屋上の防水工事などでよく見かける脱気筒とは?
ウレタン防水やFRP防水でも密着工法などの際に起こる防水層の膨れなどを防ぐための役割を果たします。
そこで本記事は、防水工事で使用する脱気筒について解説します。
そのような事態を防ぐために防水工事を施すことで、建物を劣化から守ることが可能です。
防水工事では多くの資材を使いますが、脱気筒というものをご存じでしょうか。
そこで本記事は、屋上の防水工事で使用する脱気筒について解説します。
設置する理由や仕組みなどを紹介しますので、防水工事を考えている方に最適な内容です。
また、種類や工事の進め方についても触れますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
脱気筒とは?
脱気筒は、屋上の防水層と下地との間の水蒸気を排出する役割を持ちます。
筒状の見た目が特徴で、屋上をさまざまなリスクから守ってくれます。
防水層と下地に水蒸気が溜まると接着不良が起こり、シワが発生してしまうこともありますが、脱気筒を設置することで、防水層を安定させられます。
マンションの大規模修繕工事では基本的に脱気筒を新設しますが、約60~80平方メートルに1個設置するのが一般的です。
屋上は長期間メンテナンスを行わないケースも多いので、防水層が劣化する原因を取り除くことが大切です。
脱気筒を設置しなかった場合
脱気筒は、防水層と下地との間にある水蒸気を排出する役割があります。
もし脱気筒が設置されていなかった場合、次のようなことにつながります。
防水層に膨らみができる
防水層の中に溜まった水分は、温度の変化により蒸発します。
水分は蒸発すると体積が大きくなるため、防水層に膨らみを作ってしまい、フラットな面ではなくなってしまうでしょう。
亀裂や穴が開く
防水槽の膨らみができた場合、その分防水層は伸びてしまうため、他の部分と比べて強度が低下します。
そのままの状態では、劣化や歩行による摩耗によって亀裂や穴が開いてしまう可能性もあります。
防水槽が膨らんだ状態は防水層へ直接的なダメージを与えてしまうため、そのままの状態であると防水槽から水分の侵入を許してしまいます。
そうなると防水機能が働かなくなるため、事前に脱気筒の設置が推奨されています。
脱気筒の種類
防水槽の機能を守るのに重要な脱気筒は、さまざまな種類があります。
屋上の環境や使用目的に合わせて選ぶ必要がありますので、適切なものを選ぶことがポイントです。
ステンレス製
ステンレスの脱気筒は、光沢のあるデザインで錆びにくいです。
熱への強さを保ちながら加工しやすく強度があるため、長期間の使用にも耐えられます。
雨や紫外線の影響を受けやすい屋上において、ステンレス製の脱気筒を使うメリットは大きいです。
また高温になる設備の近くでも、ステンレス製なら問題なく設置できるでしょう。
アルミ製
アルミ製の脱気筒は、軽量で腐食に強い特徴があります。
ステンレスと比べると耐久性は低めですが、腐食を防ぐために酸化皮膜をアルマイトで加工しています。
また、他の金属を混ぜられたアルミ合金製の脱気筒もあります。
リーズナブルなため、コストを抑えられるでしょう。
塩化ビニール製
塩化ビニール製の脱気筒は、耐久性が高く耐用年数は50年以上とも言われます。
電気を通さずさまざまな化学薬品への耐性があるので、化学薬品を扱う建物での使用にも適します。
また塩化ビニール製の脱気筒は、塩化ビニールを使った防水工事と組み合わせて使われることが多いです。
またステンレスやアルミ製の脱気筒より、リーズナブルに施工できる点もメリットです。
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脱気筒の設置に適した防水工事の種類
脱気筒の設置は、防水工事の工程として設置されますが、どのような工事に利用されるのでしょうか?
