屋上ウレタン防水工事とは？100平米の費用相場や工期の目安などを解説

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
伸縮性が高く、複雑な形状にも対応しやすいことから、さまざまな建物で利用されています。
工法や下地の状態によって費用や工期が変動するため、まずはその基本を押さえておきましょう。
この記事では、ウレタン防水工事の目的や費用相場・施工の流れなどをわかりやすく解説します。

防水工事の目的

防水工事の目的は、建物に雨水や水分が侵入するのを防ぎ、構造物の劣化や腐食を防止することです。
屋上やバルコニーは常に雨風にさらされているため、防水処理が不十分だと内部に水が染み込み、コンクリートのひび割れや鉄筋の錆びなど、トラブルの原因につながります。
これらは建物の耐久性を著しく低下させるため、定期的な防水工事で水の侵入をシャットアウトし、建物の長寿命化や快適な居住環境の維持を図ることが重要です。
また、防水工事を行うことで資産価値を維持できるため、将来的な修繕費用の軽減にも役立ちます。

ウレタン防水工事のメリット

ウレタン防水工事には、その特性からさまざまなメリットがあります。
ここでは、ウレタン防水の主なメリットについて詳しく解説します。

継ぎ目のない一体成形で高い防水性能

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて硬化させることで、防水層を形成する工法です。
塗膜が一体となって仕上がるため継ぎ目がなく、隙間からの漏水リスクが大幅に軽減されます。
特に既存の防水層が傷んでいても、その上から重ね塗りできる点も魅力です。

柔軟性があり複雑な形状にも対応可能

液体状のウレタンは、施工時に刷毛やローラーで自在に塗布できるため、凹凸の多い屋上や排水口・配管周り・階段の段差など、複雑な形状でも施工が容易です。
そのため、シート状の防水材では難しい場所にも隙間なく施工できます。

軽量で建物に負担をかけにくい

ウレタン塗膜防水は厚みが非常に薄く、使用する材料も軽量なため、建物全体にかかる荷重を抑えられます。
屋上防水を行う際に、既存の構造への負担を最小限にしたい場合にも適しています。

補修や部分的な塗り直しがしやすい

ウレタン防水は、ひび割れや摩耗などが起きた際に、その部分だけを再度塗布する部分補修が可能です。
また、防水層の上から再塗装することで性能を延命できるため、長期的な維持管理がしやすく、メンテナンスの面でも優れています。

ウレタン防水工事の注意点

ウレタン防水工事には、メリットだけでなく施工時の注意点が存在します。
そのため、正しい理解が重要です。

紫外線や摩耗に弱い

ウレタン防水の防水層自体は紫外線や雨風に弱いため、その上に「トップコート」と呼ばれる保護塗料を施す必要があります。
このトップコートは約5〜6年ごとに再塗装するのが理想で、怠ると防水層の劣化が進行しやすくなります。

施工時の天候に影響されやすい

ウレタン防水は、施工中に気温や湿度・降雨などの天候条件に大きく左右されます。
特に雨天時や湿気の多い日は塗膜がうまく硬化せず、防水性能が不十分になるリスクがあるため、作業日程の調整が必要になるでしょう。

専門技術が必要

液状であるウレタンは一見簡単に見えますが、均一な厚みで塗り広げるには高い技術が必要です。
塗布量が足りなかったり、下地処理が不十分だったりすると、防水層の剥がれや膨れなどのトラブルにつながるため、実績のある施工業者を選ぶ必要があります。

耐用年数について

ウレタン防水の耐用年数は、一般的に約10〜15年と言われています。
ただし、耐用年数は施工品質やメンテナンスの頻度・屋上の使用状況によって変動します。
トップコートの定期的な塗り替えや、ひび割れ・剥がれを早期発見し、補修を行うことで防水層の寿命を延ばすことにつながります。

ウレタン防水における工法の種類

ウレタン防水には、主に2種類があります。
施工場所や下地の状態によって、適切な工法を選ぶことが重要です。

密着工法

密着工法は、ウレタン樹脂を下地に直接塗布して防水層を作る工法です。
施工がシンプルで工期も短いため、新築の屋上や状態の良い下地に適しています。
ただし、下地に湿気や傷みがある場合は防水層の膨れや剥がれが起こりやすく、通気層がないため湿気が抜けにくいというデメリットもあります。

