繕が行えず建物の劣化が進んだりするリスクが高まります。
管理組合は、これらの点に留意して、計画的な配管設備の維持管理に取り組む必要があります。
住民が知っておきたい配管の知識と心構え
マンションの配管設備は、管理組合が共用部分を中心に維持管理を行いますが、住民一人ひとりが配管に関する基本的な知識を持ち、日頃から注意を払うことも重要です。
特に専有部内の配管については、原則として各住戸の所有者が管理責任を負うことになります。
日常生活における配管トラブルの兆候を見逃さない
配管の劣化や異常は、日常生活のなかでさまざまなサインとして現れることがあります。
以下のような現象に気づいたら、それは配管トラブルの初期兆候である可能性があります。
- 蛇口から赤水が出る
- 水の流れが悪くなる・水圧が低下する
- 排水口から嫌な臭いがする
- トイレの水の流れが悪い
- 壁や天井に染みができる
これらの兆候に気づいたら、早めに管理組合または専門業者に連絡し、状況を確認してもらうことが大切です。
早期発見・早期対応が、被害を最小限に抑える鍵となります。
専有部の配管も所有者の管理対象であるという認識
マンションの規約にもよりますが、一般的に、各住戸の専有部分に設置された給排水管は、その住戸の所有者の管理責任範囲となります。
そのため、共用部の配管に関する管理組合の工事とは別に、専有部の配管については個別の対応が必要になるケースがあります。
自己の管理範囲である配管の状態にも関心を持ち、定期的な清掃や点検を心がけましょう。
リフォームと同時に配管の確認・交換を検討
キッチン・浴室・洗面所・トイレといった水回りのリフォームを検討する際には、配管設備も同時に確認し、必要であれば交換や更生を検討することが非常に効率的です。
リフォームのために壁や床を開口するタイミングで配管工事を行えば、別途工事を行うよりも手間や費用を抑えられる場合があります。
将来的なトラブルを予防し、住まいの安全性を高めるためにも、リフォームに合わせて配管の状態をチェックし専門家のアドバイスを求めるのがおすすめです。
住民一人ひとりの配管に関する意識と、異常への迅速な報告が、マンション全体の配管設備の健全な維持につながります。
配管工事業者の選び方
配管工事業者を選ぶ際には、まず複数の業者から見積もりを取ることが基本です。
その際単に費用だけでなく、提案される修繕工法の内容についても比較検討することが重要です。
依頼する際は、特にどのような工法を使用するのかを必ず確認しましょう。
同じ「ライニング工事」という名称でも、工法によって費用や耐久性が大きく異なる場合があるため、単に費用が安いというだけで判断するのは危険です。
またマンション全体として、共用部と専有部で異なる施工内容を希望する場合など、さまざまな施工方法の選択肢がある業者を選ぶことで、工事をまとめて依頼でき、費用を抑えられる可能性もあります。
実績や評判・管理組合への説明能力なども考慮して、慎重に業者を選定しましょう。
配管工事を行ううえでの注意点
マンション全体の将来計画と合わせて検討する
まず、配管をどのくらいの期間、どのような状態に維持したいのかという目標を明確にすることが重要です。
例えば、近い将来(5年後や10年後など)にマンションの建て替えを検討している場合であれば、最も費用が抑えられる塗布ライニング工法を選択するという考え方もあります。
一方、建て替えの予定がないのであれば、更新工事やガラス繊維・有機質繊維を使用する耐久性の高い更生工事を選択する方が、長期的な視点では効果的です。
工法選択の長期的な影響を理解する
特に更生工事の場合、一度塗布ライニングを行ってしまうと、その後の修繕方法が更新工事に限られてしまうケースがほとんどであることに注意が必要です。
この場合、次回修繕時に更新工事を行う必要が生じ、結果的に費用が余計にかかってしまう可能性があります。
また、短いスパンで再度工事を行うことになり、住民から不満を持たれることもあります。
費用は抑えたいが耐久性も求める場合は、ガラス繊維や有機質繊維を使用する耐久性の高い更生工事を検討しましょう。
早期検討の重要性
管の損傷が激しい場合や築年数が50年以上といった古い建物では、更生工事では対応できず、更新工事しか修繕方法がなくなってしまう場合があります。
早い段階で配管の状態を診断し、適切な修繕方法を検討することで、選択できる工法の幅が広がり、結果として修繕費用の削減や施工期間の短縮につながる可能性があります。
カメラ調査の活用
修繕が必要か判断に迷う場合は、まずは専門業者によるカメラ調査を実施してみるのが良いでしょう。
劣化状況が軽度であれば、定期的な高圧洗浄を行うことで、数年間は配管を長持ちさせることが期待できます。
配管工事は、マンションの長期的な維持管理において非常に重要な意思決定です。
これらの注意点を踏まえ、専門家の意見も参考にしながら、マンションにとって最適な方法を選択することが求められます。
リスク管理の観点からも、災害など予期せぬ事態が発生する前に、計画的に配管の対処を検討しておくことを忘れてはいけません。
まとめ
マンションには、上水道から水を供給する給水管・使用済みの水を排出する排水管・給湯機で温めたお湯を送る給湯管・屋根からの雨水を流す雨水管など、さまざまな種類の配管があります。
また、鋼管(鉄管)・鋳鉄管・硬質塩化ビニル管・ポリエチレン管・銅管など、使用されている材質も多岐にわたります。
これらの配管は、時間の経過とともに必ず劣化が進みます。
特に鋼管や鋳鉄管など古い時代の材質のものは錆や腐食が生じやすく、漏水事故や赤水の原因となるリスクが高まります。
しかし、配管の劣化を放置することは、漏水事故による建物の損傷や階下住戸への被害・水質悪化による健康リスク、そしてそれらに伴う高額な修繕費用や住民間のトラブルといった、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
そのため、マンションの配管更新は、単なる建物のメンテナンスではなく、マンション全体の快適性・安全性・資産価値・住民の健康にも直結する極めて重要な取り組みと言えるでしょう。
配管設備に関する問題は、管理組合だけ、あるいは住民だけで解決できるものではありません。
管理組合と住民が共通の意識を持ち、密に連携・協力し合うことが、配管トラブルを未然に防ぎ、安全で快適なマンション生活を長く続けるための鍵となります。
最も大切なのは、「壊れてから慌てて対応する」のではなく「壊れる前に劣化の兆候を捉え計画的に必要な対策を講じる」という、まさに「マンション管理の基本」とも言える考え方です。
「配管設備」にもしっかりと目を向け、専門的な調査に基づいた適切な対応を心がけましょう。