新築で建設されたマンションも、年月の経過とともにだんだんと劣化が進んでいきます。
安心して住み続けるためには修理が欠かせませんが、戸建て住宅に比べて建物の規模が大きいだけに、どのくらいの修理費用がかかるのかが気になるところです。
さらにマンションは大勢の人が集まって暮らす集合住宅ですので、全ての住人が修繕内容とその費用に納得できる方法を模索しなければなりません。
少しでも疑問を抱えたままで修理に取り掛かると、後になって費用の増額が発生した際、住人の負担が増すだけでなく不満を抱えることになりかねないからです。
そこで今回は、マンションの修理で行われる修繕の内容と、費用負担を抑える方法について解説いたします。
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目次
マンションで修理費の発生する工事
マンションで修理費の発生する工事は、大きく3つに分けられます。
大規模修繕
大規模修繕は、12年ごとに行われる工事です。
大掛かりな工事を行う理由は、安心して住める快適な住環境の確保のほか、マンションの資産価値を下げないことも含まれます。
大規模修繕を行わないと建物の劣化が進み、大幅に資産価値を下げることも少なくないからです。
そのため、定期的に大規模修繕を実施し、住人の住環境を守るとともに、資産価値も維持しています。
小規模修繕
主に劣化を防ぐことを目的に行う、小規模な修繕工事です。
小規模修繕の特徴は工事を行うだけでなく、定期的に劣化していないかどうかを見て回ったり、耐震についての調査を行ったりすることです。
屋根・外壁の損傷、シロアリが発生していないかをチェックすることによって、建物が劣化する要因を早めに発見しています。
劣化が見つかった場合は工事を行わなければなりませんので、5年から10年を目安に定期点検を実施するのが特徴です。
原状回復
原状回復は、入居者の退去に伴って行われる工事のことで、貸主または借主が負担します。
生活していく中で発生するクロスやフローリングの日焼け、傷といった修理費用は貸主の負担です。
一方でタバコのヤニによる黄ばみや落書きの跡、通常の生活では起こりえない損傷については、借主側の負担で修理を行います。
ただし、借主の修理費用は入居時に支払った敷金を用いることが大半で、余ったときには返還されます。
適切なタイミングで修理をするための積立金
マンションの修理で発生する費用のうち、大規模修繕と小規模修繕は居住者が平等に負担します。
そのため、修理を行うタイミングに合わせて、あらかじめ積立をしておくのが大切です。
大規模修繕ともなれば高額の修理費用が発生する可能性があり、小規模修繕といえども工事の内容によってはまとまった費用が必要になると考えられます。
積立金を用意していなければ一時金を徴収するしかなく、中には対応が困難な方も出てくるでしょう。
公平に修理費用を負担するには、常に「いつかは修理が行われる」との前提に立って、毎月の積立金をためていくことが重要です。
大規模修繕と小規模修繕を実施するタイミングを基準に月々の積立金を割り出し、計画通りに積み立てができているかを定期的に確認しておきましょう。
マンションの施工箇所によって異なる修理費用
大規模修繕・小規模修繕のどちらの工事も、施工にかかる修理費用はさまざまです。
したがって、マンションの修理が必要な施工箇所を把握しておくと、修理費用の予算を立てるのに役立ちます。
大規模修繕工事における修理費用
下記はマンションの大規模修繕工事の施工箇所と、全体の費用総額の中でどのくらいの割合を占めているかを表した一例です。
大規模修繕を行う際はあらかじめ計画を立て、トータルで工事の指揮・管理する必要があることから、コンサルタント会社に任せるケースも少なくありません。
そのため、コンサルタント会社に支払うコンサルティング料がかかってきます。
共用部の設備には電灯・ガス・エレベーターなどがあり、設備の修理にかかる費用は全体の1%程度です。
ただし、共用部の設備が充実している場合は、それだけ修繕時の修理費用も増えていきます。
とはいえ、共用部は居住者の快適さ・安全に直結することですので、きちんとした修繕工事が必要です。
小規模修繕工事における修理費用
小規模修繕工事は、予期せぬ災害や劣化が見つかった時に行います。
施工箇所となりやすいのは、下記の場所です。
- 屋根
- 天井ボード、波板
- パーテーション
地震・台風・豪雨といった自然災害は、屋根に損傷をもたらします。
また、天井ボードの剥がれ・波板の破損、住居を隔てるベランダのパーテーションが割れることもあります。
被害の被り具合によって修理費用は大きく変動するため、予測しにくいのが特徴です。
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入居や退去時の原状回復で発生する修理費用
マンションでは、退去時に「原状回復」と呼ばれる修理工事が行われます。
工事費用は貸主が支払うものと、入居時に借主が支払った敷金が使われるケースとに分かれるのが特徴です。
