ビルやマンションなどの建物は、多くの人が安心して生活を送れるよう頑丈に作られています。
しかし、年数の経過とともに様々な部分が劣化していくため、その強度を維持するにはメンテナンスが必要です。
定期的なメンテナンスは大規模修繕工事と呼ばれ、十数年単位で行われいますが、どのような内容が含まれているのでしょうか。
そこで本記事では、大規模修繕工事に関する定義・費用・タイミングなどについて解説します。
大規模修繕工事に関わる方にとって大切な内容を掲載していますので、最後までぜひ参考としてご覧ください。
目次
大規模修繕の概要
大規模修繕とは、建物の劣化や老朽化に対して行われる工事のことです。
主に大規模修繕で行われる工事内容は以下のようなものが挙げられます。
- 外壁や屋根の補修、改修
- 鉄部やコンクリートの補修、改修
- 雨水・排水管の改修、設置
- エレベーターや給排水設備の更新
- 防火設備の更新
- 共用部分の改装や修繕
大規模修繕の定義
大規模修繕の定義は「建設当初の水準まで状態を元に戻すこと」です。
大規模修繕の定義について、国土交通省のガイドラインでは以下のように考えられています。
・大規模修繕は「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が「大規模」工事費が「高額」「工事期間が「長期間」にわたるもの等をいう。
※出典:長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 国土交通省
また、大規模修繕の定義は建築基準法第2条14号および15号で以下のように記されています。
・建築物の主要構造部 ( 壁、 柱 、床 、 はり、 屋根 、 階段 )の一種以上について行う過半の修繕、 模様 替え」と定義され、例えば6本の柱のうち4本を修繕 すれば、大規模修繕とされる。また、瓦葺の屋根を 全面金属板葺きに変更する行為は、大規模模様替 とされる。
大規模修繕には「安全性の維持・向上」や「資産価値の維持」に効果が期待できる工事です。
大規模修繕には、維持管理法と言うマンション等の建物の維持管理に関する法律が適用されます。
建物の健康を保ち、利用者のリスクを削減するためにも、一定の周期で行うことが望ましいです。
大規模修繕が必要な理由
大規模修繕が必要な理由は以下のようなものが挙げられるでしょう。
劣化・老朽化を防ぐ
安全性の維持・向上
資産価値の維持・向上
建物の寿命を延長させる
建物は建設当初から徐々に劣化・老朽化が進みます。
多くの方々が数年にわたって長期的に利用すればこれは仕方のないことでしょう。
そのため、周期的に劣化や老朽化を防ぐためにも大規模修繕が必要となります。
また、建物自体の劣化・老朽化は建物の美観に影響したり、安全性に問題が生じる場合もあります。
加えて、このような状態は資産価値や、利用者・入居者減少の原因にも繋がるでしょう。
必要なタイミングで大規模修繕を行うことは建物の寿命を延長させることにも繋がります。
対象となる建築物の種類
大規模修繕の対象となる建築物は、以下のようなものが挙げられます。
- マンション・アパートなどの集合住宅
- 商業施設
- ビル
- ホテル など
大規模修繕と聞くとマンションについて語られるサイトも多いですが、点検・修繕の頻度や内容は異なるものの、オフィスが入るビルやホテルも大規模修繕の対象となる建築物です。
一般的な大規模修繕のサイクル
大規模修繕工事は建物の経年劣化に対応し、資産価値を維持・向上させるため定期的に行います。
竣工後は12〜15年目に1回目、2回目以降は10〜12年が目安です。※1
ただし、建物の立地・使用状況・気候条件などにより、このサイクルは変動します。
例えば、海岸沿いの建物は塩害の影響で劣化が早まる傾向があり、その際はより短いサイクルの修繕が必要です。
一方、内陸部の気候が穏やかな地域では、標準的なサイクルより若干長めに設定できる場合もあります。
この計画は通常30年先までを見据えて作成され、5年ごとに見直しが行われます。
長期修繕計画には、各部位の修繕周期・概算費用・修繕積立金の推移などが含まれており、管理組合にとって重要な指針です。
適切な長期修繕計画を立てることで、修繕積立金の適切な設定や工事の優先順位付けができるため、効率的な建物管理が実現します。
また、突発的な大規模支出を避け、居住者の金銭的な負担を抑える効果もあります。
※1 出典:長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 国土交通省
大規模修繕工事の工事内容
大規模修繕工事には、さまざまな工事が該当します。
外壁補修・塗装工事
建物の外観を美しく保ち、耐久性を向上させるための工事です。