通気緩衝工法

通気緩衝工法は、防水層の下に通気シートを設けて湿気を逃がしながら施工する方法です。
この工法は、湿気が多い古い建物の屋上や傷んだ下地に向いています。
湿気を効果的に排出できるため、防水層の膨れや剥がれを防ぎ、耐久性が高い点が特徴です。
一方で、施工に時間がかかり、コストも比較的高くなる傾向があります。

工法名と特徴まとめ

費用の目安

ウレタン防水には複数の工法があり、建物の状態や目的に応じて適切なものを選ぶことが重要です。
それぞれの工法の費用目安を以下にご紹介します。

工法別費用比較表

「下地補修」や「ドレン交換」は別途費用となる場合がある

ウレタン防水の費用には、基本的に塗布作業にかかる費用が含まれていますが、以下の作業は別途費用となる場合が多いです。

• 下地補修：ひび割れ補修やモルタルの補修など、下地の状態によっては大規模な補修が必要になることもある。
• ドレン交換：排水口（ドレン）の劣化に伴う交換作業で、防水工事と合わせて交換すると防水性能が向上する。

これらが必要かどうかは、施工前の現地調査で判断されます。
見積もり時に施工について、必ず確認しておきましょう。

工期の目安と天候の影響

ウレタン防水工事の工期は、一般的に3〜10日程度が目安となります。
ただし工期に幅があるのは、施工する面積の大きさや形状の複雑さ、さらに下地の補修の有無によって異なるためです。
特に、雨天や湿度が高い日はウレタンの塗布ができないため、天候によって工期が延びることがあります。
そのため、工事のスケジュールは余裕を持って計画することが重要です。

ウレタン防水の施工に適した場所

ウレタン防水は、柔軟性と高い防水性能を持つため、さまざまな場所で効果的に使用できます。
特に、防水性が重要な以下の場所に適しています。

• 屋上：広い面積で雨水がたまりやすい屋上は、防水性能が重要です。ウレタン防水は継ぎ目のない一体成形でしっかり防水できるため、屋上に最適です。
• ベランダやバルコニー：凹凸や排水溝など複雑な形状にも柔軟に対応できるため、ベランダやバルコニーの防水にも向いています。
• 外壁：外壁のひび割れや隙間からの雨水浸入を防ぐため、ウレタン防水は補修や部分塗り直しがしやすく適しています

ウレタン防水の施工手順

ウレタン防水は、手順の一つひとつが防水層の品質と耐久性に直結するため、適切な施工手順を守ることが重要です。
ここでは、代表的な施工の流れを詳しく解説します。

1. STEP

   高圧洗浄

   施工面の汚れやホコリ・旧防水層の剥がれかけた部分を、高圧洗浄機で徹底的に洗い流します。
   これにより下地表面を清潔にし、防水剤の密着性を高める準備が整います。
   汚れや油分が残っていると、防水剤の付着不良の原因になるため非常に重要な工程です。

2. STEP

   下地処理

   高圧洗浄後、ひび割れや欠損部分をモルタルや補修材で修繕します。
   下地の凹凸や段差も整えて平滑にし、ウレタン防水の層が均一に塗布できる状態に仕上げます。
   下地処理が不十分だと、防水層が薄くなったり、剥がれやすくなったりするリスクが高まります。

3. STEP

   プライマー塗布

   プライマーは、下地とウレタン防水層の密着性を高めるための接着剤の役割を果たします。
   専用のプライマーを薄く均一に塗布し、完全に乾燥させますが、この工程を省くと防水層の剥がれや早期劣化を招くため注意が必要です。
   通気緩衝工法の場合は、湿気を逃すためのシートを敷設します。

4. STEP

   ウレタン防水剤の塗布

   ウレタン防水のメイン作業である、液状のウレタン樹脂をローラーや刷毛で均一に塗り重ね、防水層を形成します。
   数回に分けて塗布することが多く、塗り厚を確保しながら気泡やムラがないよう丁寧に仕上げます。

5. STEP

   トップコート塗布

   ウレタン防水層の表面を紫外線や摩耗から守るために、専用のトップコートを塗布します。
   トップコートは耐候性や耐久性を向上させるだけでなく、仕上がりを美しくする役割もあります。