貸主が負担する原状回復工事
貸主による原状回復の主な修理内容は、以下の通りです。
- 壁、天井の塗装
- 床のクリーニングおよび補修
- 水アカ、カビのクリーニング
- キッチンに付着した汚れのクリーニング
- 照明器具の取り外し
- 空調設備の点検、修理、交換
- 設置済み機器の交換、修理
日々の生活を送る中で発生する塗装の剥がれ・傷・汚れのクリーニングと補修は、貸主の負担によって行われます。
また、もともと部屋に備えつけられた生活設備の原状回復も、貸主の負担です。
借主が負担する原状回復工事
借主が負担する原状回復工事の内容のうち、主なものは以下の通りです。
- 借主が貸主の承諾を得て取り付けた機器の取り外し、撤去処分
- 喫煙によるヤニの汚れ、焦げ跡など
- 落書き
- 通常の生活では起こりえない壁や床のへこみ・傷・汚れ
入居の際に「マンション内は禁煙」と知っていたにもかかわらず喫煙していた場合、喫煙に伴う汚れの修復は借主の負担で行われます。
また、通常の生活では起こりえない壁や床のへこみ・傷・汚れは「故意につけたもの」と判断され、こちらも借主の負担です。
これらの原状回復工事は入居時の敷金でまかなわれますが、敷金だけでは足りないときには、貸主から追加費用を請求されます。
注意点
退去時の原状回復費用を敷金から使用するにあたっては、マンションごとに異なる規定が設定されています。
そのため、入居時に敷金を支払う際は、退去時の原状回復に伴う修理費用に使われるのかどうかを確認しておくとよいでしょう。
原状回復工事に関する注意点を修理費用と絡めて確認しておくと、退去する際の原状回復工事にまつわるトラブルを避けることにつながり、安心して入居できます。
マンションの修理費を抑える方法
工事を行うにあたって、修理費を抑えることが入居者の負担軽減につながります。
マンションの修理費を抑えるには、以下の要素がポイントです。
入居者審査
入居希望者を事前にしっかりと審査することによって、適切な入居者を選定することが可能です。
マナーの良い入居者であれば、部屋を傷つけたり汚したりすることなく過ごしてくれる可能性が高いでしょう。
物を丁寧に扱わなければ、エアコン・給湯器・ガスコンロといった設備機器が壊れてしまう場合もあります。
退去時は敷金を使って部屋の修繕を行いますが、修理する所は居住部分にとどまらず、共用スペースにも及ぶ可能性もあるでしょう。
敷金だけでは払いきれなかったとしても、修理費用の支払いを要求する場合もありますので、入居審査はしっかりと行うことが重要です。
マナーの良い入居者であれば、居住スペースと共用スペースのどちらにおいても丁寧に使用することから、修理費用がかさむ心配がありません。
定期的な修繕の実施
日頃から定期的に点検を行い、不具合が見つかった際は早急に修繕をすることで、軽微な修理工事で済む場合があります。
例えば、壁に小さなひびが見つかった時点で補修工事を施せば、軽い修理で済むでしょう。
そのまま放置しておくと広範囲にわたって壁にひびが入り、大規模な補修工事が必要となってしまいます。
定期的にマンションを目視で点検して回り、必要に応じて修理を施すことが、費用を抑えるのに効果的です。
優良な修繕業者を選ぶ
修繕業者を選ぶ際のポイントは、適正価格で請け負う優良業者かどうかです。
修理費用を抑えたいあまりに安さを重視して修理業者を選ぶと、手抜き工事が行われたり追加で費用を請求されたりと、トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
手抜き工事はマンション住人の安全を脅かす要因ですし、追加費用の請求によって修理費用が不足することも考えられます。
積立金が不足したために一時金を徴収するとなれば、入居者から不満の声が上がるのは必至です。
修理の安さに目を奪われるのではなく、確実な修繕工事を納得のいく価格で行う業者を選びましょう。
まとめ
マンションは、年月の経過・使用状況によって確実に劣化していきますので、安心して住み続けるには定期的な修繕が必要です。
そのためには、マンションで行われる工事の種類ごとに、どのくらいの費用が発生するのかを把握しておくことが大切です。
- マンションでの修理費用は主に大規模修繕、小規模修繕、原状回復の3つに分かれる
- 修理費用の中でも大規模修繕と小規模修繕は居住者が平等に負担し、積立金の準備が重要
- 修理費用を抑える方法として、入居者審査・定期的な修繕の実施・優良な修繕業者の選定が必要
- 入居者審査ではマナーの良い入居者を選ぶことで、修理費用を軽減できる可能性がある
- 定期的な点検と早急な修繕は、軽微な修理で済ませることができ、費用を抑える効果がある
- 優良な修繕業者を選ぶことで、適正価格で確実な修繕工事が行われ、トラブルを避けることができる
日頃から修繕工事のスパンについて話し合い、工事の具体的な内容や費用を明確にしておけば、いざというときに慌てなくて済むのではないでしょうか。
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