ひび割れや浮きなどの損傷箇所を補修し、防水性能を高めます。
補修後に建物全体へ塗装を施すことで、美観の向上と保護機能の強化を図ります。
防水工事
屋上・バルコニー・外壁など、建物の様々な箇所で行われる工事です。
既存の防水層を撤去し、新しい防水材を施工することで、建物内部の保護機能を強化します。
特に屋上やバルコニーは風雨の影響を受けやすいため、入念な施工が必要です。
鉄部塗装工事
手すり・ドア枠・階段など、建物の鉄部は錆びやすく定期的な塗装が欠かせません。錆を除去し、防錆処理を施した後に塗装を行うことで、耐久性を高めながら美観を維持します。
共用廊下・階段改修工事
集合住宅の共用部分である廊下や階段は、日々の使用で劣化が進みやすい箇所です。
床材の張り替え・手すりの交換・天井や壁の塗り替えなどを行い、安全性と快適性を向上させます。
また必要であれば、バリアフリー化も実施します。
大規模修繕の計画と進行
次は実際に大規模修繕を行う上で大切な手続きの概要や「計画」と進行の流れについて解説します。
- 大規模修繕の手続きの概要
- 修繕計画の策定
- 見積もりの比較と選定
- 適切な業者の選び方
大規模修繕の手続きの概要
大規模修繕の手続き概要は以下のとおりです。
- 建物調査
- 修繕工事計画の策定
- 修繕工事計画の承認
- 修繕工事の実施
ここでは建物調査について解説します。
建物調査は、これから大規模修繕を実施するにあたって最初に行う作業です。
管理組合が選定した診断業者や、設計事務所のコンサルタントなどが調査を担当します。
調査内容としては「現状の建物で修繕が必要な箇所はどこか」という点や「どの範囲まで修繕を行うか」「どのような修繕を行うか」などを調査して、大規模修繕工事の内容を決定します。
このとき、調査結果をもとに今回実施する大規模修繕に必要となる費用の見積もりも算出します。
修繕計画の策定
建物の調査と見積もりの算出を終えた後は、修繕計画の策定です。
具体的な例を出すと以下のようなものが修繕計画の策定に該当します。
- 建物の状況調査を行い、修繕工事が必要とされる箇所を評価する
- 今回の大規模修繕で必要とされる工事範囲と内容を決定する
- 大規模修繕に必要な設備や建築素材、工法を決定する
- 大規模修繕のスケジュールを決定する
- 費用の見積もりを算出して専門家へ助言を仰ぐ
- 大規模修繕計画書を作成する
すべての工程がとても重要なものとなりますが、中でも大規模修繕のスケジュールは管理組合や業者、建物の利用者・入居者のスケジュールも考慮する必要があります。
大規模修繕は数週間の短期で終わらせられるものではないので、この期間は利用者・入居者に対して制限をしいらなければならないので、しっかりと説明を行い納得してもらわなければなりません。
また大規模修繕計画書は住民総会やオーナー総会で提出し、承認を得る必要があることから大規模修繕に関連する方々との円滑なコミュニケーションも必須です。
見積もりの比較と選定
修繕計画の策定がまとまった後は、見積もりの比較と選定を開始します。
大規模修繕のように1回の工事で高額な費用がかかる場合、複数の業者への一括で見積もりを行い、その中から業者を選定すると良いでしょう。
また、実際に見積もりを比較する際のポイントは以下のとおりです。
- 料金
- 工事の範囲
- 専門家など第三者の意見を取り入れ参考にする
大規模修繕と言っても業者によって料金は異なります。
加えて、1回の工事がどの程度の範囲で行われるかもチェックポイントです。
その他にも、見積もりを比較する際は専門家など第三者にも一度目を通してもらい、意見をもらいながら業者の選定を行いましょう。
なるべくコストを削減して大規模修繕を行いたい場合は、複数の業者へ見積もりを取ることで相手に対し交渉する際にも役立ちます。
例えば工事をお願いしたいけれど他の業者と比べて費用が高めである場合「他の業者さんではこの位の費用だった」など、事前に複数の見積もりを取っておくことで、こちらに有利な条件で交渉することもできるでしょう。
適切な業者の選び方
適切な業者を選ぶことは、円滑に修繕を進め、満足の行く仕上がりを得られる可能性が高まります。
安易に料金だけに着目して業者を選定すると、何らかのトラブルが発生する可能性もあるでしょう。
適切な業者を選ぶ際は以下のポイントを意識して選ぶことをおすすめします。
- 業者に関する情報収集を行う
- 見積もり内容を複数の業者と比較する
- 信頼性の確認
- 大規模修繕に関する実績
- 保険への加入やアフターケア
適切な業者を選ぶためには、業者に関する情報収集がとても重要です。
情報収集には、過去に大規模修繕を依頼した経験がある方々の口コミなどを利用します。