ウレタン防水を長持ちさせるポイント

ウレタン防水は高い防水性能と柔軟性が特徴ですが、施工後も適切なメンテナンスを行うことで、その寿命を大きく延ばすことができます。
ここでは、ウレタン防水の寿命を長く保つためのポイントを詳しく解説します。

定期的なメンテナンス

ウレタン防水は紫外線や風雨、温度変化の影響を受けやすいため、施工後も定期的にメンテナンスを行うことが必要です。
具体的には、トップコートの再塗布や小さなひび割れの補修などが挙げられます。
表面に小さな亀裂が発生した場合は、早期に補修を行うことで水の浸入を防ぎ、防水層の劣化拡大を抑制することが可能です。

こまめな掃除

防水層の表面にゴミや砂・落ち葉などが溜まると、水はけが悪くなり、水たまりが発生しやすくなります。
防水層の劣化を加速させる一因となるため、以下の点に注意して掃除を行いましょう。

• 排水溝やドレン周りのゴミ除去：排水経路が詰まると雨水が滞留し、防水層に負担がかかります。特に秋の落ち葉の季節は頻繁にチェックしましょう。
• 防水面の軽い掃除：ブラシやほうきでこまめに表面の汚れを取り除き、長期間の水分停滞やカビの発生を防ぎます。

日々の簡単な掃除でも、ウレタン防水の劣化スピードを遅らせる効果が期待できます。

専門業者による定期点検

専門業者による定期的な点検は、早期発見と適切な補修を行う上で欠かせません。
プロは目視だけでなく、必要に応じて下地の状態や防水層の厚み、接着状態などを詳細にチェックできます。
施工後は3〜5年を目安に一度は専門業者に点検してもらうことが理想的です。
特に築年数が経過した建物や、強風や豪雨の後は点検を推奨します。

信頼できる業者選びのポイント

ウレタン防水は、建物の寿命や安全性に直結する重要な工事です。
そのため、施工を依頼する業者選びは慎重に行う必要があります。
信頼できる業者を見極めるためのポイントを、具体的に解説します。

建設業許可や資格の有無

防水工事は建築の中でも特に技術力が問われる分野のため、その業者が防水工事を専門に扱っているかは重要なポイントです。
防水施工技能士といった資格や、建設業の許可を取得しているかの確認を行いましょう。
また、登録番号を照会すると、許可が有効かをチェックできます。

過去の施工実績や施工写真の提示

信頼できる業者は、これまでの施工実績や写真を積極的に公開しています。
現場写真やビフォーアフターがあることで、施工の丁寧さ・技術力が一目でわかり「自社施工」であるかどうかも見極めやすくなります。
また、実績が豊富であれば、さまざまな立地・形状・劣化状況に応じた柔軟な対応も期待できるでしょう。
「〇〇市のマンション屋上」など、地元での施工例があるかも安心材料のひとつです。

口コミ・レビューなど第三者評価の確認

実際に施工を依頼した他のお客様の評価は、業者選びにおいてとても参考になります。
SNSやホームページ上の声・施工後のアンケートなどを確認し、以下のようなポイントをチェックしましょう。

• 対応の丁寧さや説明の分かりやすさ
• 工期の正確さ、施工中の配慮
• 仕上がりに対する満足度
• アフターフォローの対応力

高評価が多数ある一方で、低評価の内容も確認することで、業者の弱点や対応姿勢が見えてくることもあります。

複数業者の相見積もりで比較検討

1社だけの見積もりでは、その価格や工法が適正かどうか判断が難しいため、必ず2〜3社以上に相見積もりを取ることが大切です。
見積書の明確さ・内訳の詳細さ・価格の妥当性・提案内容の違い・対応スピードやコミュニケーションの印象など、相見積もりを通じて比較できます。
極端に安すぎる業者は、後から請求されるケースもあるため注意が必要です。
価格だけでなく「内容に納得できるか」「丁寧な説明があったか」といった“対応の質”も比較基準に入れましょう。