防水工事にはさまざまな種類があるので、それぞれ紹介します。
ウレタン防水通気緩衝工法
ウレタン樹脂を使い、防水層を作る方法です。
脱気筒のほか通気緩衝シートやメッシュシートなどが使われており、脱気筒や通気緩衝シートによって水蒸気を外部へと排出します。
この工法は施工難易度が高いため、豊富な経験や知識が必要です。
ウレタン防水には、ウレタン樹脂を下地に直接塗る「密着工法」もありますが、密着工法は脱気筒を設置する場合に使いません。
シート防水
シート防水は、塩化ビニールまたはゴム製のシートを敷く防水工事です。
高い耐久性とリーズナブルな費用が特徴であり、脱気筒の設置の有無に限らず施工が可能です。
基本的にシートから水蒸気が抜けるので、脱気筒の設置は必須ではありませんが、屋上の状況や下地の状態などによって決められます。
またシート防水には、密着工法・機械的固定工法の2種類の工法があります。
密着工法は、接着剤を使って下地に直接シートを貼り付けます。
機械的固定工法は、下地に設置した固定ディスクにシートを固定する方法で、下地と接触しないため、下地からの影響を受けにくいです。
FRP防水
ポリエステル樹脂・硬化剤の混合物・ガラス繊維などを組み合わせた「繊維強化プラスチック」を使い、防水層を形成する工事です。
施工費用が高めで硬化後は柔軟性がなくなるため、伸縮性のある木造住宅への施工には適しません。
しかし、強度の高い防水層を形成できるため、さまざまな場所で利用されており、継ぎ目のないきれいな仕上がりが特徴です。
また、硬化速度が早いので、工期の短縮につながります。
脱気筒を取り付ける場所
防水工事に使われる脱気筒は、建物の高い位置に取り付けるのが基本です。
温められた水蒸気は低いところから高いところへ移動するため、脱気筒はその性質を利用できるように取り付けます。
そのため、床面の最も高い場所・日照時間が長い場所・コンクリートの目地部分に使われることが多いです。
また、塗膜防水の場合は通気シートに穴を開けて、シート防水の場合は防水層に穴を開けて脱気筒を取り付けます。
脱気筒の施工方法
脱気筒は、どのように施工するのでしょうか。
設置場所や防水工事の種類などによって、施工方法は変わります。
ウレタン防水通気緩衝工法における、脱気筒の施工法について解説します。
- STEP
既存のドレンの撤去
まずは、雨水の排出で使われるドレンの撤去です。
基本的に防水層とドレンの改修工事は、一緒に進められます。
- STEP
既存の防水シートの撤去
必要があれば、既存のシートを撤去しましょう。
シートに劣化が見られない場合は、既存のシートをそのまま利用します。
- STEP
ケレン・下地調整
施工前は、準備が必要です。
施工面の汚れを取り除き、地を整える作業はをケレンといいます。
ケレンを丁寧に行うと下地が平らになり、防水工事の施工品質がアップします。
- STEP
プライマーの塗布
整えた下地の上にプライマーを塗布します。
プライマーを塗っておくと、その上に設置する防水層が剝がれにくくなるため、防水層を長持ちさせられます。
- STEP
防水シートの敷き込み
裏面に粘着力のある防水シートを敷きます。
シートのジョイント部分は1センチほどで、端部は5センチほど隙間を開けてシワができないように敷きます。
- STEP
メッシュテープの貼り付け
防水層の強度を高めるために、メッシュテープを貼り付けます。
防水層の継ぎ目をはじめ、強度が落ちやすい場所をメッシュテープで補強します。
端部にテープを貼る際は、通気シートと下地の間に隙間ができないようにするのがポイントです。
必要があれば、シーリング材も充填して隙間を埋めていきます。
- STEP
改修ドレンの取付け
新しい改修ドレンを取り付けます。
しっかり雨水を排出できるように、ドレン周囲の調整も必要です。
- STEP
脱気筒の設置
屋上の勾配を確認し、脱気筒を高い位置に設置します。
防水層の上に脱気筒を取り付け、脱気筒と防水層を一体化させましょう。
専用のアダプターやシール材などを使い、丁寧に脱気筒を設置していきます。
- STEP
入隅シールの充填
壁際の隅である入隅部分に、入隅シールを充填していきます。
この工程により建物内部に水が侵入するのを防げるので、さらに防水性能が高まるでしょう。
施工の際はヘラを使って、漏れなくシール材を充填します。
- STEP
ウレタン樹脂の流し込み
防水層の上にウレタン樹脂を流し込みます。
脱気筒と防水層の間もしっかり埋まるので、雨水の侵入を防げます。
また施工後は、ウレタン塗膜を2.0mmほどにします。
ウレタン樹脂は2~3回塗り重ねるのが一般的ですが、1度に塗り重ねると施工不良が発生するので、1回塗ったらしっかりと乾かし、次の校庭へ移ります。
- STEP
トップコートの塗布
仕上げにトップコートを塗ります。
トップコートには紫外線や外部刺激から防水層を守る働きがあり、防水層の耐用年数を高めるために、トップコートは欠かせません。
標準的なトップコートはアクリル系ですが、耐久性の高いフッ素系や遮熱効果を持つトップコートもあります。
トップコートを塗り終わったら、脱気筒の設置は完了です。
脱気筒は屋上の防水層で重要な部品
脱気筒は、屋上の防水層と下地との間の水蒸気を排出する役割があります。
設置方法・特性・種類などは、以下のとおりです。
- 一般的には約60~80平方メートルに1個、脱気筒を設置する
- 脱気筒が設置されていない場合、防水層と下地との間の水分が蒸発して膨脹し、防水層に膨らみができる
- 水蒸気は防水層だけではなく、下地の劣化も招く
- 脱気筒には「ステンレス製」「アルミ製」「塩化ビニール製」の3種類がある
- 脱気筒を使った防水工事が適しているのは「ウレタン防水通気緩衝工法」「シート防水」「FRP防水」
- 脱気筒は、建物の高い位置に取り付けられる
- 脱気筒を取り付けでは、塗膜防水であれば通気シートに穴開けし、シート防水では防水層に穴を開ける
- 脱気筒を施工する際は既存のドレン撤去から始まり、下地を整えたうえで脱気筒を設置する
- 仕上げのトップコートを塗ると、防水層の耐用年数を延ばせる
屋上防水の強度を保つためには、脱気筒が欠かせません。
適切なメンテナンスを行うことが大切なので、定期的に確認しながら、状況に合わせて工事の計画を立てましょう。
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