また複数の業者から見積もりを取って、料金や工事内容、工事範囲などを徹底的に比較して優良な業者を選べるように意識することも大切です。
その他にも、業者が登録している法人番号や、監督者の人柄、大規模修繕に関する実績など、業者が本当に信頼できるかどうか、信頼性の確認も怠ってはいけません。
信頼性の観点で言えば「瑕疵保険」などの保険への加入や修繕工事後の定期点検などアフターケアに対応しているかもチェックしておくともしもの場合も安心です。
このように、適切な業者を選ぶ際には料金の安さだけではなくさまざまな観点から信頼できる業者を見極めるひと手間が大切になります。
工事実施のスケジュール管理
大規模修繕を行う際は、工事実施のスケジュール管理も忘れずに。
スケジュール管理を適切に行うポイントとして「見やすいスケジュール表の作成」がおすすめです。
各作業の担当者とスケジュールを共有することで円滑に修繕工事を進められます。
またスケジュール管理を徹底することで、工事の進行においてトラブルが発生した場合も迅速に対応できますし、定期的に進捗を確認する上でも役立つでしょう。
特に、工事には様々な工程がある中で繁忙期や天候の影響などスケジュールを変更しなければならないケースが訪れることを考慮して、柔軟な対応が求められます。
その他にも、工事実施のスケジュール管理には工事に関わる方々とコミュニケーションを密に行い、情報共有を怠らないよう日常的に意識しながら進めていけるように意識することが大切です。
大規模修繕にかかる費用
次は、大規模修繕にかかる費用について以下のポイントを解説していきます。
- 大規模修繕の費用
- 費用の見積もり方法
- コスト削減のアプローチ
- 助成金や補助金の活用法
大規模修繕の費用
大規模修繕の費用は、建物の規模・築年数・立地条件・工事の範囲によって大きく異なります。
大規模修繕にかかる費用は一戸に対して100万円〜125万円※1の割合が多く、高層マンションや大規模なマンションでは、この金額を上回ることもあります。
費用の内訳としては、外壁補修・塗装・防水・給排水設備の更新などが大きな割合を占めており、足場の設置や仮設工事などの費用も欠かせない部分です。
これらの費用は、計画的に積み立てられた修繕積立金から支出されるのが一般的ですが、十分な積立金がない場合は、一時金の徴収や借り入れなどの対応が必要な場合もあります。
※1 出典:令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査 国土交通省
費用の見積もり方法
費用を見積もる際、最初に行うことは「見積もり対象となる工事の範囲を明確にすること」です。
大規模修繕の場合、修繕に必要な工事内容や建築材料、人件費などを予め把握しておきます。
また計画書や設計図を作成・入手して「工事内容や仕様・数量・寸法の確認」や、工事に必要な建築材料や人件費、外注費、諸経費も算出しておきましょう。
正確な費用を求めるためには、税金や保険料、消費税を含めた金額の算出も重要です。
これらのステップの最後に、今回の大規模修繕で必要となる最終的な支出をまとめて見積書を作成します。
適切に費用を見積もることは、工事の予算管理やスケジュール管理を円滑に進めることへ繋がります。ぜひ覚えておいてください。
コスト削減のアプローチ
大規模修繕工事のコストをできるだけ削減するためのアプローチ方法には以下3つがあります。
- 積立金利用
- 一括見積もり
- 部位別見積もり
1つ目の積立金利用とは、「修繕積立金の利用」を指すケースが多いです。
修繕積立金とは、マンションやアパートなどで管理組合が入居者に対して徴収するお金です。
メジャーな徴収方法としては家賃の中から修繕積立金として徴収する方法が挙げられます。
金額に関しては修繕計画の内容によって異なるので、一概には言えませんが専有部分面積が1㎡あたりでおおよそ200円が徴収されます。
この修繕積立金は、建物や設備の劣化や老朽化が進行して修繕が必要となった場合に活用できますが、「いつ」「どのように」使用するかは管理組合の判断となるので、修繕積立金を利用して大規模修繕を行いたいと考えている場合は、一度入居者に対する説明を行うことが大切です。
また近年、修繕積立金の賃上げについてのトラブルがよく報告されています。
大規模修繕は1回の工事で高額な費用が必要となるので、入居者からの積立金を積み立てていても費用がまかなえないという場合も少なくはないでしょう。
しかし、入居者に対して明確な説明もないまま修繕積立金の賃上げを行うと「いきなりの値上げは困る」「工事のコストを抑えれば良い」などの反対意見が多数寄せられる可能性もあります。
これらのトラブルを避けて、効率よく修繕積立金を活用するためには入居者への説明と、目視で使用用途が理解できるような工夫も必要となります。