丁寧な提案がある

ウレタン防水は現地の状況によって、最適な工法が変わります。
そのため、現地調査を行わずに出される概算見積もりは信用できません。
信頼できる業者であれば現地調査を行い、写真を交えて劣化箇所を説明してくれたり、建物に合った工法・材料を提案してくれたりします。
また、保証内容やアフターフォローについても明示してくれるでしょう。
こうした丁寧な対応は、施工後の安心につながる大きなポイントです。

見積もり依頼で確認すべきことは？

ウレタン防水工事は、建物の耐久性に直結する重要な工事です。
見積もりに不明瞭な点があるまま契約すると、工事内容や品質に対するトラブルに発展する可能性もあります。
以下の5つのポイントを押さえて、信頼できる業者を見極めましょう。

工法の明記

見積書には、どの工法で施工されるかが明確に記載されているかを必ず確認しましょう。
ウレタン防水には「密着工法」や「通気緩衝工法」などの種類があり、それぞれに特徴や費用・耐久性が異なります。
たとえば、通気緩衝工法は下地に湿気を含む可能性がある場合に適しており、耐久性も高くなりますが、その分コストも上がります。
逆に、密着工法はコストを抑えられますが、下地の状態によっては施工に不向きな場合もありるでしょう。
建物の状況に合った工法が選ばれているか、またそれが見積書に明記されているかをチェックすることが大切です。

使用材料の記載

使用されているウレタン防水材やトップコート材の製品名・メーカー名が明記されているかも大切な確認項目です。
品質の良い製品であれば防水性や耐久性も高く、信頼性のある施工につながります。
逆に、安価なノーブランド品が使われると、初期費用は抑えられても早期劣化やトラブルの原因となりかねません。

下地処理・補修の有無

見積もりの中に「下地処理」や「補修作業」の有無が記載されているかも、必ず確認しましょう。
ウレタン防水の品質は、塗布前の下地処理に大きく左右されます。
ひび割れや欠損・凹凸を修繕しないまま防水材を塗布しても、密着不良や膨れ、剥がれの原因になります。
これらの補修が「含まれているか」「別途費用なのか」「どの程度の処理がされるか」などを、事前に確認しておくと安心です。

保証内容・保証期間の確認

ウレタン防水には、施工後に一定期間の防水保証が付くのが一般的です。
しかし、その内容や年数は業者ごとに異なります。
例えば「施工不良による漏水に対して5年保証」など、どのような条件でどの範囲が保証されるのかをしっかり確認しておきましょう。
また、保証があるからといって安心せず、「保証書の発行」「点検サポートの有無」なども併せてチェックしておくのがおすすめです。

施工面積と単価の明示

見積もりでは、施工面積と1平米（1㎡）あたりの単価が明確に記載されていることが重要です。
また、総額だけでなく以下のような詳細な内訳が含まれているかをチェックしましょう。

• 高圧洗浄費用
• 下地補修費用
• プライマー塗布、ウレタン材の塗布回数
• トップコート施工
• 養生費・廃材処分費 など
  

内訳が曖昧なままでは、あとから追加料金が発生したり、安価な材料で施工されるリスクもあります。
見積書が「誰が見ても内容がわかる状態」になっているかが信頼の指標となります。

よくある質問（FAQ）

ウレタン防水工事を検討する際には、費用や工期・施工方法など、さまざまな疑問が生じるものです。
ここでは、ウレタン防水に関するよくある質問を紹介します。

まとめ

ウレタン防水工事は、屋上やバルコニーなどの防水対策として非常に有効な工法です。
液状の樹脂を用いて継ぎ目のない一体成形の防水層を作るため、複雑な形状にも柔軟に対応できるのが最大の特徴です。
特に100平米程度の屋上では、施工性・コスト・仕上がりのバランスに優れており、多くの建物で採用されています。

工法には「密着工法」「通気緩衝工法」などの種類があり、それぞれ適した用途や下地の状態が異なります。
費用も工法によって異なり、100平米あたり40〜80万円程度が目安でしょう。
また、工期は3〜10日ほどで、天候に左右される点にも考慮が必要です。

ウレタン防水を長く維持するには、信頼できる業者を選び、定期的なトップコートの塗り替えや点検を怠らないことが大切です。
建物の寿命を延ばし、快適な居住環境を守るためにも、適切な防水工事を計画的に進めましょう。