2つ目の一括見積もりは、見積もりを一括で行うことで必要なコストを削減する方法も有効です。
例えば最近インターネット上で見かける無料で一括見積もりを行えるサイトは複数の業者へ一括で見積もりを行えることや、単体で見積もりを依頼するよりも安く済みます。
専門家に見積もり依頼を行う場合、安いとは言えない依頼料を支払わなければならない場合もあります。最近では無料で一括見積もりを行えるサイトもありますのでチェックしてみてください。
3つ目の部位別見積もりは「外壁」や「内装」「設備」など部位ごとに必要となる工事内容とかかる費用を見積もる方法です。
部位別見積もりは「どの部位に」「どれだけの費用がかかるのか」を明確化させられるので、大規模修繕工事の優先順位や期間を決定しやすいというメリットがあります。
また、部位別見積もりを複数の業者で行うことで適正な金額で業者を選べる点もメリットでしょう。
助成金や補助金の活用法
修繕工事には、国や地方自治体などから助成金や補助金がもらえる場合があります。
例えば東京都の千代田区では、劣化診断補助事業の一つとして「マンション劣化診断調査費助成」※1と呼ばれる助成が受けられます。
これは建物調査に併せて、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインに基づいた計画書の作成、見直しを行う際の費用も助成してもらえるなど、活用して損のない助成制度です。
この他にも、東京都港区では、マンションの適正な管理・計画的な修繕を促進するために、建物の管理組合などに対して専門家の派遣や劣化診断に必要となる費用を助成してもらえる制度もあります。※2
また、大規模修繕に活用できる補助金制度として東京都墨田区や江東区、台東区などの多くの区では「分譲マンション計画修繕支援制度」と呼ばれる建物調査費用の一部を補助してもらえる制度も。
これらの助成金・補助金を支給してもらうためにはそれぞれの制度で決められている条件をクリアする必要があります。しかし活用できれば大規模修繕のコスト削減へ大いに役立ってくれるでしょう。
助成金や補助金制度の内容は、国や地方自治体によって異なります。
気になった方はお住まいの地域で活用できる制度はないかチェックしてみましょう。
※1 出典:千代田区の外郭団体 公益財団法人まちみらい千代田 マンション再生支援
※2 出典:港区 分譲マンション等管理支援事業
最適な大規模修繕のタイミング
大規模修繕には周期的な目安があるものの、適切なタイミングは建物によってそれぞれ異なります。
ここでは、最適な大規模修繕のタイミングを解説します。
修繕時期の決定基準
修繕時期の決定基準は以下のようなものが挙げられます。
- 築年数
- 耐用年数
- 定期点検の結果
国土交通省のガイドライン「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、一般的にマンションなどの建物は築年数が15年経過するごとに大規模修繕が必要と考えられており、これはマンションの構造や使用されている建築材料によっても異なるでしょう。
また建物や設備にはメーカーが定めている耐用年数がありますので、この時期を過ぎる頃には1度点検や大規模修繕が必要になります。
その他にも、経常修繕の1つである定期点検で建物や設備に劣化や老朽化が確認できた場合など、点検結果に基づいて修繕時期を決定する基準とする場合もあります。
建物や設備の状態を常に把握し、適切なタイミングで修繕を行うことで、住民や利用者の安全はもちろん、資産価値の維持にも繋がるでしょう。
季節や気象条件の影響
大規模修繕のタイミングは季節や気象条件の影響も考慮して決定する必要があります。
例えば、雨漏りの修繕や外壁の塗装など屋外で行う大規模修繕の場合、梅雨の時期は天候が不安定になるので工事の進行が遅れる可能性があります。
また冬の厳しい寒さや、夏の暑さなど実際に現場で工事を行う作業員の健康状態に対して特に配慮が必要な時期は大幅にコストがかかりやすくなる時期と言えるので避けた方が賢明でしょう。
その他にも、大規模修繕は建物に住む入居者や利用者の協力が必要となります。
例えばファミリー世帯が多いマンションでは、卒業入学などが重なる春は非常に多忙となるので、ちょっとしたことがクレームやトラブルに発展する可能性も考えられます。
このように、双方が気持ちよく大規模修繕を行える時期を見極めて適切に選択することが大切です。
大規模修繕での問題対策
大規模修繕工事中はさまざまな問題(トラブル)が発生しやすくなります。
ここでは、大規模修繕工事の進行中と完了後に起こりやすいトラブルを紹介し、問題(トラブル)が発生した場合の対処法を解説していきます。
工事進行中のトラブル対策
工事進行中によくあるトラブルは以下のとおりです。
- 当初は予定していなかった追加工事が発生する
- 天候不良などのトラブルによる工期の遅れ
- 工事の進め方や仕様に関する意見へ相違が生じる
- 入居者や利用者からのクレーム
大規模修繕工事を実施する際、現場の状況によっては追加で工事が発生する場合もあります。
追加工事が発生すると工期の延長や費用の増加などのトラブルに発展しやすくなるでしょう。
また天候不良や、予期せぬ事故などのトラブルによって当初予想していた工期よりも長引く可能性がないわけではありません。しかしこれは予想外のトラブルとなりますので対策が難しいです。
その他にも実際に大規模修繕を実施した結果、管理組合と現場で働く業者の間で工事の進め方や仕様に対する意見の相違が生じるケースもあります。
加えて、騒音や振動、通行の妨げなどによるクレームが入居者や建物の利用者、そして近隣に済む住民から寄せられることも考えられるでしょう。
これらのトラブルを防ぐためには、事前の建物調査を徹底することや、もしもの場合が起きても余裕を持って工事を進められるようスケジュールを調整するなどの対策が有効です。
また、業者や管理組合員同士の意見が相違を起こさないよう、しっかりと話し合い、双方が納得をした上で大規模修繕を進めていく必要があります。
住民や利用者からのクレームに関しても、大規模修繕に関する説明会を事前に開催して理解と協力を要請するなど、適切なコミュニケーションを取ることで防げる可能性は高まります。
工事完了後のトラブル対策
工事完了後によくあるトラブルは以下のとおりです。
- 施工不良による問題発生
- 工事後のメンテナンス不足による問題発生
- 建物の変化による住民や利用者からの不満
大規模修繕工事中、業者による何らかの施工不良が原因で工事後に問題が発生する場合があります。
例えば屋根からの雨漏りや設備の不具合などが問題として挙げられるでしょ。
その他にも、外壁塗装によって外観の美しさを取り戻したはずが、実際には工事開始前と何ら変化を感じられず、再度別の業者へ依頼するための手間や費用がかかったというトラブルもあります。
また建物の変化による住民や利用者からの不満としては「利便性が損なわれたと感じる」「設備を交換したばかりなのに不具合が発生した」などが挙げられるでしょう。
大規模修繕は管理組合や建物に住む入居者、利用者が満足の行く仕上がりにならなければいけません。しかし、資産価値の維持や料金だけを重視して行うと最終的に余分な支出が出たり、入居者・利用者の減少に繋がったりするリスクもありますので注意しましょう。
これらのトラブルに対する対策としては「業者の適切な選定」や「工事後の定期点検・メンテナンスの強化」「住民や利用者との円滑なコミュニケーション」などが有効です。
問題が発生した場合の対処法
大規模修繕で問題が発生した場合に有効な対処法は以下のとおりです。
- まずは問題の内容をしっかりと把握し、明確化させる
- 管理組合や業者との話し合い
- 専門家の意見を聞く
- 相談窓口の利用
問題が発生した際、最も大切なことは「まず問題の内容を把握すること」と言えます。
「どのような問題か」「何が原因で起きたのか」「この問題が今後どのような影響を及ぼすのか」など順番に問題を解決へ導くための糸口を探し出すのです。
また問題が発生した場合は、管理組合や修繕工事を担当した業者と修繕工事契約書や施工図面などを確認しながら話し合いを行い、責任の所在や費用負担、解決方法を話し合いましょう。
どうしても管理組合や業者間では問題解決へ進まないという場合や、コンサルタントなどの専門家を交えて話し合いを行ったり、意見を聞いたりするのも対処法として有効です。
また国土交通省が通知を行っている「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口」や「大規模修繕支援センター」などの相談窓口を利用するのも良いでしょう。
まとめ
大規模修繕とは、建物の快適性や資産価値を維持するために行い、金額が高額かつ長期間に渡るメンテナンスを指します。
安全性や資産価値などの維持に欠かせないメンテナンスであり、事前に計画をしっかり立てて進める必要があります。
信頼できる会社に依頼するためにも、複数社から見積もりを取得して相場を把握し、実績なども確認すると安心です。
定期点検や経過した築年数などを考慮したうえで大規模修繕を実施するタイミングにもよりますが、費用が大きくかかることもありあます。
工事の品質を落とさずコストをできるだけ抑えられるように、さまざまな情報を加味して発注することが大切です。
また、工事期間中はトラブルが起こる可能性もあるため、専門家の意見や話し合いを通してスムーズに解決できるよう対処しましょう。